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第11回「金持ち企業ランキング」調査

今回は弊社独自で行っているリスモン調べ「金持ち企業ランキング」調査を取り上げたいと思います♪

「リスモン調べ」とは、リスクモンスターが独自に調査するレポートのことです。「企業活動」に関するさまざまな切り口の調査を実施することで、企業格付の更新に役立てていくとともに、情報発信を行うことで新しい調査ターゲットの創出、新サービスの開発などに取り組んでおります。

こんにちは、佐々木正人です。
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■ 調査の概要

1.  調査名称:第11回「金持ち企業ランキング」調査
2.  調査方法:決算書の分析結果に基づく調査
3.  調査対象決算期:2022年7月1日時点で開示されていた
            2021年4月期決算以降の最新決算
4.  調査対象企業:金融機関(銀行、証券会社、保険会社等)を除く、決算短信提出企業
5.  調査対象企業数:3,330社

1.調査結果

[1]  ランキング結果

決算書の記載に基づき算出したNetCash(※)を比較した「金持ち企業ランキング」の1位は「任天堂」(NetCash1兆2,065億円)であった。

次いで「信越化学工業」が2位(同1兆824億円)、「ファーストリテイリング」が3位(同7,020億円)となり、以下「SMC」(同6,733億円)、「リクルートホールディングス」(同6,089億円)、「SUBARU」(同5,490億円)、「第一三共」(同4,990億円)と続いた。
 
上位20社にランクインした企業のうち16社において前回調査よりもNetCashが増加しており、1兆円の大台を超える企業は、2社(任天堂、信越化学工業)に増加した。
業種別では、上位20社のうち製造業が13社ランクインしており、製造業のCash保有度合いの高さが目立つ結果となった。
 
前回順位との比較においては、「第一三共」(前回43位→今回7位)が大幅にランクアップし、上位進出となった。一方、海外企業の買収を実施した「セブン&アイ・ホールディングス」(同9位→同3,165位)と「パナソニック」(同10位→同3,110位)は、大きく順位を下げる結果となった。
(図表A)

なお、トップ100については、図表Bにまとめた。

※図表Bは一部です。続きはPDFからご確認ください。(7頁)
 
※日本会計基準 :NetCash = 現預金 - (短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + 一年以内返済の長期借入金 + 一年以内償還の社債 + 割引手形)
国際財務報告基準 :NetCash = ① 現預金 - 有利子負債 
または、② 現預金 - (借入金 + 社債 + 割引手形)  
または、③ 現預金 - (短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + 一年以内返済の長期借入金 + 一年以内償還の社債 + 割引手形)
のいずれかで算出。

[2]  ランキング上位企業分析

金持ち企業ランキング上位20社の「現預金」、「有利子負債」、「営業キャッシュフロー」について、それぞれ集計したところ、現預金では、「任天堂」、「ファーストリテイリング」、「信越化学工業」、「スズキ」、「SUBARU」が上位となった。

有利子負債においては、「任天堂」、「キーエンス」、「ファナック」、「ネクソン」、「東京エレクトロン」の5社が0円となった。営業キャッシュフローでは、「信越化学工業」、「リクルートホールディングス」、「ファーストリテイリング」、「任天堂」、「東京エレクトロン」が上位となった。

「スズキ」や「ファーストリテイリング」は、負債は多いものの、それを上回る現預金を有していることが、金持ち企業ランキング上位の要因となっていることが分かる。NetCashが1兆円を超えている「任天堂」、「信越化学工業」おいては、多額の現預金を有し、且つ有利子負債が少ないことが金持ち企業ランキング上位の要因であり、有利子負債による財務レバレッジを効かせずに、高いCash創出力を有していることが分かる。(図表C)

[3]  現預金ランキング

現預金額のみで集計を行ったところ、ランキング1位は「トヨタ自動車」となり、「ソフトバンクグループ」が2位、「楽天グループ」が3位、以下「本田技研工業」、「ソニーグループ」と続いた。

金持ち企業ランキング上位企業と現預金ランキング上位企業を比較したところ、両方にランクインしているのは、「任天堂」、「ファーストリテイリング」、「信越化学工業」、「スズキ」、「SUBARU」の5社のみとなった。(図表D)

[4]  有利子負債ランキング 

有利子負債の多寡について集計を行ったところ、1位は「トヨタ自動車」となり、「ソフトバンクグループ」が2位、「本田技研工業」が3位、以下「三菱HCキャピタル」、「日本電信電話」と続いた。(図表E)

