【簡単あらすじ】ヴィクトリアン・ホテル(微ネタバレ)【下村敦史/実業之日本社文庫】
「思いやりでさえ人を傷つけるんだよ」
百年の歴史を持つ超高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」は、一旦その歴史に幕を下ろす。
女優・作家・宣伝マン・スリ等、そのホテルに集った人物は、どのような思惑があったのか。
各人物の思惑が絡み合ったとき、様々な物語に繋がり・そして思わぬ事態へとつながる…
二度読み必須の作品です。
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100年の歴史のある、伝統のある超高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」が一旦幕を下ろす。
そのホテルに集った、女優・作家・宣伝マン・スリ・老夫婦・ベルマン等の思惑が絡み合ったとき、様々な物語が発生して…
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以前に読了しレビューしました「同姓同名」の作者・下村敦史さんの作品です。
今作品は、全員が同じ名前というような突拍子もない前提ではありませんが、様々な職業、つまり様々な人生を経験した方々がホテルという狭い空間に集まりました。
そうなったら、各登場人物同士の接点が出来れば出来るほど、様々な物語が発生してしまいますよね。
作品中には、意図的に少しぼやかされた表現が多くあります。
それについて、
少し前の文章にこう記載されていたから。
物語の流れから考えると、こうならないと不自然だし。
といった、読者の思い込みによって作品がどんどんと複雑化していきます。
以前読了した同姓同名は『登場人物の名前』を利用したミステリーだったので、今回も登場人物の名前や特性などに気をつけながら読み進めたのですが、今回は〇〇を読者に錯覚させたミステリーでした。
二度読みすると、自分が勝手に思いこんでいたことが修正され、最初から最後まで一貫性のある読み応えのある作品だということに気づくと思います。
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上記の他にも、本作品は、同感・共感する登場人物のセリフが多かったです。
これら以外にも、まだまだ印象的なセリフは多くありました。
上記は、作者の長い作家人生で目の当たりにし、もしくは自身が体験したことが基になっているからこその記述ではないでしょうか。
現在は、SNS(発言者の顔が見えない)時代であり、創作者と鑑賞者(読者)との関係性が以前よりいびつな形になってしまっていると感じます。
創作者とそれを楽しむ鑑賞者がともにWin-Winになる関係性を作り上げる必要があると思います。
上質なミステリーであることが前提ですが、こういった作者の考え・考えさせるような問いかけが多数含まれている作品は大変面白く・お気に入りです。
これからも、下村敦史さんの作品を追いかけたいと思います。
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