【簡単あらすじ】葉桜の季節に君を想うということ(微ネタバレ)【歌野晶午/文春文庫】
『 違うよ。俺は成瀬。成瀬将虎 』
さくらの目はこぼれ落ちそうなほど見開かれている。
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一日おきに白金台のフィットネスクラブで汗を流し、筋肉を鍛えている成瀬将虎。
ある時、同じクラブの会員で後輩であるキヨシから、キヨシが密かに思いを寄せる久高のお見舞いに一緒に来て欲しいと頼まれる。
気は進まなかったが、キヨシの押しに負けお見舞いに行った成瀬だが、そこで久高から「おじいさんが亡くなった」ということを聞く。
その後、久高とキヨシから、蓬莱倶楽部という会社を内偵して欲しいという依頼を受ける。
しぶしぶ了承した成瀬だったが、その会社を調べるうちに様々なことが明るみになる。
「映画のエキストラ」「パソコン教室の講師」「駐輪場のガードマン」などをこなす、「何でもやってやろう屋」を自称している成瀬がたどり着く結末とは。
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最初の十ページ弱で、読者をふるいにかけるような内容になっており、その後は、時代も主要人物も異なったストーリーが進むという、オムニバス形式と言えるような構成になっています。
しかし、後半になり終末に収束していくにしたがって、物語は一気にスピードアップし、結論に間違いなく二度・三度の読み返しが必要な作品です。
初めの章「出会い」は、最後のトリックのために、わざわざくどいほど〇〇を強調していたとも考えられ、かなりクセが強い文言での文章が続きます。
ここで、挫折はしなくとも軽く読み飛ばしがちになる読者がいる、ということを狙っての○○の強調とも考えられますので、作品の構成が、流石歌野晶午さんと言えます。
(じっくり読まないと、きっと騙されます)
一度読了すると、上記の言葉のとらえ方が変わると思います。
出版された当時よりも、現在のほうが結末について納得する方が多いかもしれませんね。
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