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生きづらさを感じている、あなたへ、わたしへ、

以下は、少し前にnoteに書いたものですが、まだ詩集のタイトル公表前だったので(わたしが勝手に決めただけですが)具体的なことをかけていないのですが、もしかすると具体的以上のことをかいているかもしれない記事です。

  詩集「蝶番 CHOU   TSUGAI」刊行記念イベントについて                     


1.蝶番ってあのドアのやつですよね?

蝶番(ちょうつがい)とは

これです↑

そうです、扉や蓋を開閉させる部品の事です。英語ではHinge(ヒンジ)と言います。その形状が蝶々に似ている事から 「蝶番(ちょうつがい)」と呼ばれるようになったそうです。

「番(つがい)」には、二つのものが組み合わさって一組となるもの、雄と雌(夫婦)、関節、等の意味があります。家具業界では略字の「丁番」が用いられることが多く「ちょうばん」とも読まれます。
一般的な平蝶番は、2枚の羽と1本のピン(回転軸)で構成されています。
仏具として日本に伝わったと言われており、建築の発展とともに様々な機能を持った蝶番が生み出されました。

蝶番の基礎知識より

2.そもそも「蝶番」って詩はあるのですか?

ありません。詩のタイトルをなるべく詩中の言葉ではないもので表したいと思っているのですが、それは詩集のタイトルも同じで、これまでの2冊の詩集「月を剥く」「ひつじの箱」も同じ趣旨でつけたタイトルです。

詩集内の「詩のタイトル」をつけないことの方が珍しいかもしれません。
タイトル詩が一番推しなのだなというのが明確にわかるのは確かです。
「わからないこと」の中にこそ真実はあると思っている梁川は、詩の言葉もそうですが、「わからない」ことに重点を置きがちです。そして「わからない」まま終わってしまうことも少なくない。それでも、「余白」が詩にはとても大切であるように、「わかりにくさ」が届く時には届くのです。ひっそりとした羽を広げて。

「蝶番」のもともとの役割である「ドアを開閉する」「ふたつをつなぐ」という要素はもちろんですが、「蝶」と「番」と別々のイメージが詩中に散りばめられています。

詳しい内容は聞いていただきたいので、ぜひイベントにお越しください。


3.【イベント特典】詩の一部をイメージしたグッズをプレゼント

どんなグッズなの?はい、こんな感じです。
【その1】
「アクリル板の詩、影になるよ、線引きにも栞にも飾りにも」
(長い品名・・・) こちらはイベント以外でも、七月堂さんとやながわの通販ショップ「やなりりのお店」 でご購入いただいた方にプレゼントいたします。

これは誰かの夢の中のことで
閉じ込められたまま誰かの目が覚めて
わたしはいないのだと
気付いてしまえばいいのに
    ©梁川梨里

詩集「蝶番」より「しろい」
植木鉢の蓋の上、陽のひかりで影が出るかの実験
きれいに蝶も映っていますね!

【その2】硝子瓶セット

①の瓶:詩「受粉」の「爪をたてた硝子瓶、と「幾筋もの線が反射する」から光の反射媒体としての硝子玉(ビー玉含む)
②の瓶:詩「受粉」の硝子瓶、詩「しろい」の全体イメージと詩「遠泳」の爪、「遠雷」「貝殻を捨てた場所」をイメージした貝と砂

①と②をセットでプレゼント!
(単にわたしが欲しかったものを作りました。七月堂さんで売るかも?)
水を入れてもいいかも!夏ってひかり全開なので、七夕の思い出を瓶につめてお持ち帰りください。両方とも「わたしがいない」シールつき。

こちらの使い方としては、飾り、重し、日差しをあてて、じっと空想にひたるなどにおすすめします。

爪をたてた硝子瓶の
幾筋もの線が反射する午後の廊下

「受粉」より
アクリル板も一緒にビニール入り。

【その3】La Blanche vol.01(フルーペーパー)

イベント当日にお渡しします。年に4回発行予定の個人詩誌です。
参加が難しいかたも、七月堂さんに来店してお持ち帰りください。通販でもおつけできます。やながわのお店もできましたが、できるだけ七月堂さんからお求めください。。

フリーペーパーです。おいて下さる書店さまを募集中 しっかりした紙で印刷かけました。


せっかくなので詩「受粉」をご紹介。
こちらは、同人の「妃23号」2021年発行(主宰:田中庸介さん)に寄稿したものを、詩集刊行にあたり加修正しています。妃をお持ちの方はどこが変わったか調べてみると梁川が詩集で何を削ろうとしたかがわかるような、わからないような。


