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【簡単あらすじ】最後のトリック(微ネタバレ)【深水黎一郎/河出文庫】
ミステリー界最後の不可能トリック「読者が犯人」のアイデアを、二億円で買って欲しい。
スランプ中の作家に届いた手紙にはそう書いてあった。
謎の手紙の中には、自分の命と引き換えにしても欲しくなるほどのトリックだと訴えているが…
ーー
『はじめに』
暑い毎日もようやく落ち着き、時季も読書の秋に近づいてきまして、読書もしやすい季節になりました。
ですので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいた本の感想を書こうと思います。
このレビューを読んだことで、その作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。
まず、この作品を読む前に、きちんと整理・理解しておかなくてはいけないことは、
題名にもなっている「最後のトリック」とは、ミステリー界で最も優れている・これを超えるトリックは無い、と言う事ではない。
ということです。
古今東西で作り上げられているミステリー作品を
「事件の犯人不明の謎を、作者と読者とが解明を競うゲーム」
としたときに、各作品の謎をジャンル分け(例:意外な犯人・密室・殺害方法など)し、リスト化した場合に実現不可能と考えられていたため、
最後まで空欄となっていた「読者が犯人」というジャンルを埋めるためのトリック=今作品のトリック
だということです。
ーー
「読者が犯人」というトリックは、私達が普通に考えても、
そして作品中でも
ミステリーのトリックとは、厳密かつフェアでなければならない。
仮に読者が犯人というトリックが可能だとしても、それがある特定の読者にだけ当てはまるのではダメで、その小説を読んだ読者全員が、読み終わって本を閉じた時に、『犯人は俺だ』と思うのでなくては、そのトリックが成立したことにはならない。
と、ある登場人物が述べているように、不可能に近いのではないかと皆さんも思っているでしょう。
私もそう思いますし、その部分をどうするのか気になって購入した作品です。
ー
今作品では、新聞に連載している作家や鋭い視点の批評家・超能力の専門家・刑事など、様々な職種の登場人物がいるうえ、それに伴い、場面・一人称・フォントなどが様々な描写になっているため少しごちゃついた感じはありますが、全部分かってからもう一度読み返すことによって、きっちり納得出来る内容になっています。
最後のトリックに関連する以外の部分についても充分に楽しめましたし、読了後に、確かに「私が犯人だな」と思う所もありましたが、これを「最後のトリック」と言ってしまっても良いのかな?というモヤモヤがあったのも事実です。
しかし、今作品の解説を行っている島田荘司さんの『最後の二段落』でまとめられた内容を読んで、とても納得しました。
その他にも、本格ミステリーの進化の過程についても分かりやすくまとめてありますので、とても価値のある解説です。
題名の「最後のトリック」、帯表記「読者全員が犯人」というイメージからは少々外れるかもしれませんが、読みごたえのある作品でした。
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