山本律磨

放作協(https://www.hosakkyo-kyushu.com) アマチュアイズム&オリジナル&ハンドメイド&チャイルディッシュ&チープ。 タップノベルはこちら(https://tapnovel.com/writers/1641

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四神京詞華集/NAMIDA(1)

もともとはブログなるものをやっていた。 愚痴愚痴と10年以上。 誰に向けたものでもない、誰も見ることのない忘備録を。 それがnoteなるものを見つけてまた愚痴愚痴と数年。 やがては宣伝することもなくなって、創作物なんぞ載っけようなどと思って書き殴る作品がこれである。 さくっと説明をするとまず、小説ではない。 これは私自身が状況描写や心理の掘り下げに全く興味がなく見る方でも書く方でもサクサク話が進んでほしいタイプだからだ。 ジャンルは『ト書きがクドイ脚本と』勝手に呼んでいる。

    • 四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(5)

      ○四神宮・朱雀門 話は少しばかり遡る。 ほどなくして、少納言橘不比等は参内の折、蘇我左府とすれ違った。 宮中元老の敵、バラガキリーダーの不比等は、しかし以外にも 「老害○ね」 などと言った暴言を嫌い、舎弟連中に対しても彼らの気炎に冷や水を浴びせぬ程度には戒めるようにしている。 別に年配に対する配慮ではない。 理由はもっと簡単で、至極当然のもの。 それがいつか自分に跳ね返って来るブーメランの刃だからだ。 年長者などみな多かれ少なかれ若輩にとって煩雑か侮蔑の存在のどちらかであり、

      • センゴクマロ(2)

        ○九頭竜村・宜賢の庵・表(夜) 山を背に、簡素な草庵。 宜賢の声「この愚か者ども!」   ○宜賢の庵(夜) 板敷一室に山と積まれた経書の群れ。 灯に侘しく照らされる唐机に万年床。 典子と国賢に怒鳴り散らす宜賢。 宜賢「代官は反上洛派の急先鋒。奴に足利公との繋がりを知られれば、朝倉家の者共に警戒されてしまうではないか。折角義景殿の信頼を得ようとしておるのが台無しぞ」 典子、ぼそぼそと国賢に囁く。 宜賢「何だ」 国賢「あの。ですから父上はここで何をされておいでなのですか?

        • センゴクマロ(1)

          ○一乗谷・朝倉館 書見台を前に、姿勢正しく講釈をする狩衣の公家唐条宜賢(40) 『尊王賤覇』と書かれた紙を掲げる。 宜賢「世は戦国。君主は何よりも徳を尊び王道を征くべし。力に頼るは覇道なり。それ即ち天の誅罰を受けるものなり」 直垂の朝倉義景(36)陶酔する宜賢の目を盗んで扇の下で欠伸をする。 宜賢「……義景殿」 義景「え? ああ、聞いておる。聞いておるぞよ」 愛想笑いの義景と仏頂面の宜賢。 宜賢「次は天の刻、地の利、人の和について……」 N「古えより権勢を振ってき

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        四神京詞華集/NAMIDA(1)

        マガジン

        • 四神京詞華集~shishinkyo・anthologie~
          56本
        • SAIAKU~最後の悪代官~
          21本
        • 場末ノZ
          12本
        • クラウン~嘘八百応仁ノ乱~
          23本
        • GATE~朱雀と羅城~
          2本
        • 妖瞞の国(あやかしまやかしのくに)
          7本

        記事

          最悪(終)

          ○天網屋・表(夜) 箱馬車が止まる。 館の前におびただしい数の警官の姿。 警官3「天網屋龍左衛門並びに、芹沢桃介。馬車を降りよ!」 馬車から降りる天尽と桃介。 警官3「芹沢桃介。民政裁判所事務官を騙り司法省の名を使い過激な手段で民権運動を扇動した罪。詐欺罪及び讒謗律適応相当に値するものとし、逮捕する」 桃介「し、知らん」 警官3「この男が自ら東京に出頭して、黒金郡の混乱を洗いざらい全部告発したぞ」 縄についた忠蔵が現れる。 警官3「己の罪も含めてな」 忠蔵「黒金郡郡

