売上はミッションの達成度とリンクする
[要旨]
岩田松雄さんがスターバックスの社長時代に、店舗数の拡大、無償Wi-Fiの導入、コンセント数の増大、一人席の拡充など、顧客満足度を高める取り組みを行った結果、ライバル店より高価格で商品を販売することができました。この結果から、岩田さんは、売上はミッションの達成度とリンクしており、もし会社の売上が落ちているときは、ミッションと事業活動に齟齬があると考えるようになったそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、会社でミッションを掲げることによって、(1)想定外の事象に対して、原理原則で判断できるようになる、(2)従業員の価値観を揃えることができるようになる、(3)ミッションに共鳴する人を集めることができる、(4)従業員に仕事の意義を感じさせることができるなど、大きな効果を得ることができるということについて説明しました。
これに続いて、岩田さんは、売上とはミッションの達成度であるということについて述べておられます。「スターバックスの社長をしている時に、スターバックスのミッション(『人々の心を豊かで活力あるものにするために』)は、本当に心から素晴らしいミッションだと思っていました。では、このミッションを、より達成するには、どうしたら良いのかを考えました。それは、『より多くの人の心を、より豊かにすることができたら、よりミッションが達成できるのではないか』と考えました。(中略)
お店をどんどん増やせば、トータルのお客様の数は増えます。しかし、採用や教育が間に合わず、お客様へのサービスが落ち、お客様に不快感を感じさせてしまったら、むしろ、ミッションに反する方向になってしまいます。(中略)急成長しているベンチャー企業などでありがちな事例です。最近で言えば、立ち食いのステーキチェーン店が、まさしくそうでした。肉も満足に切れない人が、お店に立っていました。人の成長(教育)が間に合わないのです。
実際、感動を与えられる人数を増やすには、店舗を増やせば確実に客数は増えます。日本中の人がスターバックスの開店を待っていました。そのため、『全県制覇』をひとつの方針として推し進めました。時には、『投資収益率』の目標水準を満たしていなくても、出店を推進しました。スターバックスを待っている人は多くおられる。投資収益率より大切なことがあると思いました。一方、感動をより深くするには、店舗のサービスを充実させることが必要です。『感動の深さ』は、お客様の満足度と置き換えても良いでしょう。
ですから、店舗数の拡大のみならず、無償Wi-Fiの導入、コンセント数の増大、一人席の拡充など、『心に活力を与える』ための、さまざまなアイディアを実現させました。スターバックスの商品が他社のコーヒーチェーンより多少割高で買っていただいているのは、他社よりも感動が大きいからだと思います。つまり、『感動の深さ=単価』なのです。(中略)ですから、もし売上が落ちているなら、何か間違っているのです。(中略)つまり、売上は、ミッションの達成度とリンクしているのです」(147ページ)
岩田さんは、「売上はミッションの達成度とリンクしている」とご指摘しておられますが、これは、ほとんどの方がご理解されると思います。しかし、現実には、ミッションを浸透させたり、感動を深めたりするための活動は、あまり行われていないように、私は感じています。その理由のひとつは、ステーキ店を例に出して岩田さんもご指摘しておられるように、感動を与えるためには人材教育が必要であり、それには時間がかかるからです。
もうひとつは、ミッションと売上の因果関係は見えにくいからです。なぜ因果関係が見えにくいのかというと、感動を深める活動を実践しても、それが結果として現れるまで時間を要するからです。そこで、多くの会社では、すぐに売上につながる、価格競争などに注力してしまうのでしょう。しかし、それでは、競争に優位に立つことのできる期間はあまり長くないし、体力もすぐに消耗してしまいます。そこで、結局は、時間と労力を要しても、ミッションを浸透させ、感動を深めることしか、競争に勝つ方法はないのだと思います。
2024/4/17 No.2681
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?