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モノローグでモノクロームな世界

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2020年4月の記事一覧

モノローグでモノクロームな世界

モノローグでモノクロームな世界

第十部 第三章
三、
 二重の壁の近くに、付属品のように建てられた小さな建物。
それが神代真飛から教えてもらったTheBeeのシステムを司る建物だった。建物の付近には、見渡す限り、警備の者も警備システムも見当たらなかった。この世界を創っているシステムがこんなに野放しな状態とは。神代から教えられていなかったら、ケイ自身、この小さな建物内に重要なシステムがあるとは信じなかったであろう。
 外側の壁に、

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第十部 第三章
二、
 この世界には他にも問題が多い。
安心安全の名のもとに集められた人々の個人情報。それらは、感情という極めてパーソナルな部分まで全てが数値化され判断される。
そして、そこにそぐわないと判断された人々は、壁の外へと追放される。意思も生まれも関係なく。
 壁の中の人々にしても、かつての西暦世界のような自由度は極めて低い。人々はこれら収集された個人の情報に基づき、将来の職業選択が適宜

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モノローグでモノクロームな世界

第十部 第三章
一、
 副島にとって、壁の中の世界は本当に善き場所だったのかは分からない。もしかしたら、あの時祖父に着いてワームに行った方が、幸せだったかもしれないとさえ、時々思う。
 副島は、壁の外に完全に出た事は一度もない。
サカイで暮らすワーム以外の彼らの居住先は、皆、壁の外だ。ポッドという舟の中での暮らしではあるが、それがどんな生活なのか、彼には全く想像さえできない。
 壁の外はどんな世界

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モノローグでモノクロームな世界

第十部 第二章
三、
 TheBeeのシステムの内、人々に幻覚のような共感覚を引き起こすシステムを止める事。それが、ケイに課せられた任務だった。
 壁の外の実地調査が終わり、人々が再び暮らしていけるような安全面が確保されれば、いずれ壁は壊されるだろう。だが、そこまで世界を導いていく必要がある。その為に、ワームは存在する。そう彼は説明をしてくれた。
 壁が担う循環システムは維持したまま、共感覚を引き

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第十部 第二章
二、
 ツツジと別れたケイは、足早に懐かしい施設内を歩き続ける。

二重の壁が視界に映る大きな窓。
人の熱に反応して次々と灯る回廊。
よくツツジと休憩中に談笑していたラウンジ。
停泊中の舟が一望できる渡り廊下。
今、眼下に映る舟の中で一番小さな機体が、ケイがダームシティから乗船してきた舟だった。
燃料は片道分だけ。帰りの舟の予定は無い。
 神代真飛の話によれば、世界中の壁は十月国の

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モノローグでモノクロームな世界

モノローグでモノクロームな世界

第十部 第二章
一、
 あの時、全てを棄てる覚悟でこの壁を出た筈だった。
だが、いざ壁の中へ、生まれ育った国へと帰って来たケイの心中は、温かいもので一杯だった。
 これが郷愁というものなのだろうか。
喪われた古い書物に書かれていた、今はもう誰も使わない言葉。
壁の外から出る事なく、国から出る事なく、生まれたその場所で、ずっと生きていたならば、その言葉が持つ意味も、その言葉が意味する感情も味わうこと

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第十部 第一章
三、
 胸ポケットからサカイの闇市で仕入れた紙煙草を取り出すと、口に咥え、火を灯す。
紫煙を胸一杯に吸い込むと、散らばった思考が一つにまとまっていくような気がした。

 彼のトリプル・システムは、まるで持ち主の意向を汲んだように、副島自身がこれは身の危険だと感知すること以外は、判定が緩い。検閲官という立場上、特例措置が取られていることを考えても、多少の事態には、ありがたい事にデータ

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第十部 第一章
二、
 まだ副島が幼かった頃、祖父に『色』について尋ねたことがあった。

その時の祖父の驚愕と絶望が入り混じった表情も、父のこの世ならざる者を見たような凍り付いた表情も、母の腫れものに触れるようなよそよそしい態度も。

 忘れようとしても忘れることが出来なかった。

その時の何気ないその一言が、彼の日常を、そして、家族の人生を、あっけなく壊してしまった。
違うと父は言ってくれた。母

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モノローグでモノクロームな世界

モノローグでモノクロームな世界

第十部 第一章
一、
 祖父の論文は、要約するとこうだった。
『TheBeeの共鳴装置が発生する共振動音。これにより、人々にある種の幻覚のような症状を引き起こし、言わば一種の集団催眠のような効果を壁の中にもたらしている。
 壁の中には、一定間隔毎に衛生管理やエネルギー循環を行う必要があるため、TheBeeが設置されているが、この一定間隔に設置されたTheBeeはこれらの環境管理をする一方で、満遍な

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WhiteNOise #16

WhiteNOise #16

ネオンカラーの花が咲く。

檸檬色の光が僕らを包む。

霧が駆けていく。

僕達は、ここで生まれた。
僕達は、ここで生きている。

青灰色の空から降る白銀の涙。
鼠色に染まる地。

僕達は、ここで息をしている。
僕達は、ここで笑い合う。

菫色にグラデーション。
白いキャンバスに色づく世界。

僕達は、ここで夢を見る。
僕達は、ここで夢を叶える。

世界は色を取り戻した。
僕達は色を創りだした。

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第九部 第三章
三、
 神代真飛は、憑き物が落ちたように、どこか、からっとした笑みを浮かべ、地上へと戻るエレベーターまでケイを送ってくれた。
 上昇していくエレベーターの中で、ケイは彼から聞いた話、そして、『アレグロ・バルバロ』に隠されていた暗号を反芻した。

 あの映像に隠されていた色の暗号。
それを、TheBeeに打ち込む。そうすれば、TheBeeの共鳴装置は止まると彼は断言した。今は、それに

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モノローグでモノクロームな世界

第九部 第三章
二、
 白い壁に映しだされる映像。
羽を背に宿したアレグロとハナ。
巨大な迷路のような蜂撥。
アレグロとハナが運ぶ手紙が空を舞う。
大小のテント小屋にいるのは、髭を生やした小太りのサァカス団の団長や、
蛇の鱗を纏う女。
そこに映し出される映像は、ケイが子供の頃に見て以来、探し続けていた作品だった。
束の間、懐かしい同窓に出会ったかのような郷愁と愛おしさで胸が一杯になる。

「アレグ

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第九部 第三章
一、
 「貴方を殺すため?」

 地下深いこの部屋はまるで時間という概念から取り残されてしまったかのように、何の変化も無かった。
時計も無い。
カレンダーも無い。
トリプル・システムによる昼時間も夜時間も無い。
ただあるのは、昨日と変わらない毎日だけ。
 壁の中の世界に慣れているはずなのに、その事を意識した瞬間、
無性に息苦しさを覚えた。
時間に置き去りにされた空間。
そこに取り込

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