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四神京詞華集~shishinkyo・anthologie~

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四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(5)

四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(5)

○四神宮・朱雀門
話は少しばかり遡る。
ほどなくして、少納言橘不比等は参内の折、蘇我左府とすれ違った。
宮中元老の敵、バラガキリーダーの不比等は、しかし以外にも
「老害○ね」
などと言った暴言を嫌い、舎弟連中に対しても彼らの気炎に冷や水を浴びせぬ程度には戒めるようにしている。
別に年配に対する配慮ではない。
理由はもっと簡単で、至極当然のもの。
それがいつか自分に跳ね返って来るブーメランの刃だから

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四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(4)

四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(4)

さてここで、毎度おなじみ唐突に「説明しよう!」タイムである。
こういうのは話が込み入って来ないうちに雰囲気も流れもぶった切ってサッと解説を入れるのがタツ○コプロメソッドだ。
往年の富山敬氏のナレーションで脳内変換してほしい。
娑婆塞。
それは得度されてない私度僧、といえば聞こえはいいが、ようは税金を逃れ田畑を放置し、修行托鉢という名の流浪と物乞いと若干の恫喝を善男善女に対して行う無頼の輩の総称ある

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四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(3)

四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(3)

○尊星宮・庭
薪を割っているナミダと、狛亥丸。
 
ナミダ「うーん。どうしても上手くいかないなあ」
狛亥丸「では、鉈の刃をこうして薪に食い込ませてですね。そのまま薪ごとキリカブ台に向かって振り下ろしてみては?」
ナミダ「よっ! やった、出来た!」
 
と、様子見にやって来る穢麻呂。
 
穢麻呂「おう、やっておるな。感心感心」
ナミダ「でも狛さんみたくこうパッカーンと勢いつけて割りたいんだけど」

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四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(2)

四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(2)

〇四神宮・紫宸殿
今なおガンを飛ばしたい気満々の不比等は、しかし視線を落として、覇気を少しも感じさせない鼻にかかった右大臣の声を聞く。

狩屋「朔の神隠し。その解明まことに大儀である。橘朝臣不比等、物部灰麿に代わりて少納言に任ずる」

これこそが不比等の狙いとするところであった。

「倅の不始末をオオゴトにしない代わりに、俺にものもうさせやがれ!」

ようは事件を利用して、遠回しに左大臣を恫喝した

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四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(1)

四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(1)

権力者の大事なお仕事の一つにシステムを複雑化させるというものがある。
責任の所在を曖昧にするためだ。
己はもとより己に近しい関係者各位に配慮しまくり、彼らの眼下の遥か下、塵芥ほどの小さな存在に最大限責任をなすりつけて、何か事が起これば万能パスワード
「KIOKUNI-GOZAIMASEN」
或いは
「HISYOGA-YARIMASITA」
しかる後に
「FUTOKUNO-ITASUTOKORO-D

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四神京詞華集/DARKNATION

四神京詞華集/DARKNATION

表があれば裏がある。光があれば闇がある。
大内裏四神宮に明確な闇が生まれたのはちょうど十年前。
四神京開闢の祖、聖武帝が薨去し、皇太子宝子(たからこ)が幸謙帝として即位してからわずか二年。女帝は突如として傍流の継承者に帝位を譲って、若干二十歳にして上皇となった。
新たなる帝の名を純仁帝、これまた若干、十六。
その若すぎる王族たちに対して、既得権益の権化のような大貴族が老賢者の如く知見と節度を以て粛

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四神京詞華集/シンプルストーリー(21)

四神京詞華集/シンプルストーリー(21)

【バトル終了】

鈍色と金色の珪甲(かけよろい)に緋色の胞を纏った男二人と、彼らに率いられた衛士達が乗り込んできた。
黒い鎧は坂上武者麻呂、そして金の鎧は橘不比等である。
 
武者麻呂「姿だけでなく、性根までも修羅畜生と成り果てるか」
穢麻呂「……」
不比等「蝦夷穢麻呂」
穢麻呂「……手向かい無用」

鬼へと変形している穢麻呂には最早表情などない。
ただ憎悪と苦悶だけがへばり付いている。
 ふと傍

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四神京詞華集/シンプルストーリー(20)

四神京詞華集/シンプルストーリー(20)

