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哲学書評

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#形而上学

「なぜ世界は存在するのか?」という問いはどういった問いなのか?永井均『哲学の密かな闘い』を読みつつ

「なぜ世界は存在するのか?」という問いはどういった問いなのか?永井均『哲学の密かな闘い』を読みつつ

問いがもっているべき構造世の中にはたくさんの謎がある。ある不幸な人はこう思うだろう。「なぜ自分だけこんな目にあうのか?」。また、ある科学者はこう思うかもしれない。「なぜこの世界はこのような物理法則に支配されているのだろうか?」。また、ある人はこう思う。「なぜ世界は存在するのだろうか?」と。

どのような問いも共通の構造をもっている。問われているあり方そのものと、それに対比される他の可能性としてのあ

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入不二基義『現実性の問題』第一章の円環モデル

入不二基義『現実性の問題』第一章の円環モデル

はじめに以前所感を書いた、入不二基義『現実性の問題』を読み解いていく。

本書は「現実と可能」についての考察であるが、基本的に形而上学的(存在論)な哲学書である。心の哲学や時間論がキーワード的に登場するとはいえ、あくまで、入不二の形而上学だと思って読む方が、内容に裏切られないと思う。

まず、第一章に絞り、そこで登場する「円環モデル」を本noteで紹介する。このモデルは本書全体を裏で支える通奏低音

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