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【書評】元祖ハードボイルド小説といえばダシール・ハメット。『血の収穫』を読む。北斗の拳的な世界を生き延びろ!

ロッシーです。

最近、ハードボイルド小説がマイブームです。

今後、ハードボイルド的な生き方でないとサバイブできない時代になることを無意識的に予感しているからなのかもしれません。


さて、今回は、ダシール・ハメットの『血の収穫』です。

『血の収穫』が発表されたのは1929年。いまから約90年前の作品です。

しかし、まったく古さを感じさせることはありません。というより、むしろ新しいくらいです。


小説の世界観

古さを感じさせない一番の要因は、この小説の世界観ではないでしょうか。

・世界を統一的にコントロールするような存在がいない
・法律はあってなきがごとし
・スキを見せたり、弱い奴はやられる
・頼りになるのは己の頭と力のみ
・信頼よりも利害関係

私は、こういう世界観けっこう好きです。

現実世界も実際はそれに近いと思っていますから。

「そんなことはない!」

と思いたい人はその人の自由です。でも、「そう思わされている」のかもしれませんよ(笑)。

複雑な物語の構成


このような世界観に加え、物語の構成が複雑であることも古さを感じさせない要因でしょう。

通常の小説では、主人公がいて、その相手(敵、復讐相手、犯人など)がいるという2項対立的な構造がほとんどです。

しかし、『血の収穫』はそうではありません。

市の有力者、警察、銀行屋、弁護士、密造酒屋、質屋、賭博場経営者、高級娼婦など、多様な登場人物が入り乱れるという構造です。

そうなると、物語の複雑さ度合いは、2項対立的なそれとは比較になりません。

だから、読者としては注意深く読まないと、途中で訳が分からず"Lost"してしまいます。

逆に、しっかりと物語の流れを把握すれば、面白さ度合いも比較にはならないわけです。

馳星周の『不夜城』なんかは典型的だと思いますが、『血の収穫』の系譜に連なる作品はかなり多いと思います。


私達の社会も同じ

さて、現実の世界では、2項対立的なことなんてほとんどありません。サラリーマンであれば、会社内での勢力争いなんてまさに『血の収穫』と同じです。

パワーバランスを保つために、特定の部署と連携を組んだり、利害関係を一致させて味方を増やす提案をしたりすることもあるでしょう。

違うところは、物理的な暴力がないことだけです。

だから、『血の収穫』を読んでいると、

「結局、人間が社会で生きる以上、同じようなことをしているんだな。」

と思わずにはいられません。

サラリーマン社会も、この小説の舞台である「ポイズンヴィル」(毒の市)も同じなんですよ。

それに気が付かず、ナイーヴなだけではカモられて終わるわけです。

だから、『血の収穫』は単なるフィクションとして別世界のものとして読むべきではありません。

むしろ、「これは自分の世界の話なんだ」と思って読むほうがいいでしょう。そのほうが面白いですしね。

タフになって生き延びろ

物語の主人公であるタフな「私」のようになれるかどうかは分かりませんが、これからの時代はタフにならないと生き抜くのは難しいでしょう。

私だって、単なる雑魚キャラとしてやられてしまうのは嫌です。

主人公の「私」のように、非情かつドライに、そして時には狡猾になりつつ、サラリーマン社会の生き馬の目を抜く生き方ができるようになりたいですね。

そのヒントは、この小説の中に沢山あると思います。

え? それがどこに書いてあるか教えてくれって?

そういうスタンスがまさにナイーヴなんですよ(笑)。

自分の力で読んで探してみてください。

※ちなみに、本書の主人公はコンチネンタルオプじゃないですからね。コンチネンタルオプは、名前ではありません。コンチネンタル探偵社のオペラティヴ(探偵)の略です。たまに勘違いしている人がいるので念のため。


最後までお読みいただきありがとうございます。

Thank you for reading!


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