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アカデミック読書会(第44回)- 時代の変わり目 -

読書会概要

5月12日(木)20:15~21:45、いつもより少し遅いスタートでアカデミック読書会(第44回)は始まりました。参加者1名、ファシリテーター1名の穏やかな読書会でした。

課題本は、フェルナン・ブローデル『地中海III』「第II部 集団の運命と全体の動き」「第5章 社会」。テーマは、「16世紀の地中海地域はどのような社会だったのか?」です。

「第5章 社会」を読む前に、第II部の前回までのまとめを軽く行いました。16世紀の地中海地域の経済と、地中海地域の2つの帝国(トルコ、スペイン)についてです。

16世紀は、人口が増加し、物価が上昇した時代でした。アメリカ大陸から金銀が流入してきます。

アカデミック読書会まとめスライド・ブローデル『地中海III』「第II部 集団の運命と全体の動き 第1章~第3章 経済」1/2

16世紀の地中海では、トルコとスペインの2大帝国がありました。第4章では、両帝国で官僚が増え、官職の売り買いもあり、腐敗していたと書かれています。また、国家が直接徴税することが難しく、現金の輸送や前貸し、税金の直接徴収を、金貸しに頼っていく様子が描かれています。そのため、金貸しが財政を動かすようになり、次第に国会の財政は悪化していきます。

アカデミック読書会まとめスライド・ブローデル『地中海III』「第II部 集団の運命と全体の動き 第4章 帝国」1/2

それらをふまえて、今回の読書会では、16世紀の地中海地域の社会について読書し、対話しました。この時期は、爵位の売買が行われたり、海賊や山賊も出現しました海賊の背後には都市や力のある国家がおり、山賊は領主を味方にしていました。近代国家は、貴族・封建勢力にとって敵であり保護者であるということの現れだと感じました。

広大な帝国は、統治がすみずみまで行き届かず、内部からも崩壊していく様が見て取れます。

今回の読書会は、16世紀の帝国の内側をさらに知ることができた読書会でした。ご参加された方には、厚く御礼申し上げます。

読書会詳細

【目的】

  • 領主とブルジョワと強盗行為の関係性についての理解が得られたら嬉しい

【問いと答えと気づき】

■Q

  • 当時の地中海における、領主とブルジョアとは何で、その関係性はどうだったのか?

■A

  • 貴族の数は少ない

  • 富裕層が爵位を買う

  • 新しい貴族に対しての敵意がある

■気づき

  • 社会の重心が移動した(農業→商業)

  • 重心の移動そのものが起こると、敵意が生まれる、いまも昔も変わらな

  • メディアとアカデミアというのも一緒、彼らは一瞬特権階級になったけれども、いまはその地位を失いつつある

  • メディアとアカデミア、権威主義になっているのも同じ

  • 江戸時代と似ている

  • 制度は実態に遅れる、その歪みが爵位を買うことなどに現れる→制度が変わる、その繰り返し

【対話内容】

■帝国の税制

  • 官僚機構と納税者が接触できない
    →爵位を売るのは合理的

  • 誰がどんな資産を持っているか、把握するのも難しい

  • 人の取引に税金がかけられるのがすごい(消費税)

■海賊と山賊

  • 海賊の背後には、都市や力のある国家(p.157)

  • 山賊は領主を味方にしている(p.157)

  • 強盗行為は、16世紀に増加

■16世紀の国王と領主

  • 16世紀の地中海地域では、国王の力はそれほどなかったのではないか

  • 現場で暴力的な力を持っている人が一番強かった

  • そういう領主たちと国王がいて、スペイン帝国を形成させていたものは何なのだろう?
    →その1つは宗教かもしれない(カソリック)

  • カール5世は、広大な領土を2つに分割して継承させた(オーストリアとスペイン)
    →フェリーペ2世はスペインを継いだ

  • 日本では、貴族の土地に武士が入る形だった

  • 何のために戦争していたのか?どうやって戦争していたのか?

  • まだ領主の力が強かった
    →でも何で国王の言うことをきいているのか?

  • 偉いものは偉い

  • 近代国家は、 貴族・封建勢力にとって敵であり、保護者である(p.92)

  • 領主は司法権と行政権の両方を持っている

  • 近代国家だと貴族は宮廷にいる、16世紀の地中海は領地にいる

  • 国王と貴族の関係は持ちつ持たれつ(p.93)
    →そこに商人という新しいブルジョワが現れた
    →偉い国王様に仕えているという感じ

  • 山賊:権力に対して立ち上がる(正義の味方、貧乏人の恩人)

  • ガタガタだが、こういう時代を経て、制度ができていく

■制度が変わるとき

  • 人口は増加している
    →(商業社会は)土地で生産性が決まっているから、(食糧を)山賊で奪うしかない

  • 産業革命が起こったから奪わないでも生きていける(『知識経済の形成』より)

  • 不満を生み出した仕組みはなにか?
    →それを考えると昇華(消化?)できる(何でも始まったときはよかったはず)

【気づきと小さな一歩】

■気づき/学び

  • リアルな状況を思い浮かべるのが大事

  • MBAもこの歴史の話も土の匂いのする政治家も、共通している

  • MBAでのとある名物先生:肉の匂いを想像する(自分事感)、 (いまから見るとめちゃくちゃに見えるが…、当時、そこに)自分がいたらどうなのか?(どう考えるのか?)

■小さな一歩

  • 書いている本の内容をまとめて、 Twitterの固定スレッドにする

【読書会で紹介された本】

次回の読書会のご案内

【開催日時・場所】

  • 2022年6月9日(木) @ZOOM

【テーマ】

  • 文明はどのように影響し合ったか?

【課題本】

・フェルナン・ブローデル著、浜名優美訳『地中海II 集団の運命と全体の動き2』「第6章 文明」

【詳細・申込み】

※『地中海I』「第I部 環境の役割」まとめ動画:


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Tomoko Nakasaki(中崎 倫子)
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