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プレゼントのスペシャルな届け先

子どもの頃からクリスマスが大好きだった。
母がクリスマス気分を盛り上げるものをたくさん用意してくれたことも理由のひとつかもしれない。

まず、クリスマスツリーを出して一緒に飾り付けをする。わたしはモールでできた天使のオーナメントがかわいらしくて特にお気に入りだった。1年に一度しか会えないけれど、再会する度に胸がじんとする。
寝る前の絵本もこの時期だけは『ノンタン!サンタクロースだよ』を毎日読んでもらう。もう覚えてしまっていても、知っていることのくり返しがうれしくてまた読んでもらう。
12月1日には輸入菓子店で買ったお菓子のアドベントカレンダーを手渡される。毎日1個ずつ食べながら、ひときわ大きな《25日》を早く開けたくてうずうずしていた。


なにより、我が家へのサンタクロースのプレゼントの届け方がスペシャルだった。
クリスマスの夜、まだわたしが起きている時間に届けてくれる。
起きているのにどうしてこっそり届けてもらえるかというと、家の外にある父のサーフボードの上にサンタクロースがいつの間にかそっと置いておいてくれるからだった。

今でもよく覚えている。
わたしは夕食を食べ終えるとすぐに、
「ちょっと見てくる!」
と言って、つま先に靴をひっかけて玄関のドアから顔を出してサーフボードの上を覗き見る。
寒くて暗い中、街頭に照らされて薄ぼんやりとしているけれど、まだなにもない。
「来てなかった」
ひとりごとのように両親に伝えながら、リビングへ戻る。
テレビ番組を見終えては「見てくる!」
トイレに行っては「来たかな?!」
と玄関から外を覗く。何度見てもサーフボードの上はがらんとしている。

お風呂の時間になり、母と一緒に入る。
体も頭もざっと洗って湯船に浸かるのもそこそこに出て、濡れた髪のまま覗くと…
「来てたよーー!!」
何度も肩透かしを食らった分、サーフボードの上に見つけた時のよろこびはひとしおだった。


きっと父と母はわたしが意気込んで外を見に行き、しょんぼりと部屋に戻って来るたびに目を合わせて苦笑いしていただろう。
遂にプレゼントを手にして大喜びで駆け込んで来たときは、目を細めて微笑み合っていただろう。

何十年も経った今になって、そのとき受けた両親からの愛が遅れて届き沁み入ってゆく。
今だからこそわかる、受け取れるプレゼントのようだ。

きっと家族の数と同じくらい、サンタクロースのプレゼントの届け方はあるのかもしれない。
どれも込められた思いや凝らされた工夫の結晶のようだ。家族や愛のかたちがさまざまなのとも似ていて、どれもキラキラと輝いて感じられる。






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莉琴(りこと)
読んでくださる方がいらっしゃることで執筆が続けられています✨スキをこころの栄養、応援を励みにしつつ、引き続き活動していきます😊