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#143 茶室の変遷から学ぶ「真・行・草」

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

最近、「お茶」に興味がわいています

僕は普段、和紙を扱うことが多いので、そういった背景から、日本の文化とかにもちょっとは興味がありまして、最近は「お茶」にちょっと興味がわいてきています。

あ、ちなみに僕って、子供のころからそうなんですけど、いろんなジャンルをちょっとずつかじるのが好き、みたいな性格でして、部活も、「サッカー・野球・陸上・バレーボール・テニス」をちょっとずつかじりましたし、あ、書道もやってましたね。
それから、音楽も「ポップス・ロック・ヒップホップ・レゲエ・エレクトロニクス・ジャズ・クラシック」全部好きで聴きますし、“一つのことを極める”の正反対にいる人なんです。

まぁ、そんなことは置いといて、とにかく、今は「お茶(茶の湯)」にとっても興味があります。

という訳で、今回は、全然紙の話じゃないですが、茶室の変遷「真・行・草」という面白い概念を組み合わせて考えていきたいと思います。

今回は紙の話じゃないですけど、この「真・行・草」という概念、紙の未来を考える上で、とっても重要だと、僕は思います。

という訳で、今回もよろしくお願いします。

お茶の歴史

さて、先ずは、簡単にお茶の歴史を見ていきたいと思います。

あらゆる日本の文化でみられることですが、お茶は、朝鮮半島から輸入された文化です。
紙もそうですよね。

古くは、805年に、最澄が唐から日本に茶種を持ち帰ったそうですが、全然広まらなかったそうです。

その後、日本で本格的にお茶が広まったのは、12世紀末。お茶が輸入されてからブレイクするまでめちゃくちゃ時間がかかりましたね。
なぜ、この頃にお茶が広まったのか。
理由は、源実朝が二日酔いの薬としてお茶を勧められて、それがうわさで広まったのがきっかけだそうです。
つまり、今ではコンビニで二日酔い止めの商品が豊富に売っていますが、この頃は、お茶だったということですね。
その後、室町時代に入ると、お茶は相当な広がりをみせていったそうです。

ちなみに、ここまでのお茶の文化というのは、朝鮮半島からの輸入したものをそのまま楽しんでいました。
そこに、一石を投じる人物が現れます。
そう、侘び茶の祖・村田珠光です。
彼は、茶と禅の世界観を融合させて「侘び茶」という世界観を確立していきます。
そして、この侘び茶こそが、今日まで続く、日本独自のお茶の文化となっていくわけです。
その後、千利休、古田織部、小堀遠州といった茶界のスーパースターたちが、「侘び茶」を独自のスタイルで確立してきます。

ざっとこんな感じでしょうか。

書道の書体からきている「真・行・草」

さて、お茶と言えば「茶会」ですよね。
その茶会をする上で欠かせないものはたくさんありますが、その一つが「茶室」です。

この茶室、時代によってスタイルが変わるんですが、これが面白い。

ちょっと一旦話をずらして、先ほども触れましたが、「真・行・草」という概念があります。
これは、書道の書体の頭文字からきていて、先ず「真」は「楷書」のこと。一番基本的な書体ですね。
そして最も崩して書く「草書」と、その中間に位置する「行書」。

さて、この「真・行・草」の概念を頭に入れつつ、茶室の変遷を見ていきましょう。

真=書院造り

まずは、初期の茶の湯の舞台となった「書院造り」
武家の邸宅として誕生した書院造りは、公式な場でもあるので、豪華で格式高い造りです。

台子(だいす)と呼ばれる棚には、お茶の道具がズラッと並びます。
それから、唐物と呼ばれる豪華な中国の工芸品で客をもてなします。

とにかく、豪華な室内と茶器や工芸品が並ぶ茶室で行われていました。
そんな書院造りを「真」とします。

草=草庵茶室

そんな「真」である「書院造り」のカウンターカルチャーとして出てきたのが、「草庵茶室」
この「草庵茶室」で、おそらく一番有名な茶室は、千利休がプロデュースしたとされる「待庵」。京都の大山崎に建つ茶室です。

この待庵、広さ、どれくらいだと思いますか?
・・・なんと「2畳」です。
2畳ですよ!むちゃくちゃ狭いですよね!
入口も「躙り口」と呼ばれる小さな扉で、光もほとんど入らない空間です。

先ほどの「書院造り」とは明らかに違うということが分かると思います。

茶器も必要な物だけ。
焼物も国産のものが普及していきます。
千利休がプロデュースした「黒楽茶碗」はあまりにも有名ですよね。

外の世界と断絶された狭い部屋で、茶人と客が向かい合う。
これこそが、利休が突き詰めた美意識です。

そんな草庵茶室を、最も崩した「草」とします。

行=数寄屋造り

そんな「書院造り」や「草庵茶室」を経て出てきたのが、この2つのミクスチャーともいえる「数寄屋造り」です。

数寄屋造りの代表作ともいえるのが、「桂離宮」でしょう。
「真」の書院造りほど豪華で格式高くもないけど、「草」の草庵茶室ほどシンプルでそぎ落としてもいない、どちらかというと、両者の中庸ともいえる佇まいです。

まとめ

ざっとおさらいしましょう。
まずは、豪華で格式高い「書院造り」。
そのカウンターカルチャーとしてでてきた、シンプルでミニマルな「草庵茶室」。
両社の中庸ともいえる「数寄屋造り」。

まず、1つのカルチャーがあって、それを大きく逸脱するカルチャーが生まれる。その経緯を経て、中庸のカルチャーが生まれる。
つまり、何かイノベーションが起きる時は、一旦、大きく踏み外して、中庸に落ち着く、といった感じでしょうか。

この考え方は、色んな所で応用できると思いませんか。

例えば、和紙の文化。
伝統的な和紙の文化にイノベーションを起こそうとしたときに、一旦大きく踏み外すことで、中庸に落ち着く。
でも、それはもともとの文化ではなく、違う領域に外れたもの。

「真・行・草」
何か物事を前に進めたいとき、参考になる考え方だなぁ、と思って、今回はこんなお話でした。

という訳で、今回は以上となります。
それでは、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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