パニック障害①:症状や診断基準等について
今日は、症状/疾患の解説をしていきます。
不安症群/不安障害群の代表例の1つであるパニック障害をとりあげます。
さて、パニックになる、とは一般用語化していますが、医学的なパニック発作とは、不安発作の中でも、下記のような項目を満たす、突然激しい恐怖ないし不安感が生じて、数分以内にピークに達するものをいいます。場面も、必ずしも限定されません。
アメリカ精神医学界の最新の診断基準(DSM-5)では、パニック発作の基準について、下記の13項目を挙げています。
① 動悸等
② 発汗
③ 身震い、または、震え
④ 息切れ感、息苦しさ
⑤ 窒息感
⑥ 胸の痛み、または不快感
⑦ 吐き気または腹部の不快感
⑧ めまい、ふらつき、頭が軽くなる、または気が遠くなる
⑨ 寒気または熱感
⑩ しびれ、または、ぞくぞくうずく
⑪ 現実ではない感じ、または自分自身でない感じ
⑫ 自制心を失う、または「どうかなってしまう」恐怖
⑬ 死ぬのではないかという恐怖
これら13項目のうち、5項目を満たす不安発作=パニック発作が生じ、1ヵ月以上にわたって、その方の精神状態や行動面に影響を及ぼしていると、パニック障害と診断されます。
なお、他のメンタルヘルス疾患/精神疾患にてパニック発作を呈することもありますので、その場合、正確にはパニック発作を伴う○○、という診断になります。
実は、①~⑩は、程度を問わなければ誰しもが様々な体調不良時や体調のゆらぎで、経験しうる、自律神経症状です。また、この症状の中には、過呼吸発作の症状も多く含まれています。
なんとなく、動悸がすることを経験していない人はいないでしょう。吐気でもそうです。ただし、胃腸炎になって吐き気を生じている、と原因が軽微で分かっていれば、不安を感じないものです。
したがって、突如起こる、自分では説明が出来ない場合、もしくは原因は分かっているのだが、あまりに程度が強い、そういうことによって、⑫ないし⑬を呈している事(死んでしまったり、自分が自分でなくなってしまうような、恐怖体験)が、パニック発作の本質だと考えらえれます。
実際の不安発作は5~15分でピークアウト(ピークを過ぎて、半減する)のに対し、過呼吸発作を一旦生じると30~60分程は症状が治まるまで時間を要します。パニック発作を過呼吸発作へと発展させない適切な対応が必要です。
パニック障害に陥った場合、認知行動療法(パニック発作の原因となる生活状況の分析、また症状のメカニズムの理解、対応のスキルを身に着ける、といったことをカウンセリングで行う)、SSRI(抗うつ薬の一種)を主剤とした投薬治療が有効です。
なお、パニック障害の治療で難しいのは急性期ではなく、慢性期です。
また発作を起こすのではないかという予期不安、発作を起こした場合にどうしようもなくなるのではないかという破局思考により、日常生活および社会生活に制約を受けている方が多数おられます。これらの予期不安、破局思考に対しては、薬物療法は有効ではありません。抗不安薬の頓服使用が、これらの予期不安・破局思考を強化している事例も多いと思われます。
適切な薬物療法(投薬治療)が必要な場合は当然ありますし、きちんと精神科にて診断・治療を受けるべきと思います。
ただし、急性期(最初の1ヵ月間)が経過し、数か月以降の慢性期においては、認知行動療法的取り組みが必須になるでしょう。
なんとなく、自分で対処が出来るようになる(セルフケアができる)のであれば良いですが、2~3カ月経過して、本来の生活(学校、仕事、家庭等において)が行えていないのであれば、専門家による認知行動療法的カウンセリングを受ける事が、回復への近道です。
パニック障害については、今後もいくつかの解説記事を書くつもりです。
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