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アユの塩焼とハタハタの丸干し アユに甲州とハンガリーの二つの異なる極上の調和
アユの塩焼き。海の恵の磯の香りむんむんのサバも好きだが、川魚の土っぽい素朴な香りと繊細な脂もまた良い。
鮎は水生昆虫や甲殻類などを食べて育ち、成魚となり6月から初夏にかけて川を登った後には、苔や藍藻などを食べて身が香り高く美味しくなるといわれる。オキアミやカタクチイワシなどを食べて育つサバとはエサも違えば、塩を含む海と淡水の川とで生育環境も大きく異なる。
今回はデパ地下でアユの塩焼きを購入(450円)。さらに可愛らしいサイズのものがたくさん入ったハタハタの丸干し(499円)。
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塩焼にしたアユの身をほぐして口に運ぶと、ほのかに土っぽい素朴な香りに、上品で繊細な脂が広がる。磯の香りはないが、塩で締まっていて風味が引き立てられる。
ハタハタは山陰産。昨年、ハタハタの刺身に白ワインを合わせた。山陰滞在中に堪能した地元ならではのグルメ。ハタハタは足が速いので、地元以外で刺身で食べられることは多くない。
背中の斑点がハタハタの特徴。オーブントースターで焼いて食べる。丸干しにされて磯の香りがっぷり。風味はほどよく凝縮していて噛むとジンワリと広がる旨み。
合わせたのは山梨県の白ワイン(甲州品種)とハンガリーの白ワイン。先月、 大丸東京で開催された世界の酒とチーズフェスティバルに、各国のワインが出品されていた。そこでも私はシーフードに合うワインを探していたところ、ハンガリーワインショップの方に、バラトン湖沿いでは川魚がよく食べられると聞いてその地域のものを購入。満を持して川魚のアユに合わせた。
ちなみにハンガリーの魚料理は、地方によって違う作り方があるハラースレー(漁師のスープ)が有名。コイや小型の魚で作られる。辛いパプリカ入り。
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https://hungaryprogrammes.com/hungarian_foods.html
ハンガリーは海に接していないが、川魚のニジマスやバラトン湖で獲られるフォガシュ (スズキに似た白身魚)に人気がある。
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https://hungaryprogrammes.com/hungarian_foods.html
さて、アユの塩焼とハタハタの丸干しとワインの相性について。
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まずは山梨県の白ワイン(甲州品種)から。
丸藤葡萄酒工業, ルバイヤート甲州シュールリー, 山梨県甲州市勝沼町, 2020, 12.5%、2,420円
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「シュール・リー」はフランス語で”澱の上”という意味の製法。瓶詰直前まで澱引きせずにワインを澱と共に熟成。酵母由来の風味や旨味が心地よい、甲州の魅力の詰まったワイン。何度も訪問していて一方的に親近感を持っているワイナリー。過去のNoteにも何度か登場。
香りにはカボスや擦ったスダチのほろ苦い香りを含む和柑橘にグレープフルーツ。繊細でハリのある果実香。微かにセルフィーユの軽快なハーブ香や白い花。フレッシュでピュア。
味わいは瑞々しく軽快でフレッシュ。穏やかで染み込むような果実味。穏やかながらこぎみよい酸味、余韻にほろ苦さが軽快にドライなフィニッシュ。
アユの塩焼きにワインを合わせる。ワインのおしとやかなリズムに鮎の繊細な風味が絶妙に調和。ワインのピュアで穏やかな果実味とほろ苦さは、アユの風味に寄り添い存分にその魅力を引き立てる。期待を超える素晴らしい相性!清らかで静的、安定感抜群でブレがない。調和の妙のマリアージュ。相性: ★★★★★
ハタハタの丸干しに。干したハタハタの凝縮した磯の香りにワインの穏やかリズムがなかなか調和しづらいか。ケンカはしないが。ワインの穏やかなリズムは刺身など軽快な風味の料理に力を発揮しそう。相性: ★★★☆☆
続いてハンガリーのワインに。
パーツァイ, アグネシュ, ハンガリー, バラトン, バダチョニ, 12.5%, 2,574円
Patzay, Agnes, Badacsony, Balaton, Hungary,
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世界三大甘口ワインのトカイで知られるハンガリー。ハンガリーのワインの歴史は、紀元前に古代ローマ人によってブドウ栽培が伝えられたところから始まったとされる。このワインが造られるバダチョニはバラトン湖の北側でハンガリー有数のワイン産地。地場のブドウをブレンドして造られる(スルケバラート34%、ヴェルシュリースリング 42%、リースリング 24%)。
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香りにはどこかシュナン・ブランを思わせる花梨蜜。微かにグァバ、アカシアなど黄色い花。貝殻などの硬質なミネラルのニュアンスや潮の香り。穏やかにハーブ香。
味わいはキュッと詰まった酒質、やや酸化的ニュアンスを好意的に伴いまったりした印象。コク、滋味、旨味と、ブドウの個性に造り手の妙が重なった素晴らしいワイン。開栓後、数日かけて飲んでいるが日々の味わいの発展が楽しい。時間をかけて飲みたい。
アユの塩焼きに。ワインの果実味と滋味がアユの上品で繊細な脂を際立たせつつ、ほろ苦さにも寄り添う。ワインに力があるので調和しないと派手にケンカするかもと心配していたが杞憂。ハンガリー地場品種の滋味深さがアユを包み込む。こちらは甲州との調和とは違ったエンターテイメントで、動的、ダイナミックなマリアージュ。ハンガリーの川魚を楽しむ地域のワインは、日本の渓流で獲れたアユともバッチリ!相性: ★★★★★
ハタハタの丸干しに。ワインのどこか酸化的なニュアンスが干したハタハタの磯の香りや旨みのリズムに調和。相性: ★★★★☆