【穢麻呂のターン】

一方の穢麻呂と有鹿の戦いは彼らの番犬と番鳥(?)に比べてはるか常識的で地味で絵にならないものであった。
むしろ勝負は論戦だと言わんばかりに、とにかく無駄口が多い。

穢麻呂「我に言わせれば、このアジトの場所など容易に察しがつく。白虎岳は木々の少ない岩肌、玄武山は内裏を背から見下ろす禁足地。ならば残るは青龍峰に連なる山々の麓。さらに言えばその森を虱潰しにさらえばよいものを衛士が

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四神京詞華集/シンプルストーリー(19)

四神京詞華集/シンプルストーリー(19)

【狛さんズのターン】

○人さらいのアジト(夜)
苦戦の原因は勿論、狛さん自身のメンタルにあった。
相手は「お前行け」「いやお前が行け」と譲り合いの精神で一人一人倒れて行った田舎盗賊とはわけが違うようだ。
絶妙のコンビネーションで襲いかかって来る右覚と左輔。
一方が攻撃の時は一方が防御に徹し、こちら側はいつのまにやら防戦どころか回避で一杯一杯なところまで追い込まれている。
と、脳裏に語りかけてくる

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四神京詞華集/シンプルストーリー(18)

四神京詞華集/シンプルストーリー(18)

【さあ!戦いだ!】

〇人さらいのアジト(夜)
最初に狛亥丸に襲いかかった盗賊は「?」と思った数秒後に気絶した。
ただ仮面の男と刃を交えただけなのに次の瞬間には太刀が真っ二つに折れ、その次の瞬間に延髄に重い衝撃が走り、その次の瞬間には意識が消失した。
これを彼が口にした言葉、つまり台詞のみで表すと。
 
雑魚盗賊1「はっ? はっ! はっ……」
 
である。
小説に比べ脚本とはつくづく楽な仕事だと思

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四神京詞華集/シンプルストーリー(17)

四神京詞華集/シンプルストーリー(17)

【そして開始された、作戦】

穢麻呂「闇夜の神隠しを知っているか?」
ナミダ「噂だけは。月のない夜に雑仕女がかどわかされる事件ですよね」
穢麻呂「我が四神京に来る前からだそうだがな」
ナミダ「もうひととせ以上になりますね。衛士の網にも引っかからぬ事から都の怪異のひとつとして語られていました」
穢麻呂「衛士の目をかいくぐりか。当然だ。おそらくは衛士の動きを把握し指示を出し操れるほどの大物が黒幕なのだ

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四神京詞華集/シンプルストーリー(16)

四神京詞華集/シンプルストーリー(16)

【百屋の営業活動】

百屋「はい、今日ご紹介するのはですね、香木でございます。香木といってもそんじょそこらの杉やヒノキじゃありませんよ、奥さん」
ナミダ「いえ奥さんじゃないです」
百屋「香木の原産地、ご存じですか?」
ナミダ「唐っすか?」
百屋「惜しい! 唐の南の黄金諸島なる島々でのみ捕れる、枯れた木を加工したものです。お嬢さん」
ナミダ「はいお嬢さんです」
百屋「沈香。伽羅、百壇、龍脳、そういっ

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四神京詞華集/シンプルストーリー(15)

四神京詞華集/シンプルストーリー(15)

【百屋です】

「ナミダ……汝の名はナミダ。これよりはそう名乗るがよい」

的な?
そうちょっと格好つけた感じで小粋なシーンを自己演出してみた穢麻呂は、一週間も経たぬうちに大後悔する羽目になるのだった。
この女、とにかく使い物にならない。
昭和の名曲の歌詞にある
『炊事洗濯まるでダメ。食べることだけ三人前』
を地で行ってるのだ。
いっそ『プイと出たきりハイそれまでヨ』
になってもらいたい所なのに、

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四神京詞華集/シンプルストーリー(14)

四神京詞華集/シンプルストーリー(14)

【悪い黄門さま】

○人さらいのアジト(夜)
闇と同化するような濃い紫の袍(ローブ)と胞(マント)に身を包み、冠に雑面をつけた偉丈夫が現れる。
盗賊どもは幾分緊張し、だが表向きは平静を装い酒を飲み続ける。
 
雑面の偉丈夫「待たせたな」
盗賊1「いや」
盗賊2「お一人ですかい?」
雑面の偉丈夫「他の者には任せられん」
盗賊1「さすがは名高き悪黄門さまだ。肝が据わっとる」
 
雑面を取る、偉丈夫。

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