【書評】『王国への道』(遠藤周作)を読む。山田長政についてよく知らない人は必読!
ロッシーです。
遠藤周作の『王国への道』を読みました。
「山田長政」について、最近は学校で習っているのでしょうか。
山田長政の人生をざっくりと説明すると、
「1590年に駿河国で生まれ、その後シャム(現在のタイ)に渡り、アユタヤ王宮の日本人傭兵隊長として活躍。その後、最高官位に昇進後、地方国リゴールの王になった。」
というものです。
要するに、日本から飛び出して、異国の地で王になったという偉業を成し遂げた日本人といえるでしょう。
「ふーん。今でいえば、海外で起業して成功したビジネスマンみたいなものかな?」
と思うかもしれませんが、なにせ当時は江戸時代初期ですから、簡単に比較できるものではありません。
鎖国状態だったわけで、移動の自由なんてありませんし、異国の情報なんて知ることもできなかったでしょう。
そういう意味では、本書は、まさに裸一貫で異国の地で成り上がった男の物語なわけですから面白くないわけがありません。
この本を読めば、山田長政について
「なんか名前だけは知っているけど・・・」
という人も、
「こんな日本人がいたのか!」
と驚くと同時に、彼の生きざまを知ることで、自分だって何かやってやる!という元気をもらえると思います。
ただ、本書は単なる成り上がり物語の範疇に収まるものではありません。
自身がカトリック教徒であり、常に神というテーマについて考え続けた遠藤周作ですから、山田長政と対比させる存在として、神父になろうとするペドロ岐部という人物を描いているのが特徴的です。
地上の王国を目指す者 ⇒ 山田長政
天上の王国を目指す者 ⇒ ペドロ岐部
どちらも目指す方向は違えども、自分の目指すものを強く信じていた点では同じです。
読者によって、どちらに共感を覚えるのか異なると思います。
私は、山田長政のように、地上の王国を目指すほどハングリー精神があるわけでもなく、ペドロ岐部のように神の世界を信じるほどの信仰心もありません。
良く言えば両者の中間にいてバランスが取れているのでしょうし、悪く言えば「中途半端」なのでしょう。
そんな自分だからこそ、極端に振れている二人の生きざまを、書物を通じて触れることができ、楽しいのかもしれません。
そういう意味では、本はそれ自体がひとつのメタバースなのだと思います。
いろいろな本を読むことで、いろいろなメタバースに入り込むことができる。それが読書の良さなんだと思います。
ぜひ、山田長政という人物をメインにしたメタバースを味わってみてください。
最後までお読みいただきありがとうございます。
Thank you for reading!