松本良平

精神科専門医、医学博士、京都府立医科大学客員教授 精神科病院院長・医療法人理事長等歴任 株式会社マイシェルパ代表取締役 オンラインカウンセリングサービス「マイシェルパ」を提供 https://my-sherpa.jp/

松本良平

精神科専門医、医学博士、京都府立医科大学客員教授 精神科病院院長・医療法人理事長等歴任 株式会社マイシェルパ代表取締役 オンラインカウンセリングサービス「マイシェルパ」を提供 https://my-sherpa.jp/

最近の記事

  • 固定された記事

メンタルヘルスケアこそがヘルスケアの最重要領域である

私が講演や講義で、冒頭に、 必ず説明している事があります。 メンタルヘルス・ケアこそがヘルスケアの最重要領域である、と。 これは、私が精神科専門医だから、主張していることではありません。 データ、エビデンスに基づいた事実です。 WHOが開発した疾患による損失コストの指標に、DALY(Disability-adjusted life year)があります。  日本語訳は,障害調整生命年、わかりにくいですね。疾患による負荷を総合的に示す指標で,疾患や障害による早死だけでなく,

    • 自称「精神科医」と「精神科専門医」の違いに注意!その精神科医、本当に専門性ありますか?

      日本の医療は、世界でも最高水準にあります。 医療の質は高く、MRIやPETなどの医療機器も世界で最も普及しています。 国の施策として、誰もがどこに居ても医療にアクセスできる体制を作り上げてきました。また、規制も極めて大きい領域です。 一方で、いびつな面もあります。 その一つが、「診療標榜科」です。 これ、実は、届け出、自己申告制なのです。 私は精神科専門医であり、医師になって以来、ずっと精神科にて診療に従事してきました。ですので、一般的には「精神科医」と名乗ることはごく自

      • ギャンブル依存症

        これまで時事ネタ的な解説はしてこなかったのですが、重要なテーマですし、ギャンブル依存症および行動依存症という概念を知っていただきたく、解説させて頂きます。 依存症とは、ある行動や物質に対して、心理的または身体的に強い欲求を感じ、その使用または行為をコントロールできなくなる状態を指します。依存症は大きく分けて、「物質依存症」と「行動依存症」の二つに分類されます。 物質依存症物質依存症の代表として、合法的なものであれば、アルコールやタバコ(ニコチン)、睡眠薬や抗不安薬、違法な

        • 実際の状況が変わるわけではないので、相談する意味がない、は本当か?

          よく、悩んでいるのに、精神科医や心理士に相談したりしても意味がない、と仰られることがあります。 ですが、実際には、皆さんの想像以上に意味があるものだと、自信をもってお答えしたいです。 1. 視野・視点を広げる。まず、人は自分で思うほど、自分のことも、周囲の事もわかっていないことが多いです。 みなさんは、DCSモデルに基づいて、今の自分自身の理解ができているでしょうか? カウンセラーとの対話で、DCSモデルに基づく理解を深めることで、実はどうしようもないと思っていた状況にも、

        • 固定された記事

        メンタルヘルスケアこそがヘルスケアの最重要領域である

          海外ドラマに見るカウンセリング事例①

          米国ではメンタルヘルスは日本よりはるかにオープンに語られており、海外ドラマ、特にアメリカのドラマでは、精神科医や心理士が数多く登場し、カウンセリングも行われています。NetflixやAmazon Primeなどでも観れる人気ドラマを中心にピックアップしてみました。 今回は、特にドラマの主題として、カウンセリングやメンタルヘルスが「絡んでいない」意外な例をあげてみます。 24 -TWENTY FOUR- 2001年から2010年まで続いた超人気シリーズ。キーファー・サザーラ

          海外ドラマに見るカウンセリング事例①

          企業におけるカウンセリングサービス導入のメリット

          働く世代の健康管理、特にメンタルヘルスは大きな課題となっています。 米国では1970年代~80年代から、企業に外部カウンセリングサービスを導入するようになり、フォーチュン500(米国の売上高トップ500企業)の95%以上がカウンセリングサービスを導入しています。 特に日本は1996年をピークに労働生産人口が減り続けているので、より一人一人を大切にしないといけないことも考えると、日本国内でも、同様の取り組みが進むことが望まれています。 企業がカウンセリングサービスを導入するメ

          企業におけるカウンセリングサービス導入のメリット

          カウンセリングって、どんなもの?

          よく聞かれるのですが、カウンセリングを一言で表現したり、定義することは、中々に難しいものです。 例えば「カウンセリングとは心理的な問題やストレス、不安、悩み、人間関係の問題などについて、専門家であるカウンセラーとの対話を通じて解決策を見つけるプロセスです」ともいえるでしょう。 でも、この説明も、カウンセリングの一側面にしか焦点を当てていないと思います。 そもそも、人生や日々の生活で、困ったことや問題などに直面したときに、私たちが取り得る選択肢にはどんなものが挙げられるの

          カウンセリングって、どんなもの?

