デザインの定義 [デザイン経営2019編]
「デザイン」とは何か?
デザイナー同士でも話が噛み合わないことがあったりする。それもそのはず、有識者メンバーですら定義は定まっていないようだ。良い機会だし、自分なりの解釈で整理してみようと思う。
2019年の7月末、「デザイン経営2019」というカンファレンスに参加してきました。2018年の『「デザイン経営」宣言』から1年を経て、あらためて「デザイン経営」とは何かを有識者とともに考えるカンファレンスです。
このnoteの「デザインの定義」は、カンファレンスのオープニングトークで語られた定義をもとにした考察です。
3つの「デザイン」
1. デザイン家電
2. デザイン思考
3. デザイン経営
株式会社GKデザイン機構 代表の田中一雄さんは、この3つの「デザイン」はそれぞれ定義が違うのではないかと問題提起されました。
デザイナーの仕事のサイクルを、観察、問題発見、発想、認識化、造形のフェイズに分解すると理解しやすいです。(出典元より一部改変)
ここに3つの「デザイン」をプロットすると、定義の違いが明らかになります。
1. デザイン家電
「デザイン家電」とはモノ、完成された物質であり、完成に至るその過程を含まない用語です。「デザイン家電」を生み出す工程には、観察〜認識化のフェイズは存在します。ですが完成された家電には、造形の意味での「デザイン」しか存在しません。(造形に付随する体験を含むこともあるかもしれません)
日常にあふれている「デザイン」という言葉の多くは、この狭義の「デザイン」ではないでしょうか。
2. デザイン思考
デザイナーの仕事には、アプローチと解が無限にあります。
多くのデザイナーは、利用者に最適な解を提供するため、観察〜認識化のフェイズを無意識に行っています。この手法は、複雑系な社会においても有効とされ、IDEOの創始者 デビッド・ケリーによってビジネスに転用されたのが「デザイン思考」です。
つまり、デザイン業務以外で観察〜認識化のフレームワークを使うことが「デザイン思考」なので、この場合は造形フェイズを含みません。
カンファレンス中に、こんな質問がありました。
「「デザイン思考」とは、デザイナーに対しては使わない言葉ですか?」
この質問についての私の見解は「No」です。(登壇者はYes気味な回答だったと記憶しています)
デザイナーがデザイン業務を行っている際の観察〜認識化フェイズは、「デザイン思考」とは呼びません。ですが、デザイナーが社長にビジネスジャッジを相談されたところを想像してみて下さい。デザイナーが、普段どおり利用者を思い描きながら解を出したのであれば、それは「デザイン思考」です。
3. デザイン経営
『「デザイン経営」宣言』では「デザイン経営」の効果を、こう定義しています。
ブランドとイノベーションを通じて、企業の産業競争力に寄与する
上記の図の「ブランド構築に資するデザイン」では、認識化〜造形フェイズが重要です。Appleやコカコーラと言えば、誰もが製品の造形や体験を思い浮かべられるかと思います。
対し「イノベーションに資するデザイン」は、観察〜認識化フェイズが重要、つまり「デザイン思考」ですね。事業者バイアスを排除して、利用者視点でのニーズを見つけだし、新しい価値に結びつける事を期待されています。
つまり「デザイン経営」では「デザイン」という言葉を、観察〜造形まで網羅した広義な意味で使っています。
「ブランド構築に資するデザイン」ではデザイナーが創り出す「造形や体験」の効果的な活用を、「イノベーションに資するデザイン」では「デザイン思考」という手法の活用を、経営層へ提言しています。
まとめ
「デザイン」に深く関わる人々の間でも、その定義は人それぞれです。
上図の解釈は、カンファレンスでGKデザイン機構の田中さんが語られていた定義を元にしていますが、元となった発言も3名の登壇者の総意という訳ではありませんでした。「なるほど、そういった定義もアリですね」という温度感でしょうか。
あらためて「デザイン」について考えてみましたが、自分なりの「デザイン」の定義を持っておくと、相手との相違を把握しやすいですし、トラブルを未然に防げそうなので、おすすめです。
後編では、BTCモデルや職種別の重点領域などを、5つのフェイズにプロットした記事を公開する予定です。
後編へ続きます。(公開したらリンク付けます)