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『手軽さ』に『上質さ』をちりばめる

[要旨]

セブンイレブンの鈴木敏文さんは、顧客の潜在的ニーズを見つけるために、上質さと手軽さの2つの軸を使ったポジショニング分析を行い、その空白地帯に適合したセブンプレミアムやセブンカフェなどの商品開発を行った結果、それらはヒット商品となりました。このような、競争力の高い商品の開発をするには、ポジショニング分析は有効なツールとなります。


[本文]

今回も、前回に引き続き、鈴木敏文さんのご著書、「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。鈴木さんは、顧客の潜在的ニーズを見つける方法として、ポジショニングを行っているそうです。「『上質さ』と『手軽さ』という、タテとヨコ、2つの座標軸で市場をとらえたとき、競合も進出していなければ、誰も手をつけていない、『空白地帯』を見つけ、自己差別化をすることです。

セブンプレミアムも空白地帯を見つけ出した典型です。流通のプライベートブランド(PB)商品は、一般的に価格面での『手軽さ』に傾倒します。これに対し、ナショナルブランド(NB)商品と同等以上の『上質さ』を実現しながら、価格面の『手軽さ』をちりばめることにより、PB商品の空白地帯に投入したセブンプレミアムは、コンビニ、スーパー、百貨店の、どの業種、どの店舗でも大ヒットになりました。

さらに、本格的な味を求め、専門店と同等以上の品質を手ごろな値段で提供するワンランク上のセブンプレミアムゴールドのシリーズも、より『上質さ』を高めて、新たな空白地帯を開拓し、ヒット商品になりました。金の食パンのように、一般的なNB商品より価格が上でも、『上質さ』を極めたことで、食パン市場の空白地帯に埋まっていたお客様の潜在的ニーズを掘り起こすことができたのです。また、セブンカフェは、1杯100円という、『手軽さ』の中に高品質という『上質さ』をちりばめて、大ヒット商品になりました」(171ページ)

一般的に、品質の高い商品は価格が高く、また、品質が低い商品は価格が低く販売されます。でも、鈴木さんは、セブンカフェのように、価格の低いPB商品として、高品質の商品を販売したり、金の食パンのように、NB商品よりも高価格で品質も高い商品を開発して販売したことが奏功したということのようです。とはいえ、これらの商品ような、コストパフォーマンスの高い商品開発をする前提として、セブンイレブンには大きな経営資源があるという面もあると思います。

ですから、どんな会社でも、高いコストパフォーマンスを実現できるとは限らないということも事実だと思います。しかし、ポジショニング分析を行うことは重要だと思います。というのは、私がこれまで中小企業の事業の改善のご支援をしてきて感じることは、中小企業の多くは、ライバルとの差別化を図ろうとするとき、結局、価格を引き下げるという手段をとってしまいがちだからです。

確かに、価格以外の面で差別化を図ろことは、一朝一夕には実現できませんが、価格競争しかしなければ、単なる体力勝負であり、早晩、事業に行き詰ってしまいます。したがって、経営資源の少ない中小企業であっても、ポジショニング分析を行い、それに基づいて価格競争から脱するための活動をすることは、長期的な視点で、事業を安定化することになると、私は考えています。

2022/11/12 No.2159

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