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シェイクスピア作品感想リスト

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シェイクスピア作品の感想をまとめました。気になる作品があれば、ぜひご覧ください。
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『ペリクリーズ』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『ペリクリーズ』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

本作『ペリクリーズ』は1607年から1608年に掛けて執筆された作品で、「四大悲劇」と呼ばれる『ハムレット』、『マクベス』、『リア王』、『オセロー』が発表された後の、シェイクスピア晩年に生み出されたものです。晩年に開花したシェイクスピアの悲喜劇(ロマンス劇)は、大きく前半と後半に分けることができ、前半部分で語られる悲劇調の物語から、後半部分で

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『尺には尺を』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『尺には尺を』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

本作『尺には尺を』は一般的に「喜劇」として扱われています。結末を婚姻の成就で締めくくり、道化的なやり取りを据えていることからも、「シェイクスピア喜劇」の枠内に収められる要素は多くあります。しかしながら本作は、作中を通底する「死と欲」が空気を満たして作品全体を陰鬱さで覆っています。この絶頂期に生み出された『尺には尺を』は、『トロイラスとクレシダ

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『恋の骨折り損』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『恋の骨折り損』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

十六世紀後半、カトリック国のフランスではルターの思想を契機に勢いづいた新教派(カルヴァン派)が、フランスの商工業者層を中心に活動を強めて勢力を拡大していました。国教に背く行為であるとして、フランスは新教派に対して厳しい弾圧を与えましたが、商工業者たちが繋がっている各貴族たちをも取り込み、王権の強化に対する反発と相まって、カトリック(旧教派)と

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『アテネのタイモン』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『アテネのタイモン』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

アテネの繁栄に助力した資産家タイモンは寛大な心で人々に接し、毎日を盛大な晩餐で隣人を招き、多くの人々の望みを叶えて互いに満足していました。もてなすタイモンは、隣人として、または友人として多額の金を振る舞い、周囲には人情の人として知られて持て囃されていました。その行いが当たり前のように民衆には認知され、やがて見返りを求めて様々なものを売り付けよ

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『シンベリン』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『シンベリン』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回の作品はこちらです。

古代ブリテンの国王シンベリンには二人の王子と一人の美しい娘がいましたが、後妻を迎えたころに幼い王子たちは失踪して行方不明になりました。世継ぎの問題もあり、一人娘のイノジェン(イモージェン)の婚姻に関しては後妻の息子クローテンと結び付けようと考えていましたが、彼女は密かに愛情を育んでいた紳士ポステュマスと既に契りを交わしていました。これを認める

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『ウィンザーの陽気な女房たち』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『ウィンザーの陽気な女房たち』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

1597年から1598年に執筆されたと言われる本作『ウィンザーの陽気な女房たち』は、題名どおりにシェイクスピア作品のなかでも頭抜けて陽気な感情で観る(読む)ことができる演劇です。諸説ありますが一説に、シェイクスピアの劇団を支援する宮内大臣であるジョージ・ケアリー男爵がガーター勲章を授かり、それを祝う騎士団の祝宴で喜劇を披露することになったため

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『終わりよければすべてよし』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『終わりよければすべてよし』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

この作品は1601年から1606年の間とされており、一般的にシェイクスピア作品のなかで「問題劇」と呼ばれる『トロイラスとクレシダ』及び『尺には尺を』などと共に括られています。三作どれもが、暗く苦い笑いと不愉快な人間関係を軸に描かれており、これはシェイクスピアの喜劇時代に執筆された『十二夜』や『お気に召すまま』のような幸福感が表現されている喜劇

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『ヴェローナの二紳士』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『ヴェローナの二紳士』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

ヴェローナの紳士であるヴァレンタインとプローテュースは、互いに固い友情を交わし、何事も隠し事のない強い絆で結ばれていました。しかし恋愛についての考え方は正反対で、ヴァレンタインはそのようなものに関心を持つことができず、見識を広めたいという思いからミラノ公爵のもとへと旅立ちます。反してプローテュースは恋人ジュリアのもとを離れる気が起きず、ヴェロ

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『タイタス・アンドロニカス』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『タイタス・アンドロニカス』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)は、劇作家として活躍する初期の1588年から1593年の間にこの劇を書いたと考えられています。『タイタス・アンドロニカス』は、彼の作品のなかで最も暴力的で血生臭い作品の一つであり、名誉の力と暴力の破壊的な性質を題材として描かれています。

執筆当時のエリザベス朝時代では、ラテン文学と称されるオウ

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『サー・トマス・モア』ウィリアム・シェイクスピア 他 感想

『サー・トマス・モア』ウィリアム・シェイクスピア 他 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

サー・トマス・モア(1478-1535)は十六世紀に法律家として活躍した思想家です。ロンドンの法律家のもとで生まれ、裕福な環境のなかで育てられました。オックスフォード大学で古典の哲学や文学を学びましたが、家業に倣って法律家を目指すため、法律学校へと移ります。法学を修めると、その才覚はすぐに芽生え、多くの人々の支持を得ます。その後、二十代にして

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『お気に召すまま』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『お気に召すまま』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

本作『お気に召すまま』の種本は、トマス・ロッジ『ロザリンド』(1590)と、作者不詳の物語詩『ギャミリン物語』(1400)が用いられています。両作品に描かれる残虐な死の場面や、淫蕩で不幸な場面などはシェイクスピアによって姿を消され、おかしみや機知に富んだ会話に溢れた作品へと変化されています。シェイクスピア作品のなかで、最も甘美で、最も幸福な物

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『アントニーとクレオパトラ』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『アントニーとクレオパトラ』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

本作『アントニーとクレオパトラ』は、『ジュリアス・シーザー』の後の舞台を描いており、これらを二部作と括る場合もあります。シェイクスピアは『ジュリアス・シーザー』を転換点として、その作風に強く深い悲劇性を帯びさせていき、『ハムレット』『オセロー』『マクベス』『リア王』の四大悲劇を生み出します。その後、『ジュリアス・シーザー』に呼応させるように、

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『ジュリアス・シーザー』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『ジュリアス・シーザー』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

プルターク英雄伝を概ねの種本として描かれた本作『ジュリアス・シーザー』は、シェイクスピアにとって絶頂期に差し掛かろうとする成長著しい時期に執筆されました。『空騒ぎ』『十二夜』などの喜劇、『ヘンリー四世』『ヘンリー五世』といった史劇を生み出していたなか、浮かび上がるこの悲劇は特徴的な立ち位置と言えます。喜劇でありながら強く浮かび上がった悲劇性を

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『リチャード三世』ウィリアム・シェイクスピア 感想

『リチャード三世』ウィリアム・シェイクスピア 感想

こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。

1339〜1453年まで続いたプランタジネット家(イギリス)とヴァロワ家(フランス)によるフランス王位をめぐる実質的な領地争い「百年戦争」。この両諸侯による長い争いは、両国において封建領主の没落をもたらし、結果的に王権が強化されることになりました。国王のもとで統一的な国家機構(絶対王政)を構築し、主権国家となって領地と国民が紐付けられました。

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