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【三十の反撃】変わらない現実に疲れて何もできない時、勇気をくれる1冊

「100枚ほど履歴書を送ったけど、面接の機会をくれたのは1社だったよ」
就職活動をしていた同級生が、ため息をつきながら言った。
企業の人事担当者が、自分の書類のどこを見て、「不採用」と判断するのか分からない。面接する(会って話す)機会を与える価値もないと言われている気がしてしまう。
ただ、なんだか悔しい。
友人の言葉は、学生食堂のテーブルを囲んでいる同級生たちの間に落ちた。
一瞬の沈黙が流れた。
皆、似たり寄ったりの状況だった。

企業が新卒の採用人数を絞り、「超氷河期」と言われた時期のことだ。
就職する時期が悪かった。ただ、それだけだ。

しかし、私自身がそう思えるようになったのは、ずいぶん後になってからで、大学生の当時は、社会や経済状況がどうであろうと、自分たちが努力して将来の道を切り開かなくてはならないと考えていた。

小説「三十の反撃」(ソン・ウォンピョン・著、矢島暁子・訳)の主人公は、大学卒業後、正社員への就職を目指して応募をし続けている女性、キム ジへ。
彼女は、大手企業DM社の文化事業ディアマンアカデミーで、非正規職員のインターンとして働いている。その収入で借りることができるのは、半地下の家だ。
正社員に応募しつづけているものの、ジへ自身、自分は何がしたいのか、はっきりしない。恋愛も上手く続かず、30代を迎えて、親から「結婚は?」と問われるプレッシャーを感じてもいる。

このままではいいとは思っていない。しかし、正社員になることが厳しい現実を知っており、現状を変えようとする気持ちが萎えている。
自分が頑張ったところで、何が変わるのか?という疑問が沸き、
諦めの気持ちが強くなっている。
そんなキム・ジへは、新しくインターンとして入ってきた男性、イ・ギュオクとの出会いをきっかけに、少しずつ変わっていく。

文化事業で関わっている講師の高慢な態度。職場の上司の不衛生な習慣。
これまで目をつぶって見て見ぬふりをしてきたが、本当はずっと「嫌だ」「変だ」と思ってきたことに対して、小さな行動を起こしていく。
これらは、現状を変えるための「反撃」と言える行動だ。

やがて、ジへは自分自身の人生を大きく変える選択をする。
物語の終わりは、誰かの前向きな一歩が、社会を変える一歩に繋がる可能性があることを感じさせる。清々しさがあり、勇気が沸いてくる。

頑張ることに疲れている人、
「何をしても、どうせ変わらない」と諦めかけている人たちに、ぜひ、手にとってほしい。


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