【書評】『われわれは仮想世界を生きている』私達に必要なのは世界観のアップデート
ロッシーです。
『われわれは仮想世界を生きている』を読みました。
「シミュレーション仮説」というのは、「この世界は計算機(コンピュータ)のシミュレーションである」というものです。
いまこの記事を読んでいるあなたは、シミュレーションで作られたキャラクターかもしれませんし、人生というゲームをプレイしているこの世界の外の存在かもしれません。
古代ではプラトンの「洞窟の比喩」から始まり、昨今では映画『マトリックス』のヒット、そしてゲーム、VR技術、量子力学など諸分野の進化により、シミュレーション仮説という概念は以前ほど荒唐無稽ではなくなっていると感じます。
本書はシミュレーション仮説を様々な角度から深く突っ込んで検討しており、非常に面白いです!
著者のリズワン・バーク氏は、起業家、投資家、ビデオゲームパイオニア、映画プロデューサーであり、マサチューセッツ工科大学でコンピューター・サイエンス学士号、スタンフォード大学経営大学院で経営学修士号を取得しています。
そのようなバックグラウンドをもつ著者の本ですから、単に「シミュレーション仮説とはこういうものだ」という説明に終始する内容ではありません。ご自身の多彩なバックグランドをフル活用してシミュレーション仮説を検証しています。
本書は、大きく以下の3つに分けられます。
人類が『マトリックス』に登場するような包括的シミュレーションを構築することが技術的に可能なのか、また、可能ならどのようにして実現するのか
(キーワード:ビデオゲーム、MMORPG、レンダリング、シミュレーションポイント、マインドインターフェイスなど)シミュレーション仮説が、これまで説明が難しかった私達の物理的世界の現象を説明できること
(キーワード:量子不確定性、パラレルワールド、マルチバース、ピクセル、光速、クロック速度など)シミュレーション仮説が、いかにしてこれまで説明できなかった未解明の現象を説明できるのか
(キーワード:東洋思想、輪廻転生、夢、カルマ、神、天使、臨死体験、対外離脱体験、シンクロニシティ、UFOなど)
さて、シミュレーション仮説について皆さんはどのように思っているでしょうか?
「うん、確かにそういう考えもあるよね。でもそれってあなたの感想ですよね?」
と「ひろゆき」的に考えてしまう人も多いかもしれません(笑)。所詮は仮説でしょ?と。
確かに仮説です。しかし、仮説だから取るに足らないものと考えるのは、適切な態度ではないかもしれません。
なぜ適切ではないのか?それは、科学と宗教について考えると分かりやすいと思います。
私達は過去500年にわたり、科学と宗教という2項対立を解消できていません。
つまり、科学界が主張してきた現実の物理的本質と、宗教界や神秘思想界が主張してきた霊的本質の対立です。
人類の歴史をざっくり見ると、歴史の大半は宗教が優勢でした。しかし、19世紀から20世紀にかけて、科学が台頭しメインストリームとなり、宗教は副次的な立ち位置に降格され、現在に至っている状態です。
このような歴史的変遷を見ると分かるように、科学というのもひとつの仮説でしかありません。
より効果的に世界の諸現象を説明できる仮説があれば、それに道を譲らなくてはならないのではないでしょうか。
現時点では、宗教よりも科学のほうが世界の仕組みをより良く説明できるというだけの話です。
アインシュタインはこう言いました。
宗教と科学。この両者を統合できる世界の捉え方が、「シミュレーション仮説」である可能性が高いわけです。
不確定性原理によって量子力学に絶大な貢献をしたハイゼンベルクはこう言っています。
シミュレーション仮説に関する研究がさらに発展することにより、科学と宗教という二つの分野が統合され、新しい世界の捉え方が形成されていく可能性があるのです。
私達は、そのようなエキサイティングな時代に生きているのかもしれません。
そういう意味では、単なる仮説と一蹴するのではなく、「シミュレーション仮説」についてより深く知ることには、次世代の世界の捉え方を知ることで、既存の視点とは違った新たな視点をもってこの世界を眺めることができるという意義があるのかもしれません。
「この世界が仮想なのかどうか結局は分からずじまいなのだから、そんなもの考えたって無駄だよ」
という意見もあるでしょう。
でも、小説だって映画だって仮想ですが、私達はそれらを楽しんでいます。
シミュレーション仮説も同様で、仮想だからといって食わず嫌いをせず、まずは「へ~こんな考え方があるのか」と楽しんでみてはいかがでしょうか。世界の見方をアップデートできるかもしれませんよ(笑)。
本書は、シミュレーション仮説について詳しくない方でも、詳しい方でも、両方楽しめると思います。
最後にこれもアインシュタインの言葉です。
最後までお読みいただきありがとうございます。
Thank you for reading!