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エッセイ「徒然なる日々の瞬き」

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これまでに撮影した写真を、ひとつひとつの記事に合わせて載せています📸
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エッセイ「徒然なる日々の瞬き」7.髪飾り

エッセイ「徒然なる日々の瞬き」7.髪飾り

 シュシュ。それは毎日の気分を高めてくれる、最高のアイテム。毎朝、今日はどれを付けて行こうかと棚の中を見つめる。昨日はこれを付けたし、その前はこれだったかな…やっぱり二日連続で同じものはなんだか違うし。毎度こんなことを考えている。

 私服の高校に通っていた私は、あたりまえに毎日違うシュシュを付けて登校していた。ちなみに髪型は重めのぱっつん前髪にハーフアップ。これを我が家では「お嬢さんしばり」と言

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エッセイ「徒然なる日々の瞬き」1.月

エッセイ「徒然なる日々の瞬き」1.月

 夜ベッドに横になると、カーテンの隙間から月が覗く。今夜はどんな光だろうと思いながら見ていると、それだけで数時間経っていることもある。そして気が付いたら眠りに落ちている。これが一番理想的な眠りのつき方。
 雑音にまみれた一日を過ごした日は、どうしてもよく眠れなくなる。どんなに深い呼吸をしても、それはただのため息にしかならず、なんの効力も発揮しない。そんな夜、静かに隣に座っていてくれるのが、月。だか

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エッセイ「徒然なる日々の瞬き」2.本屋さん

エッセイ「徒然なる日々の瞬き」2.本屋さん

 つい、本屋「さん」と簡単な敬称をつけて呼びたくなってしまう。どうしても本屋「」と呼び捨てにはできない。どこか近くに本屋はないかと調べるときにも、「◯◯駅 本屋さん」なんて無意識検索してしまうくらいだから、重症だ。

 敬称をつけること自体はまったく悪いことではない。相手を尊重していることの現れだから、それはもう、素晴らしいことだろう。けれど、それであるならば本屋だけに「さん」をつけるのはおかしい

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エッセイ「徒然なる日々の瞬き」3.写真

エッセイ「徒然なる日々の瞬き」3.写真

 常に何かいいものはないか、と思って物を見ているわけではない。たまたまその瞬間に出会えた時にシャッターを切る。それが一番素敵な出会いだと信じている。

 最近は手に入れたばかりのフィルムカメラを持ち歩いているが、それでもスマホで撮ってしまうことも、よくある。癖というのはそう簡単にはなくならない。思いがけない瞬間を、と思えば思うほど、最初に手に取るのはスマホになる。あれ、これでは“たまたま”の出会い

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エッセイ「徒然なる日々の瞬き」4.猫

エッセイ「徒然なる日々の瞬き」4.猫

 ひとつ前のアパートに住んでいたころの話。そこにはアパート専用の小さな駐車場があった。ペーパードライバーのわたしは、特に利用することなく引っ越す日を迎えるのだろうと漠然と思っていたのだけれど。とうとうそんなわたしにも、駐車場に立ち寄る理由ができてしまった。猫である。
 ある日、ひょっこり現れたその猫は、わたしが見つけたその日から、アパートを離れるその日まで、ずっと駐車場にいた。わたしはその猫のこと

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エッセイ「徒然なる日々の瞬き」5.美術館

エッセイ「徒然なる日々の瞬き」5.美術館

 作家の異様な空気感を体にまとうことのできる唯一の不思議な空間が美術館である。人の人生を覗き込み、そこに勝手に自分を投影し嬉しくなったり苦しくなったりする。それがなぜか病みつきになってしまう。

 時々絵の中に無意識のうちに取り込まれ、そこから抜け出せなくなるのではないかと感じる作品に出会うことがある。地に足を着けていないと、自分をしっかり保っておかないと、その絵に自分を殺されそうになる。そういう

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エッセイ「徒然なる日々の瞬き」6.蜘蛛

エッセイ「徒然なる日々の瞬き」6.蜘蛛

 壁に何かの影を感じる。右から左へ、下から上へと何かが動き回っているような。ふと顔を上げると、そこにいるのは蜘蛛。ということがよくある。

 私の部屋にはどこからともなく遊びに来る蜘蛛がいる。それもなかなかに頻度が高い。近くの公園には奇妙な虫たちが住んでいるという噂もあるので、滅多に窓を開けることもない。玄関を開けたってそこは共有スペースの室内階段に繋がっているだけだ。それなのに、彼らはひょこっと

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