          今も昔も新卒入社の10%は3年以内に心身の不調を呈して退職している。

          最近の若者は、、、というのは、いつの時代も耳にするフレーズではないでしょうか。特に、最近の若者は、打たれ弱い、などと、私も耳にします。 はたして、本当にそうなのでしょうか。 厚生労働省では、実は1993年(平成5年)から、毎年、新卒入社の方の3年以内の退職者数やその理由を継続的に調査し公開されています。このNoteを執筆する段階で、2020年までのデータを参照しています。 3年以内に概ね3人に1人は退職し、退職理由の30%強に、「心身の不調」を挙げています。23歳前後の若

          今も昔も新卒入社の10%は3年以内に心身の不調を呈して退職している。

          「うつ」になっても誰にも相談しない子供と様子をみてしまう保護者

          2022年3月24日に国立成育医療研究センターから研究成果のプレスリリースがなされ、各種新聞やネット記事でも紹介されました。 小中学生6千名以上からのアンケート調査で、小学5~6年生の9-13% 9-13%、中学生の13-22%に中等度のうつ症状が認められるとの結果でしたが、それよりも大きな問題は 「うつ」になっても「誰にも相談せず様子をみる」こどもが25~51%というショッキングなものでした。 ですが、これが、日本の現状を物語っています。 ちなみに、 22~29%の

          「うつ」になっても誰にも相談しない子供と様子をみてしまう保護者

          再生

          京都で最大規模の産婦人科である足立病院のチャンネルで解説しました。

          今の世の中において、心身に不調を来すことは決して珍しいことではありません。信頼できる人を見つけて話を聞いてもらうこと、とても大切です。特に、精神科専門医や臨床心理士/公認心理師に気軽にカウンセリングを受ける機会があれば最も望ましいと言えます。 今回は、株式会社313 代表取締役であり、医学博士・精神科専門医である、松本 良平 先生をお招きして、オンラインカウンセリングサービス「マイシェルパ」のお話を伺いました。なぜ、このような斬新なサービスを作るに至ったのか?、そこにはカウンセリングを少しでも身近いにしたいという、熱い想いが秘められていました。ぜひ、ご覧ください! とご紹介頂いておりますので、是非とも、ご視聴頂けたらと思います。

          京都で最大規模の産婦人科である足立病院のチャンネルで解説しました。

          再生

          パニック障害③ 広場恐怖症という状態

          パニック障害の困難さは、その慢性期にある事については、既に言及してありますが、今回は、その点について解説していきます。 広場恐怖症(Agoraphobia)とは、実際に広場が怖い訳ではありませんが、精神医学では、歴史的経緯も踏まえて、呼称が残っているケースが多くあることをご理解ください(例えば、自閉症スペクトラム障害など)。 メンタルヘルス不調/疾患の診断のゴールデンスタンダードであるDSM-5の診断基準では、 A.  1.公共交通機関の利用(例:自動車、バス、電車、飛

          パニック障害③ 広場恐怖症という状態

          どうして、過労で自殺(自死)するのか。

          過労でなぜ自殺(自死)するのか、ということを疑問に思われる方は多いのではないでしょうか。 死ぬくらいであれば、休めば良い、辞めれば良い、と。 もちろん、労働者には休む権利も、辞める権利も、法的に担保されています。ですが、その当たり前の選択肢が取れない、そこが、この問題の本質です。 通常、心身の過労状態が続くと、ストレス性ホルモンにさらされて、脳機能(厳密には脳の構造も)が低下してくる状態になります。一般的にはうつ状態に該当する状態となります。冒頭の記事では、6割となって

          どうして、過労で自殺(自死)するのか。

          パニック障害② 日本では100万人以上がが悩まされている。

          DSM-5では、米国では2-3%の方がパニック障害を有しているとされていますが、各国によって、バラつきがあるとも報告されております。 日本では、0.67%、すなわち150人に1人が生涯の中でパニック障害を抱えるとの調査報告がなされています(D Nishi et al. PCN Frontier Review 2019).  なお、同論文では日本はどのメンタルヘルス疾患も有病率が他国に比べて低い報告がなされている点は議論を要するとしております。 私は、個人的には、「日本は先

          パニック障害② 日本では100万人以上がが悩まされている。

          パニック障害①:症状や診断基準等について

          今日は、症状/疾患の解説をしていきます。 不安症群/不安障害群の代表例の1つであるパニック障害をとりあげます。 さて、パニックになる、とは一般用語化していますが、医学的なパニック発作とは、不安発作の中でも、下記のような項目を満たす、突然激しい恐怖ないし不安感が生じて、数分以内にピークに達するものをいいます。場面も、必ずしも限定されません。 アメリカ精神医学界の最新の診断基準(DSM-5)では、パニック発作の基準について、下記の13項目を挙げています。 ① 動悸等 ② 

          パニック障害①:症状や診断基準等について

          HSP(Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)

          HSP(Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン) 私は、この言葉について、2年ほど前に患者さんから教えて頂きました。 その後、ネットニュースも賑やかすようになり、芸能人も自分が該当するなどと述べられて、話題になっています。 私が不勉強な精神科医だから、HSPについて知らなかったのでしょうか。 いえ、決して、そんなことはありません。 そもそも、精神医学的にも心理学的にも「確立されていない(コンセンサスをえていない)概念」だからで

          HSP(Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)

          精神疾患(メンタルヘルス疾患)・メンタルヘルス不調の診断はどのように行われているのか ①

          精神疾患(メンタルヘルス疾患)・メンタルヘルス不調の診断はどのように行われているのでしょうか。 メンタルヘルス不調・疾患名の分かりにくさ、について① で解説したように、メンタルヘルス不調・疾患はまず重複が多いこと、状態名にフォーカスをして、状態名で説明している事が、分かりにくさを助長している事について解説しています。また、追加記事は出していこうと思っていますが、本日は、専門医による診断プロセスについて、解説したいと思います。 主なポイントは2つです。 ① 症状の有無② 

          精神疾患(メンタルヘルス疾患)・メンタルヘルス不調の診断はどのように行われているのか ①