マガジンのカバー画像

哲学書評

18
運営しているクリエイター

#現代思想

【書評】浅田彰『構造と力』

【書評】浅田彰『構造と力』


はじめに1983年に世に出た、浅田彰の『構造と力』が2023年の暮れに中公文庫から出された。手に取りやすくなったことで、どれだけの人がこの本を手にするかわからないが、当時のベストセラーであったことには一定の理由があるだろう。この本はフランス現代思想というジャンルに属するが、この「現代思想」が何をやっているのかを概観するにはうってつけだ。スピーディで、煽ってくるような文体は、普段誰も語ろうとしない

もっとみる
【読解】永井均「この現実が夢でないとはなぜいえないのか?」

【読解】永井均「この現実が夢でないとはなぜいえないのか?」

はじめに本noteは、『現代思想2024年1月号 特集=ビッグ・クエスチョン(青土社)』に所収された、永井均の「この現実が夢でないとはなぜいえないのか?」を紹介するものである。短い論文であり、文章に複雑さはないが、それがかえって難しい。

この現実が夢でないとはなぜいえないのか?永井の答えは、「この現実は夢の特徴を持ちあわせている」からだ。つまり、現実は夢っぽいのだ。
では、夢の特徴とは何なのだろ

もっとみる
入不二基義「懐疑論・検証主義・独我論から独現論へ」を読む

入不二基義「懐疑論・検証主義・独我論から独現論へ」を読む

はじめに入不二基義「懐疑論・検証主義・独我論から独現論へ」は大森荘蔵生誕100年の特集号である『現代思想 一二月号(2021)』に収められたテキストである。

大森荘蔵は戦後日本を代表する哲学者であり、西洋哲学の受容のみならず、自らの頭で考え抜く姿勢が後世に多くの影響を与えた人物だ。この雑誌の中でも現代の日本を代表する学者によって、数々のエピソードが紹介されている。

ただ、入不二の本テキストは通

もっとみる