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仕組み化で属人化の犠牲者を生まない

[要旨]

株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、多くの会社では属人化が進んでおり、その結果、従業員たちは、社内での人間関係に労力が割かれています。このことは、従業員の士気や定着率を下げることになり、事業活動の競争力を弱めることになるため、経営者は属人化をなくすよう仕組み化を進めることが求められているということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「とにかく仕組み化-人の上に立ち続けるための思考法」を読んで私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、効率化を目的として、従業員の数を最小限にとどめ、多くの業務をアウトソーシングしようとする経営者もいますが、そういう会社では、企業理念に近づいてきたという達成感を感じる従業員の数も少なくなり、人材が育たないというリスクがあるので、極端なアウトソーシングは避ける方がよいということについて説明しました。

これに続いて、安藤さんは、会社内で「属人化」の犠牲者が出ないよう仕組み化を進める必要があるということについて述べておられます。「これまで識学では、3,500社以上の企業を見てきました。本書で語ったような『仕組み化』がうまく機能している会社は、ほとんどありませまん。どの組織も、『属人化』が蔓延しています。それによって、属人化の『儀牲者』が現れてしまっています。

どんな会社でも、入杜した頃の人は、キラキラと輝いでいます。『この会社で成長してやろう』という思いを抱いています。それがいつの間にか、社内での人間関係を考えることに労力が奪われていきます。売上をあげることよりも、社内で嫌われないことを優先させます。仕事ができる部下よりも、言うことを聞いてくれる部下を可愛がります。年功序列、終身雇用に守られて、年収はあまり下がることはなく、クビにもならない。

そして、気づいた頃には、社内をうまく立ち回る能力しか身についていない。他の業界や企業では、『何の役にも立たないスキル』だけしか残りません。あなたの組織でも、そんな属人化の儀牲者で溢れかえつているはずです。会社への悪口でつるみ、群れている人たちです。そんな人がいるのは、人の上に立つ人たちが、仕組みをつくってこなかった貴任です。本当に残酷でかわいそうなことだと思います」(290ページ)

安藤さんが、「社内での人間関係を考えることに労力が奪われる」会社があることをご指摘しておられますが、多かれ少なかれ、ほとんどの会社では人間関係に労力を割かなければならないと思います。そして、それは、これも安藤さんが、「年功序列、終身雇用に守られている」ことの弊害であるとご指摘しておられます。しかし、最近は、そのような会社は減りつつあると思います。いわゆるパワハラ問題が社会的に問題視されるようになったり、新卒で入社した従業員が数年で退職する事例が増えているからです。

現在でもパワハラが完全になくなったわけではなく、また、従業員の定着率が低い会社はあると思いますが、それでもその課題の解消に取り組んでいる会社は増えているでしょう。なお、私は、年功序列や終身雇用が、直ちに問題があるとは考えていません。この年功序列と終身雇用に、企業別労働組合を加えた3つの制度は、かつて、「日本的雇用の三種の神器」と言われ、日本の高度経済成長を支えていました。

しかし、現在は、社会が習熟し、年功序列や終身雇用の弊害が現れていることから、経営者は経営環境に合わせて仕組みを変えなければならなくなっていると言えます。とはいえ、ここまで私が述べたことは、私が述べるまでもなく多くの方が理解しておられることだと思います。問題なのは、それを理解しつつも、実際に改善をしようとしても、なかなか、それができないということだと思います。

というのは、現在の会社の多くは属人化が進んでいる、すなわち、多くのしがらみあり、それが障害になっているのだと思います。しかし、詳細な説明は割愛しますが、現在、業績が悪化している会社ほど属人化が進んでいる会社であると考えられます。私が、かつて勤務していた銀行も、多額の不良債権を抱えていたことから国有化されましたが、その背景には、多くの属人化やしがらみがあったと考えています。

会社の業績を向上させるための活動は、多くの場合、たくさんの顧客に対して営業活動を行うことと考えられがちですが、その前に、「社内での人間関係に振り向ける労力」を減らすために、仕組み化を進めることが必要だと思います。ただ、そのような仕組み化は、前述したように、経営者にとって大きな労力が必要とされることから、後回しにされがちです。だからこそ、その仕組み化に1日でも早く着手する会社ほど、競争力が高まるものと私は考えています。

2025/1/14 No.2953

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