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○読書感想 Vol.008「被差別の食卓」○

8.「被差別の食卓」 (新潮新書)
  著 者: 上原善広 ※敬称略
  出版社: 新潮社
  発行年: 2005年6月20日
  価 格: 680円(税別)

<概要>
 著者の原点である、日本における被差別民とされてきている人々の独特の食材である「あぶらかす」とそれを利用した料理を起点に、アメリカの黒人たちの「ソウル・フード」が、著者の中で結びつき、そこから閃いたコンセプトが本書の出発点のようです。 すなわち、著者は、世界各地にいまなお存続する被差別民たち特有の食材・料をが、取材し紹介しております。
 序文において、自らの原体験をベースとし、本章に入り、北米、南米、ロマ族、カースト制度の残るネパールを回り、最後に改めて自らの原点である大阪の被差別民の食材・料理に戻ります。
 おそらく多くの人が驚かれるのは、いわゆる「フライドチキン」が黒人たちのソウル・フードであるということでした(個人的見解ですが)。 もちろん、黒人が奴隷として扱われていた時代には、いまの有名チェーン店のような精肉ではなく、いわゆる内臓、脚、手羽先や首など、白人である農場主たちが捨てるような部位を長時間、油で揚げた物だったようです。 それが時代とともに、白人にも広がり、胸、腿などの精肉を利用した現在の「フライドチキン」になったとのことです。
 いずれの地においても、概ね共通するところは、いわゆるその地域の支配層や一般大衆層が、見向きもしない食材を利用して美味しい料理に仕立てていく、人間の知恵でしょうか。

<雑感>
 恥ずかしながら、「あぶらかす」の存在は、本書を読むまでまったく知りませんでした。
 私は東京出身で、教科書では、「被差別部落」問題は知識として知っておりましたが、身近にそのような問題に接する経験が無かったため、恐縮ですが、どこかまったく外国の問題のように遠い認識しかありませんでした。 ※いまもって「あぶらかす」の実物を拝見したこともありません。
 「食事」(食材・料理)という切り口から、被差別民の存在、歴史、問題を、解き明かしていこうとする著者の試みは、身近な食事という点で、とても興味深くまた深い印象を読者に与えてくれるのではないでしょうか。
 たいへん勉強になりました。

※本感想文内に差別用語等があった場合、ご指摘をお願い致します。速やかに修正いたします。
※内容は、「2005年6月20日 発行」版に基づいています。

<関連書籍> ※敬称略 以下のリンク先は出版社Webサイトです。
「被差別のグルメ」  著:上原義広  新潮社
「はじめての部落問題」  著:角岡伸彦  文藝春秋社
「もの食う人びと」  著:辺見庸  KADOKAWA 

(2020/11/07 reki4)


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