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ゲーム監督小島秀夫著『創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち』感想

小島秀夫、この方をご存じだろうか?
ゲームが好きな人は一度は聞いたことがあるだろう。
敵に極力見つからずに隠れながらゲームを有利に進めていくステルスアクションと呼ばれるゲームジャンルを一気にメジャーコンテンツに押し上げた『メタルギアシリーズ』を手掛けた男だ。

現在は『メタルギアシリーズ』を制作していた頃に所属していたコナミから独立しており、ゲーム制作会社『コジマプロダクション』の代表として4会社の経営者にもなっている。

ゲーム制作に関わる人はプログラマーやプロデューサーと呼ばれる人であり、そういった職業においても有名人が沢山いるが、プロデュースやデザインなど1つの仕事の枠に囚われず、ゲームシステム・キャラクター・背景・音楽等、様々な角度からアドバイスやアイディアを与え、彼の判断がゲーム制作の重要な方針を決めている。
そのため【ゲーム監督】という肩書でゲーム界では知られており、日本だけでなく世界でも一目置かれている存在だ。

実際、独立後に発売した『デスストランディング』では、制作するにあたり『ウォーキングデッド』で一躍有名になったノーマン・リーダスが主人公として起用され、モーションキャプチャーが活用されているため、プレイヤーをノーマンを操作してゲームの世界を旅することができる。。
マッツ・ミケルセンやレア・セドゥなど著名なハリウッド俳優が作品に登場しており、ゲームをしながらも1つの映画を見ているような体験になれるという。

熱を持って語ったが、かくいう僕は小島秀夫さんが手がけたゲームをやったことがない、本当にすまない。

だが、最近彼の大ファンになった。
完全なゲームエアプであるこの僕が何故、彼のファンになったのか。
それはディズニープラスで配信されている小島秀夫氏に密着した映画『HIDEO KOJIMA:CONNECTING WORLDS』を見たからだ。

小島秀夫は世界中の有名なクリエイターを虜にしている。
『マッドマックス』の監督であるジョージ・ミラーや『パンズ・ラビリンス』の監督であるギレルモ・デル・トロがドキュメンタリー映画で彼の作るゲームの芸術性と魅力を語っている。

この映画では小島秀夫氏がゲーム制作を夢見たルーツが明らかになっており、小さい頃は「鍵っ子」という学校から帰宅しても親が仕事に出ているため一人という環境だったことで、親が持っていたり薦めてきた小説や映画を嗜むようになり、その頃から、自分でも頭の中で物語を作ったりしていたという。
特に刑事コロンボシリーズが子供の頃に衝撃を受けた作品として挙げあられておりこれから紹介する本にも紹介されている。

彼が好きな作品のジャンルはミステリーとSF、僕もこのジャンルが大好きなのでとても親近感が湧く。
今回紹介する『創作する遺伝子 僕が愛したMEMEたち』はそのミステリーやSFを中心に小島秀夫氏が人生の中で衝撃を受けた作品が紹介されている。

僕はおすすめの本が紹介された本を読んだことがなかった。
おすすめの作品を紹介するnoteなどのネット記事は読むけれどわざわざお金を払ってまで知る価値はないと思ってたからだ。
しかし、小島秀夫の映画を見てから彼は一体いままでどんな作品に出会い好きになったのかと興味を持ち、本を購入した。

お勧めされている作品は本だけでなく、映画やドラマなど様々なカルチャーコンテンツが紹介されており、自分も見たことがある作品が紹介されている場合は、もう一回見たくなったし、彼と感想を共有した気持ちになる。
知っていたけど見たことのない作品やまったく知らなかった作品にも興味を持てた、少しずつ紹介されていた作品を手に取ろう。

「面白い」「素晴らしい」などの直接的な表現を使わずに作品の魅力を紹介されている、のはクリエイターの豊かな表現力あってのことだろう。
僕もその技術と表現力を今後見習いたい。

いや~それにしてもすごくおもしろかったなあ!!

小島秀夫が紹介する作品すべてに興味を持てたが、一番印象に残っているのはこの本を書くにあたっての「はじめに」の章だ。

あまりにも共感して、心に響いたため一言一句書いて紹介したいくらいだがやめておこう。

要約すると彼の創作意欲はタイトルに入っている『MEME』(文化や習慣や価値観などを次世代に継承していく情報:生物学的な遺伝子情報『GENE』をもじっている)という概念があり小説や映画などの物語はこの『MEME』を伝える形態であり、自分自身が物語を体験することで新しい物語を作り出しこれまで培ってきた『MEME』を次世代に継承したいと述べている。

そのためには、人との出会いが偶然で、出会いが自分の人生をどんな変化をもたらすか分からないのと同じように、物語を体験するものただ与えられるのを待っているだけではダメで、自分の意志で行動することが大切であり、彼は毎日本屋に通い、常に本を何冊も持ち歩いている。
どんなに制作が忙しくても、出会った作品がたとえ面白くなかったとしても、少しずつ自分のアンテナをチューニングしながら、物語を体験することの大切さを忘れないようにインプットすることが大切だと。

この「はじめに」を読んで僕は共感しすぎて、時が止まってしまったような心地になった。
物語との出会いは人との出会いくらい素晴らしい、そしてクリエイターに自分もなりたい。
彼の『MEME』は確かに僕が継承した。
本当に物語が好きな人には一度読んでほしい「はじめに」だけでも。
僕はゲームをやります。

また、YouTubeに〈出版区〉というチャンネルがあり、このチャンネルは著名人が本屋に通う姿についていき、今読みたい本や読書遍歴を知ることができる「一万円あげたら何買うの」という企画があるのだが、小島秀夫氏に密着した回があるのでこちらも必見。

この動画、かなり好評なようで動画1時間のノンカット版もアップされているので気になる方はそちらも是非。
ちなみにロケ地は大好きな池袋ジュンク堂さん。
小島秀夫が本屋に訪れた時、どのような視点で本を選んでいるのか、また本作品に紹介されていないおすすめの本も紹介されている。

とにかく僕のマイブームは小島秀夫と言ってもいい。
続編が発売される前に『デスストランディング』をプレイしたいし、「ステルスゲームはめちゃくちゃ苦手だけど、いつか『メタルギアシリーズ』をやりたい。


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