ブリのトマトマリネにクミンを少々 樽で発酵させた甲州ブドウとのハーモニー
ニベのハーブオイルマリネにシチリア島の白ワインの絶妙な相性を楽しんだ数日後、ブリのトマトマリネを。いずれも国産天然魚ミールパック、フィシュルに注文して届いた商品。
私はブリにトマトを合わせるなら火を入れるかな。トマト煮やトマト炒めあたり。ブリの脂は魅力に溢れるが時に暴れ馬にもなり、添える食材によっては生臭みスイッチを押してしまうことがある。私の先入観ではトマトは押しちゃうリスクあり。
仮にマリネするにしても、トマトがいると塩と酸味を効かせて徹底的に生臭みスイッチにフタをしようとしてしまう。臭みは抑えられそうだがこれではブリの旨味も立たない。
この難しい生のブリとトマトのコンビネーションをフィシュルはどう料理するのか。はやる気持ちを抑えつつ流水で10分、サッと解凍し盛り付け。
実食すると塩味や酸味に強く頼らない味付けで、白出汁と軽めに効かせたブラックペッパーがトマトとブリの脂・旨味を仲介。ブリの生臭みスイッチをみごとに回避しつつ、ブリの魅力をたっぷりと引き出している。まずはそのまま食べ、最後に味変で香辛料のクミンを振ってみた。甲高いスパイス香がトマトの酸味とブリの旨味のハーモニーをさらなる高みへと誘った。
ちなみにパッケージにはブリのトマトマリネを使ったおススメ料理が載っていて、サラダ、カプレーゼ、冷製パスタ、ブルスケッタとある。そのまま食べても美味しいし、料理の幅を広げるのにも活躍してくれそうだ。
ブリのトマトマリネに合わせるワインをセラーから選ぶ。ブリの力強い脂には陽気すぎる果実味は反発しそう。旨味や滋味、奥行きを感じられるワインで包み込もうと、甲州ブドウで造られた日本ワインを2種(丹波ワインのてぐみワイン、シャトー・ルミエールの光)。特にシャトー・ルミエール 光の樽発酵による甘い香りと甲州ぶどうの滋味に、クミンのスパイスが繋がり、継ぎ目なくブリに脂、旨味にも繋がりが発展した。
さて、料理とそれぞれのワインの相性について。
シャトー・ルミエール, 光, 甲州 山梨, 2020, 3,658円
1885年創業。山梨県笛吹市一宮町南野呂。自社農園で栽培した甲州種を樽発酵した後、20ヵ月の樽熟成で仕上げた。
力強く濃い色調。香りには枇杷、大ぶりの和梨、カボスに微かに柚子、果皮のフェノールの複雑な香り、カモミールティーのほんのりスパイス香。
味わいにはジューシーで滋味溢れる染み込む果実味。ほろ苦さはゆるゆる続き、甲州品種とは思えないほどの非常に長くまったりとした余韻。甲州の魅力を引き出し尽くした名品。
ブリのトマトマリネにクミンを少し振って。クミンはさらにトマトの酸味にも良く繋がり一体化。ワインの甘さを含む樽香がクミンのスパイス香に調和。クミンが加わることでブリの脂、旨味とのシンクロ率が高まり、口内のハーモニーをさらなる高みへと誘う。相性: ★★★★☆
丹波ワイン, てぐみワイン, 京都, 11%, 2,200円
京都の食文化の一端を担うワイン造りをミッションに掲げ、丹波で京都の食文化に根ざしたワインを造る。1979年創業。大手電機メーカーの協力企業のクロイ電機が新しい事業として参入(協力企業と競合しない事業を選定)。
このワインは、”打倒!とりあえずビール”がコンセプト。最初の乾杯から楽しめるワインを目指す。山梨県産甲州を酸化防止剤無添加で醸す。
外観は白濁した肌色。キャップを回すと泡が勢いよく飛び出す。泡の元気はビール超え。
香りには白桃のシロップ漬け、白ブドウのエキス、ジンジャー。酵母の香り強く、ビスケットのニュアンス。微かに小豆も。
味わいはジューシーな果実味に穏やかな酸味、柔らかいチャーミングな甘味が広がる。余韻のほろ苦さが心地よくワインを締める。
ブリのトマトマリネにワインを合わせる。泡の刺激と余韻のほろ苦さがブリの旨味に寄り添う。わずかながら生臭みも立ち上がるような気もするが、余韻にかけてワインが包容していく。相性: ★★★☆☆