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ならう、ならす、ならぶ(文字とイメージ・01)

「文字とイメージ」という連載を始めます。私の気になる文字や文字列を並べて、そのイメージをながめていきます。なお、ここで言うイメージとは、あくまでも個人的で私的な印象のことです。

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 文字を並べてみます。

 ならう、ならす、ならぶ

 文字を転がしてみましょう。変奏するのです。変奏、変装、変相、返送。

 ならう、習う、倣う、学習、模倣
 ならす、均す、平す、慣らす、馴らす、均一、平均、習慣、馴致
 ならぶ、並ぶ、並置、並列

 ここでは、同源かどうか(起源が「同じ」かどうか)に関係なく、「似ている」という感覚を大切にして話を進めています。連想でつないでいくという意味です。

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「似ている」は個人的な印象ですが、「同じ」は、習わないと分かりません。

 人にとって「似ている」という感覚は生まれながらのデフォルト(初期設定)であり、「同じ」かどうかの判断は他人から教わらないと知らないという意味で知識であり情報なのです。

「同じ」かどうかの判断が生まれながらのデフォルト(初期設定)でないのは、神のデフォルト(不履行・怠慢)だなんて恨んだり嘆いてみても仕方ありません。

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 ならう、ならす、ならぶ
 ならう、ならす、なれる、ならぶ、ならべる

 こうやって、上の文字列をながめていると、どれもが「な」がついていることに気づきます。なんだか、「似ている」と感じるのはそのせいでしょう。

 いや、それだけでもなさそうです。

 どれもが、学校と関係がありそうだという意味でも「似ている」気がしてきます。

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 ならう、ならす、なれる、ならぶ、ならべる

 これは典型的な学校での光景ではないでしょうか? そうした身振りや動作にあふれているのが学校です。

 教室、校庭、体育館。そこで行なわれる、授業、各種行事。

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 学校でならうのは、なんでしょう?

 な、なまえ、名前、名称、呼称

 基本は、名前でありその書き方と読み方、つまり文字でしょう。自分の名前から始まって、物や事や現象の名前を文字として習います。

「な」に「名」だけでなく「字」という文字が当てられるのは興味深いです。

 まな、かな、真名、真字、仮名、仮字。

 しかも、なんと真字は漢字です。大陸から海を越えて来た文字。もともとこの島々にあった音に、その文字を当てたらしい。その文字からかなを、こしらえたらしい。

 うーむ。

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 なづける、名付ける、手なずける、かいならす、飼い慣らす、飼い馴らす

 ヒトは森羅万象を名付けることで、世界や宇宙を手なずけ、あわよくば飼い慣らそうとします。それ以外に名付ける理由があるでしょうか。

 名前のないものは不気味だし、なにしろ恐いのです。一方的に、「何か」に呼び掛けて話し掛けることで、まず恐怖心をやわらげ、できればなくしたいのでしょう。

 名付けが、一方向的な行為であることに注目しましょう。名付けはヒトが勝手にやっていることなのです。孤独なゲーム。

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 学校では、文字の読み書きと同時に、知識を学びます。学習するのです。学習するというのは、真似ることにほかなりません。

 まねる、まねぶ、まなぶ
 まねる、真似る、まねぶ、学ぶ、まなぶ、学ぶ
 学習、真似、模倣

 ならう、習う、倣う、学習、模倣

 文字や文字列はお手本を真似て、なぞり、それを何度もくり返して慣れることで習得されます。途方もない時間と労力を要する作業です。

 終わりなんてありません。覚えきれないだけでなく、忘れるからです。

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 文字は複製なのです。誰がどこで書いても同じでなければなりません。

 どこでもいつでも、誰が、あるいは何が(たとえば機械が)書いても同じであるのが、複製としての文字なのです。

 黒板や教科書やタブレットに並んだ文字列を、机を並べて列になって、倣って習う、真似て学ぶ。

「似ている」という感覚ではなく、ものごとが「同じ」かどうかの判断を、知識と情報として学習するわけです。

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 みんなが「同じ」知識を真似て学んで共有するだけではなく、「同じ」文字を倣って習って共有することが、学校教育の目標です。

 真似て倣って「同じ」になることを目指すとも言えるでしょう。デフォルト(初期設定)の「似ている」だけでは「まちまち」で困るのです。

 児童、生徒、学生たちが「まちまち」では、教育の不履行であり怠慢(デフォルト)になってしまいます。

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 均一、平均、平凡、均等、並置、並列

 教育の目的と目標は、みんなで横並びになることのようです。

 それでも、はみ出す人が必ずいます。それはそれでいい、いや、そうでなければならないと私は思います。

 ライン・line・列・線・すじ・筋・条・連・鎖・縄・糸・綱
 つらなる・連なる・列なる、つながる・繋がる、むすばれる・結ばれる

「ならう、ならす、ならべる」ことによって生じる結果は、こんなイメージでしょうか? 

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 みんな「同じ」である人間が列をなして並んでいる。これでは、まるで複製ではありませんか? 複製である文字とそっくりではありませんか?

 文字をならうことは文字にならうこと
 文字を習うことは文字に倣うこと

 人間の文字化でしょうか?

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 文字を習う、文字に倣う

 ひょっとして、人は文字のようになりたいのかもしれません。

 均一、均等、並列、横並び、右へ倣え

 ならうは、ならす
 習うは、均す、平す、慣らす、馴らす

 習うより慣れろ
 習うより馴れろ


 うーむ。

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 なづけられ、なをならい、なになる

 幼い頃に自分の名前を習った人は最後には名前になります。誰もが文字になるのです。

 お墓には名前が書かれていたり刻まれています。お墓に入らなくても、名前を書類に記されて最終的に処理されます。

 無名、有名というクラス分けはありますけど、みんなが名になります。名前は名前。

 平等。

 その意味ではみんなが横並びになり、長い長い列につらなると言えるでしょう。

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 名を成す
 名に成る

 為せば成る為さねば成らぬ何事も。

 うーむ。

「なくなる」寸前に「なした」なんて威張らなくても、「いきた」だけでいいではありませんか。

 なる、生る、為る、成る、なす、生す、為す、成す
 
なる、なる、なる、なる、なす、なす、なす、なす

 あらら。

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