[5]  営業キャッシュフローランキング

営業キャッシュフローについて集計を行ったところ、1位は「トヨタ自動車」となり、「日本電信電話」が2位、「ソフトバンクグループ」が3位、以下「本田技研工業」、「KDDI」と続いた。

現預金、有利子負債、営業キャッシュフローの3つのランキングすべてにランクインしているのは9社あり、これらの企業は借入により調達した多額の資金を事業へ投資することで新たなCashを創出し、現預金の積み上げに繋げている企業が多いといえる。

一方、金持ち企業ランキング上位企業と営業キャッシュフローランキング上位企業を比較したところ、両方にランクインしているのは、「信越化学工業」の1社のみとなった。同社は、有利子負債に頼らず高いCashの創出力を有していることが、多額のNetCashに繋がっているといえよう。(図表F)

[6]  配当性向との比較

金持ち企業ランキング上位20社の配当性向を調査したところ、1位は「第一三共」(配当性向77.3%)、次いで「SUBARU」(同61.3%)、「ファナック」(同60.0%)と続いた。

前年度との比較では、20社中12社の配当性向が低下しており、前年度に100周年記念配当を実施したシマノ(前年度51.8%→今年度18.8%)、前年度から純利益が2倍となったファーストリテイリング(同54.2%→同28.9%)は、前年度から配当性向が20ポイント以上低下する結果となった。(図表G)

同様に、金持ち企業ランキングベスト100の企業について、配当性向を調査したところ、前回は100社中54社が上昇した一方、今回は100社中59社が低下している。2022年3月期決算の上場企業のうち、3社に1社が最高益を更新し、利益が増加している一方、現下の不透明な経済環境を考慮し、積極的な増配による株主還元には慎重な企業が多かったとみられる。(図表H)

2.総評

第11回金持ち企業ランキングは、前回調査に続き1位「任天堂」、2位「信越化学工業」、3位「ファーストリテイリング」となった。

「任天堂」、「信越化学工業」は、現預金ランキングの上位に位置し、多額のCashを保有しつつも有利子負債が少ないことが、NetCashを豊富に有する要因となった。

一方、「トヨタ自動車」、「ソフトバンクグループ」は、金持ち企業ランキングの上位には入っていないものの、現預金、有利子負債、営業キャッシュフローの3項目において、すべて3位内となっており、現預金額を超える有利子負債により財務レバレッジを効かせることで、多額の営業キャッシュフローを獲得できている企業であることが分かる。
 
今回のランキングは上位企業に大きな変動は見られなかったものの、上位20社のうち16社、上位100社のうち76社において前年度よりもNetCashが増加しており、全体的に企業が保有するCashの増加傾向が表れている。

経営の三大資源の一つである「カネ」を保有しておくことは、安定した経営を実現する上で必要であり、NetCashの増加企業においては、経営の安定性を高めたいという事業戦略がうかがえよう。

7月に入って急激に感染者が増加した新型コロナウイルスは依然として終息が見えず、7月1日に発表された日銀短観では、大企業製造業業況判断DIが2四半期連続で悪化した。20年ぶりの円安進行や物価上昇、ロシアによるウクライナへの侵攻も懸念材料であり、Cashレベルを高めておきたいという経営者の意向も当然であろう。

一方、2022年3月期決算の上場企業のうち、3社に1社が最高益を更新するなど、企業の収益は好調であり、本来であれば獲得した利益は投資や株主還元に回すことになるが、配当性向を調査したところ金持ち企業ランキング上位100社中59社が低下している。

前述の通り100社中76社のNetCashが増加していることを考えれば、利益は出ているものの、現下の不透明な経済環境を考慮しCashの積み増しを選択した企業が多かったと考えられる。

本調査の結果からは、「企業業績は好調だが、事業環境が不透明であるためCashは使わず貯めている」企業が多いといえる。確かに、先行きの見えない状況において、不測の事態に対応できるだけのCashを確保しておく必要はあろう。

一方で本ランキング上位は、日本の中でも安定性の高い優良企業ばかりであり、今後の経済回復の牽引役となっていくべき企業である。新型コロナの終息や懸念される経済環境が改善した際には、これらの企業が現下に積み上げたCashを積極的に活用することにより、景気回復の後押しとなることを期待したい。

本日の内容は以上になります。
次回もお楽しみにでは

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