          場末ノZ(12)

          ○劇場かてどらる・廊下(夜) ルナの写真の前でボックスを踏んでいる武藤。 塚越の声「暁ルナ。かつてのナンバーワンだよ。俺が店買い取る前だから、二十年くらい前かな」 煙草を手に、武藤の隣に並ぶ塚越。 塚越「ステージ録画したの残っててさ。それ見せたらマリア、感動しちゃってさ。まあ俺もだけど。なんかこう心も体もむき出しっていうか。今度君も観る? うん?」 武藤「……」 塚越、突然武藤をくすぐる。 武藤、少し驚くも無反応。 塚越「くすぐったいのは平気なんだ」 武藤「はい。そ

          場末ノZ(12)

          四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(4)

          さてここで、毎度おなじみ唐突に「説明しよう!」タイムである。 こういうのは話が込み入って来ないうちに雰囲気も流れもぶった切ってサッと解説を入れるのがタツ○コプロメソッドだ。 往年の富山敬氏のナレーションで脳内変換してほしい。 娑婆塞。 それは得度されてない私度僧、といえば聞こえはいいが、ようは税金を逃れ田畑を放置し、修行托鉢という名の流浪と物乞いと若干の恫喝を善男善女に対して行う無頼の輩の総称ある。 だが、一時期、彼らが一丸となり公共事業に従事した時代があった。 真の仏道の力

          四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(4)

          最悪(20)

          〇代官所・代官屋敷・庭園    驚く一同。 修理「力で脅し金で釣り誇りを奪い命を下す。それが文明開化か。ならば、儂の政は存外間違ってなかったみたいだのう」 修理、毅然と語る。 修理「ただ名を失うだけ、生業が変わるだけ? 足場がなくなるのがどんなにつらいことか。何が国是だ。何が四民平等だ。何が自由だ。仕来りによって安らかに生きている者もおる。肩書や序列で混乱が無くなることもある」 桃介に向かって叫ぶ修理。 修理「鉄を失い何の黒金ぞ! 我らは天領が鬼。この村を有象無象と

          最悪(20)

          場末ノZ(11)

          ○映画館 映画を見ているマリアと湊太。   ○ショッピングモール・屋内 賑やかな館内を、笑い合いながら歩くマリアと湊太。   ○同・フードコート ふと、辺りを見回すマリア。 沢山の家族連れが食事をしている。 と、ヤンママが子供を怒鳴りつける。 その横を飲み物を持った湊太が通り、マリアのテーブルに座る。 湊太「なんか気分悪いね」 マリア「私はちょっと羨ましいな。あそこまでむき出しで怒られたことってないから」 湊太「ねえ。教会ってどんな感じ?」 マリア「孤児院のこと?」 マリ

          場末ノZ(11)

          最悪(19)

          ○代官屋敷・庭園 『第壱回黒金郡郡長選挙』の札が立つ。 郡長候補者の名と職が貼られた看板。 豪農の名に混ざり、桃介と天尽の名も。 パラソルが立ち、着飾った村民の談笑。 若き百姓や亀作の姿もある。 そこに厳粛さはなく、宴の様相。 投票用紙と投票箱の置かれた机が庭園の隅に設けられ、老若男女が並ぶ。 サト、書いてるフリだけで白紙のままの投票用紙を投票箱に入れる。 洋装にカイゼル髭の県令が入って来る。 天尽と桃介が県令に駆け寄る。 天尽「これはこれは県令様」 桃介「ご無沙汰しており

          最悪(19)

          四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(3)

