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【読書記録】『観光旅行』(『人生ベストテン』より)

『観光旅行』(『人生ベストテン』より)
角田光代著


主人公・私は、イタリア・シチリアに一人旅に出ていた。カターニャからタオルミーナ、イソラベッラ付近を散策していた。そこで、老婦人と30代くらいの女性の日本人親子に遭遇する。二人は何かというと「私」の前で口論を展開する。

「私」は、ハシヅメ君 と6年同棲を続けている。6年と言っても、4年目くらいからお互い愛は冷めていて、今日まで、惰性で、日々を過ごしていた。ちょうど、一緒に住んでいる西向きの部屋の(アパート)の契約更新のお知らせが来たのをきっかけに、どうした良いものか?頭をよぎった。ところが、優柔不断な二人は、別れを決断できないでいた。「私」は、自分で決断することができず、ハシヅメ君に決断を委ねることにして、旅に出たのだった。

キーワードを挙げてみる。

①カターニャ
1. 異なる背景を持つ人々が共存することで、文化的な豊かさが生まれることを示唆する。

2. 美と苦悩の共存は、人間の経験における複雑さを象徴し、美の根源には常に苦しみがあることを示唆する。

②タオルミーナ
1. タオルミーナは、その美しい風景やリゾート地としての魅力から「楽園」として知られている。その一方で、歴史には戦争や苦難の影もある。この美と苦悩の共存は、人間の経験の複雑さを象徴し、喜びと悲しみが共に存在することを示している。

③イソラベッラ
1. イソラベッラの孤立した位置は、自己探求や内面的な反省を象徴する。孤独な環境は、人が自分自身と向き合う機会を提供し、自己の本質や存在意義を考える場となる。
2.イソラベッラは、潮の満ち引きや季節の移り変わりによってその姿が変わる。この変化は、人生の無常や時間の流れを象徴し、物事の本質が常に変わりゆくことを示唆する。

④ニョッキ
1. 人間にとってのつながりや共同体の重要性を示す。

2. 基本的な材料から作られるニョッキは、一見シンプルだが、その味わいや食感には深い満足感がる。このシンプルさは、人生の本質や価値が複雑さの中に隠れていることを象徴する。

⑤西向きの部屋
終わりや変化を象徴する。これは人生のサイクルや時間の流れを示唆し、物事の終息や成熟を反映する。

また、西向きの部屋は、内省や自己探求の場とも解釈できる。夕日の光が部屋に差し込む様子は、日々の経験や感情を振り返る時間を提供し、精神的な成長や自己理解を促進する空間として機能する。

⑥グランブルー
1.未知と探求を象徴する。人々は海に魅了され、時には恐れを抱きながら、その深淵に挑むことで自己を発見し、人生の意味を探求する。

2.グランブルーは「自由」と「孤独」をも象徴する。主人公たちが自由を求めて海に飛び込む姿は、制約からの解放や自己実現の追求を表す。しかし同時に、深海の孤独や、他者とのつながりの難しさも描かれており、自由と孤独が共存する複雑な感情を映し出す。

物語の主題は何か?
人生は変化の連続なのだ。時間の経過とともに、周りも変化するのだけど、自分自身も変化しているということを受け入れることが大切で、その変化を受け入れた先に、新しい世界が拓けていくのだと理解した。

先日、新しいお客様のもとに、会社案内を持参して、会社のプロポーザルをしていた時、先方から、「だいぶ、お若い頃のお写真ですね」と笑われてしまった。会社案内に挿入されている私の写真を見てのコメントだったのだけど。本人は変わっているつもりはまったくないのだけど、自分の姿も変わっていくものなのだなあと改めて思わされたことを思い出した。
6年前の写真なのだけどね。だいぶ違うのかもしれない。

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