受粉 

わたしのところに飛んでくるものは
みな同じ匂いがする

手招いたのは わたしです

この硝子の円柱の中へ
やってくる者たちへ
あらゆる斜面を切り取ったわたしをあげよう

足につけた黄色い花粉で
子をせがむものたち
許可もなしに探しあてたらしい

めしべを喪ったからだの
どこを切り開いて見せれば
あなたの望む瓶になれるの
きれいに剥がれないラベルに
一時凌ぎでもぐりこみ
冷たい肌に身をよせる

その筋張った指で
固く蓋を閉めてください
狭すぎる瓶のなかで
あなたをおもうぶんだけ膨らんだ
胸からほどけて蜜になっていく

自分が産んだ瓶のなかで
やがてゆっくり窒息する
爪をたてた硝子瓶の
幾筋もの線が反射する午後の廊下で
熟成されていく 元からだ 
     


4.どんなことについてのトークなの?

おおまかにはこんな感じかな?でも、当日、突然違うことを話すかもしれないので、もし以下の内容が聞きたかったら質問をよろしくお願いします。

「生きづらさ」は世界との関係にあるようだ。必ず世界とは「間」が存在する
SDGsなんて実現不可能だよ、だって人間は変わろうとしないもの
便利な世界を手放そうとしない以上、いつか地球は終わる。

投稿欄を約2年続けた頃のこと(7年前に出した「ひつじの箱」がほぼ全記録)
文月悠光さんは現代詩手帖の選者で、梁川は投稿者。選者は何を見ていたのか
この時の現代詩手帖賞は「マーサ・ナカムラさん」「水沢なおさん」
詩で食べていくということのリアル。
詩が一般に開かれた存在になるには、「書き方」の方法論なのか
VRなどとの融合なのか。

5.ということで、生きづらいのはなぜか?

どうせいつか死ぬのに、着実に死に向かっているのに、終わってしまえば自分は消えるのに、なんで必死に「今」頑張る必要があるの?
そのために「詩」ができることはあるの?、こんな時代だからこそ「詩」を含む、言葉の持つ力が必要なのではないのか?

「言葉」はとても伝わりにく構造をしています。思わず目に入ってしまうことはないからです。「読もう」という意志があってはじめて入っていける「芸術」なので、「絵」や「写真」のように、たまたま目に入る確率のとても低いものなので、届かない確率のほうが高いもの。

生きづらい時、もがきます。掴む藁を求めて。なんでもいい、助けてほしいと。ちょっと待ってください。現状をすぐに変える特効薬はないのです。
「急がばまわれ」のように、本当につらい時こそ、むやみに動くことは危険です。

まずは、ぼーっとしてみる。そんなことできたら苦労しないよ。そのとおりです。何かに熱中した時、時間があっという間に過ぎている。そんな経験、皆さんも今までに何度かあったと思います。
現実時間と体感時間の差が大きいこと。
つらい時こそ、時間の進みがのろい。いつまで、こんなつらい思いが続くのか、途方に暮れ、時には絶望します。

その時に、「言葉」の果たす意味は大きいかもしれません。
わたしにとって「詩」はちょうどいい裏庭のような広さ(文字数)です。
わからない現代詩の、伝わりずらい「詩」の余白に、午後の廊下で長く尾を引くビー玉の影のように、あなたの心の疲れたところに、ひかりが優しく届くことを、心から祈っています。

6.詩集目次

受粉
ジムノペディ
しろい
ブリキの秋
借景
ナナイロ 
斫り
さかな
着氷 
COVID‐19
埃及
飽和 
喪失 
遠雷
履きなれない靴
半結氷
箱の名
憐憫
こばと
遠泳
いきぞめ
ポケット
溺れる
転寝
赤城山

■この詩集には仕掛けがあります■

表紙の「CHOU」と「TSUGAI」の文字が背表紙と交互に箔が入っています。
まだ手元にないのですが、表紙に印刷された箔以外の文字と紫は、とてもきれいに色が入っていました。
また、詩「箱の名」の「フランス語で詩を書く女の子」、透けてみえる今いる世界の向こう側、このイメージを組本で工夫しました。
帯文を書いて頂いた谷内さんとのやり取りの中で、発案したものです。


世界とわたしは蝶番で結ばれています。
うまく世界のにおいをわたしが受け取ることができなけば変調をきたす。
にんげんは、無意識に世界とのやり取りの中で生きています。

蝶番は軸を中心に開閉し、動きつづけます。バタフライエフェクトのように僅かな羽ばたきでさえ、世界を変えてしまう、とても繊細で、一寸先は闇の中を手探りで世界をみつけているのだと思います。

あなたは、わたしはどこにいるのでしょう。
おそらく、真っ白な余白の中にいて、「どこにも行けない」のです。







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