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【書評】『小室直樹の中国原論』は中国の解像度を爆上げしてくれる本

ロッシーです。

『小室直樹の中国原論』を読みました。

佐藤優氏・推薦!
「抜群に役立つ中国論。天才・小室直樹にしか書けない名著」

という文言につられて読みました(笑)。


中国の解像度を上げる本

いや~これは面白い!

読めば中国についての解像度が間違いなく上がります。

特に、仕事で中国ビジネスに関わっている方は必読ではないでしょうか。

本書は1996年4月に初版が刊行されました。今から約30年前の本ですが、あなどるなかれ。中国「原論」というだけあり、時代に関係なく活用が可能な知見がてんこ盛りです。

巷にある「なんちゃって中国論」的な本を読むくらいなら、まずは本書を手に取ったほうが何万倍も効率が良いと思います。

本書の内容は以下のとおりです。↓

第一章 中国人の理解の鍵は「帮」(ほう)にあり
第二章 「帮」を取り巻く多重世界
第三章 中国共同体のタテ糸「宗族」
第四章 中国人の意識の源流に韓非子あり
第五章 中国の最高聖典、それが「歴史」
第六章 中国市場経済はどうなっているか

ざっと見ただけでも興味をそそられる内容だと思いませんか?

宗族と帮という概念

本書において特に重要なのは、「タテの共同体たる宗族(そうぞく)とヨコの共同体たる帮(ほう)」という概念です。

この概念により、中国理解についての大きな補助線を引くことができるようになります。

この二つの概念をざっくり説明します。

宗族というのは、同じ姓(劉、李など)を有する父系集団であり、同一宗族内では絶対に結婚できないなど、強固な血族集団を構成するものです。

というのは、幇ともいいますが、最も強固かつ絶対的な人間関係のことです。本書では、『三国志』における桃園の誓いを例に出して説明していますが、これにより劉備、関羽、張飛は帮という人間関係を形成することになるわけです。

中国関係の仕事をする場合、帮の概念をきちんと理解しておくことが非常に重要でしょう。ビジネスの場合には、会社対会社、人対人というヨコの関係がメインになりますからね。

もし、あなたが中国の方と帮を形成できれば、契約書なんて必要ありません。口約束でも必ず守られますし、どんな大金を借りても証文不要でOKです。なにせ絶対的な人間関係ですから。

ただ、現実には帮を形成することはほぼ無理でしょう。

しかし、帮を最上位の人間関係とすれば、そこから同心円状に人間関係が存在します。こんな感じに。↓

帮(ほう) > 情誼(チンイー) > 関係 > 知り合い

知り合い段階の人間関係であれば、いくらきっちりした契約書を結んでも、「事情変更の原則」により契約条件が不利なかたちで変更されてしまいます。

日本企業が「中国企業が契約を守らない!」といって怒るようなケースは、まさに「知り合い」段階の関係性しかないからです。

「関係」段階までくると、かなり固い人間関係となりますから、そう簡単に破られたり条件変更されることはないでしょう。

「情誼」は、「鉄石の交わり」と言われますから、もしビジネスパートナーとここまでの関係を築くことができれば、どんなトラブルが起きても勝手に相手のほうが解決してくれるでしょう。

では、逆に知り合いでもない関係の場合はどうなるのか?

「何をしてもOK」

ということになります。つまり、原理的に言えば略奪、虐殺なんでもOKです。

だから、中国人と低い関係しかない人は「中国人は信用できない!」と考えますし、高い関係をもつ人は「中国人は信用できる!」となるわけです。

つまり、どの関係を自分がもっているのかによって、全く異なる中国人観を持ってしまう可能性があるということです。

しかし、上記のような原理をきちんと理解しておけば、

「なるほど、自分はまだこのレベルの関係性だからこういう扱いなんだな。」

冷静かつ俯瞰的な視点をもつことができるでしょう。


中華思想との類似性

さて、こうやって見てみると、中国人の人間関係というのは、イコール中華思想なんだな~と思いました。

言い換えれば、個人というミクロレベルでも、国というマクロレベルでも、フラクタル理論的な構造になっているということです。

中華思想というのは、中華という世界の中心が存在し、そこから同心円状に夷狄(文明化しない野蛮人)、禽獣(獣に等しい存在)と広がっていくという世界観をもつ概念です。

この思想と、上述した人間関係は同じパターンを形成しています。

中華 > 夷狄 > 禽獣

帮 > 情誼 > 関係 > 知り合い

ミクロでもマクロでも同様のパターンであるということは、その間においても同様のパターンが成り立つ可能性は高いでしょうから、この原理を理解していれば、様々な局面で応用が可能なのかもしれませんね。


原理をきちんと理解することの重要性

日本は、中国という大国の隣国に位置しています。そして、それはこれからもずっと続くでしょう。

でも、私達は中国についてどこまで理解しているのでしょうか。

アメリカは、終戦後に日本人を分析するため、文化人類学者ルース・ベネディクトに『菊と刀』を執筆させました(本人は一度も来日していないそうですけど)。その姿勢は見習うべきだと思います。

とかく私達は、マスメディアの報道で形成される空気や、ネットによる印象操作によって、勝手に「中国人とはこういうものだ」という幻想を作り上げてしまいがちですが、それは非常に危険だと思います。

中国について、なんとなくの印象や感情で決めつけるのではなく、きちんとした「原理」を理解し、分析していく態度が必要なのではないかと思います。

そういう意味では本書はまさにうってつけだと思います。

人間関係だけではなく、「中国人にとっての法律」「中国における歴史の重要性」などにつても述べられており、あなたの中国理解をさらにアップデートしてくれると思います。


最後までお読みいただきありがとうございます。

Thank you for reading!


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