          ○尊星宮・庭 薪を割っているナミダと、狛亥丸。   ナミダ「うーん。どうしても上手くいかないなあ」 狛亥丸「では、鉈の刃をこうして薪に食い込ませてですね。そのまま薪ごとキリカブ台に向かって振り下ろしてみては?」 ナミダ「よっ! やった、出来た!」   と、様子見にやって来る穢麻呂。   穢麻呂「おう、やっておるな。感心感心」 ナミダ「でも狛さんみたくこうパッカーンと勢いつけて割りたいんだけど」 穢麻呂「そういう場合は鉈をキリカブ台に対して水平にだな」 ナミダ「あ、そうそう、狛

          四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(3)

          場末ノZ(10)

          ○湾岸・公園(夜) ベンチでいちゃついているカップル。 マリアの声「お前は本当にダメな男だねえ!」 武藤の声「ごめんないマリア様~!」 マリアの前で正座している武藤。 マリア「マリア様じゃない女王様とお呼び!」 武藤「ああ~女王様~!」 カップル、気味悪がって公園を出てゆく。 マリア「はい一回止めます」 武藤「お疲れ様です」 マリア「なんか違うよね」 武藤「違いますね」 マリア「どう違う?」 武藤「どう違います?」 マリア「ちゃんと考えよう。そういう所だよ」 武藤「

          場末ノZ(10)

          最悪(18)

          ○森のタタラ場・外(夜) 修理の下に集まっている長老達。 修理「此度の一件。何もかも我が不徳の致すところである。この通りだ」 修理、長老達に頭を下げる。 ウラ「続けられませ」 修理「我は我なりに代官として学び、黒金の鉄を守ろうとしたつもりだ」 反発しようとする長老達を遮るウラ。 ウラ「続けられませ」 修理「分明開化とはすなわち産業革命。これ迄のタタラの技法では世の大量生産の波に追いつけぬ。故に父も我もタタラ場の近代化を望んだ」 修理、皆の様子を伺う。 ウラ「続け

          最悪(18)

          四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(2)

          〇四神宮・紫宸殿 今なおガンを飛ばしたい気満々の不比等は、しかし視線を落として、覇気を少しも感じさせない鼻にかかった右大臣の声を聞く。 狩屋「朔の神隠し。その解明まことに大儀である。橘朝臣不比等、物部灰麿に代わりて少納言に任ずる」 これこそが不比等の狙いとするところであった。 「倅の不始末をオオゴトにしない代わりに、俺にものもうさせやがれ!」 ようは事件を利用して、遠回しに左大臣を恫喝したのである。 これによって御前会議で蘇我物部VS藤橘という陣形が構築できる。 蘇我

          四神京詞華集/ディスペルへの遠き道(2)

          場末ノZ(9)

          ○劇場かてどらる・舞台(夜) マリアが登場し、一転歓声があがる。 客席にはファンや場末の男達。 ファン1「成程成程。そういうテイストね」 ファン2「確かにこれって、マリア様的には未開拓のジャンルだよね」 場末の男1「うるせえ黙って見ろ!」 VIP席につく塚越。 マリアに鞭で叩かれる武藤。 わざとらしく舞台上を転がりヒールで顔を踏みつけられる。 客席から失笑がこぼれる。 小首をかしげ不満そうな塚越。 塚越「あれ? こんな感じじゃねーんだけどな」 マリア、武藤を見下ろして

          場末ノZ(9)

          場末ノZ(8)

          ○御光町・駅前 ギターを抱えて歩く湊太。顔に絆創膏。 申しわけなさげなマリアと、武藤。 マリア「今日は何か、ごめんなさい」 湊太「全然。ちょっと不意つかれただけだし」 笑い合うマリアと湊太。 湊太「すげえじゃん。御影町の人気ダンサーって。今度コラボしようよ」 マリア「いいの? 私なんかで」 湊太「いいっすよね。マネージャーさん」 武藤「支配人に話してみます」 湊太「よろしく。じゃあまた」 湊太、駅構内に去ってゆく。 マリア「話さなくていいから」 武藤「そうですか」

          場末ノZ(8)