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読書|桜風堂ものがたり

本屋大賞の季節がやってきています。本書は2017年本屋大賞5位を受賞された物語です。

淡いピンク色を感じさせるような世界でした。表紙の影響かな、桜の描写が多かったからかな、と想像上の世界はファンタジー。

しかし、実際の内容はファンタジーではなく、本屋さんと書店員のリアルなお話です。私の大好きな本屋さんが舞台なので、そりゃあ読みながらわくわくした気持ちになりました。

人とのコミュニケーションが得意ではない主人公の月原一整さんは、本にかける想いはまっすぐで、本への愛が読者にまで伝わってきます。

実は、彼は裏で「宝探しの月原」と呼ばれていました。人々の目に留まらなかった素敵な文庫本に気付き、店舗で懸命に売り出そうとします。

受賞経験がある作家さんやタレントさんのエッセイ集など、名前で売れる本の片隅で、埋もれていってしまいそうな素敵な本を救い出す魔法使いなのです。

一整さんが次に売り出そうとしていた「四月の鯨」はどんな物語なのだろう。そう想像するのも束の間、ある万引き事件をきっかけに、一整さんは愛する書店を辞めなければならなくなりました。

ネットからの攻撃、根拠のない噂、世間からの目。書店から静かに去る一整さんの姿は、本当に悲しくて、どうかまた本に携わって欲しいと願うばかりです。

リアルの世界では、声帯を震わす言葉にはならず、誰かの耳に届くことのなかった書物への愛や熱い想いは、この世界に存在しなかったのではなく、ひっそりと誰かのために書かれた恋文のように、ネット上に存在していたのだ。

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彼を救ったのは、なんとネット上の繋がりでした。ネットからの攻撃で苦しんだ彼が、ネットの太い繋がりによって救われていく。自分が自然に与えてきた本への愛情が、自分に返ってくるように、一整さんの人生が次なるステージで動き始めます。

この物語に登場する本を愛する人は、素敵な人でいっぱい。終盤に向かうにつれて、あたたかい気持ちが蘇ってくるのでした。

書店員のお仕事話や、一冊を売るためにどれくらいの力が動いているのかにも、注目できる一冊です。私たちが本屋さんで本に巡り合うまでに、こんな世界が広がっていたのか、と見える景色がグンッと広がる物語でした。

読了後、一整さんのいる書店に行きたいなあなんて、叶わぬ願いを抱いてしまいます。



前回の読書記録です。

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