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夕陽のような思い出
――きっと誰しもに夕陽のような思い出があって、人生の休み時間に思い出したくなるものです。
人生は物語。
どうも横山黎です。
今回は「夕陽のような思い出」というテーマで話していこうと思います。
📚Twilight
5月21日(日)に開催される文学フリマ東京36に、僕は出品者として参加します。最新作『夜明けのうた』といううた集を販売する予定です。
詩のような、歌詞のような、うた。中学時代から400以上の作品を綴ってきた僕が、20作品を厳選して1冊の本に仕上げました。1日の終わりに1作品をじっくり味わう読み方がおすすめです。眠る前のあなたに小さな革命を起こしたい。ステキな夜明けを迎えてほしい。そんな願いが込められています。
Amazonで購入できますが、文学フリマ価格で少しお安くご案内します。是非、【N-38】のブースにお越しください!
文学フリマまで少し時間があるので、うた集に収録してる作品たちを毎日紹介していこうかなと思います。そのうたにまつわるエピソードを物語っていきますね。
今回取り上げるのは、「Twilight」という作品です。
僕が高校時代にお付き合いしていた彼女との思い出を閉じこめた作品。沈んでいく陽は、ふたりの道を照らしてくれなかったけれど、このうたの描く記憶は今でも大切な思い出です。
📚歩道橋からの夕暮れ空
中学2年生の1月から高校1年生の9月まで、お付き合いしていた人がいました。こんな僕のことをいつも優しく受け止めてくれた人でした。僕は数字の符合が好きな人だから、記念日をめちゃくちゃ気にするタイプなんです。
だから、毎月29日の記念日にはふたりでゆっくりと話す時間をつくったし、予定があえばどこかへ出かけにいっていました。
「Twilight」は、僕と彼女の3カ月記念日の話です。中学3年生のときの4月29日の昭和の日、記念日のデートをすることになりました。その前日から、当日の帰り道までを描いたうたなんです。
#この記事の投稿日は4月29日
#今書いてて気づいた
前日の夜はそわそわしていました。彼女とは交換日記をしていたんですが、にやにやしながら筆を走らせた自分がいました。待ちに待った3カ月記念日当日、僕は少し寝坊して、待ち合わせ場所に向かいました。
彼女と巡ったのは東京の池袋。サンシャイン水族館に行ったり、プラネタリウムを鑑賞したり、公園でおしゃべりしたりしていました。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまって、僕らは別れを名残惜しみます。
ひとりで歩く帰り道、ふたりでいた時間の尊さに気付かされます。駅から家までの道のりに、坂道が横たわっているんですが、その頂には歩道橋がそびえています。近くに横断歩道があるからそれを使えばいいのに、わざわざ歩道橋をのぼって反対側の道へ行くことが多いんです。
それは、小学生の頃からその歩道橋をよく使っていて、そこからの景色が好きだったからです。僕の初書籍『Message』に登場する歩道橋はそれがモデルだったりします。
話を戻しますね。
3カ月記念日デートの終わりを彩った、歩道橋からの夕暮れ空がとても綺麗で、忘れたくなくて、この記憶と感情と彼女の笑顔を作品にして閉じこめたんです。それが「Twilight」なんです。
📚夕陽のような思い出
「Twilight」を贈ると、彼女は受け止めてくれて、「曲をつけたい」といってくれたんです。彼女はピアノができたし、カラオケで95点以上をバンバン出す歌姫でもありました。
僕のうたに初めて、音が生まれたんです。
2ヶ月くらいあと、僕への誕生日プレゼントとして、曲を披露してくれました。上野公園の木漏れ日のなか、陽だまりのような歌声で「Twilight」を口ずさんでくれたんです。僕はえもいわれぬ感動に包まれて、静かに涙しました。
僕はこのままずっとこの関係が続いていけばいいな、彼女と人生を共にしたいな、と本気で思っていましたが、小さなひずみから別れ話に発展し、ふたりの物語は幕を下ろしました。ふたりで思い描いていた未来は絵空事のまま、全部終わってしまったんです。
その代償は大きくて、僕は二年くらい未練を抱えていました。夕陽を見る度に、彼女のことを思い出す日々が続きました。付き合っているさなか、彼女から「Twilight」の弾き語りの音源をもらったのでそれを何度も聴き返していました。
今はもう未練という未練はありませんが、それでもあの頃の思い出は大切にしていたいと思えるんですよね。
きっと誰しもに夕陽のような思い出があって、人生の休み時間に思い出したくなるものです。僕にはいくつもあるし、あなたのなかにもあるはず。その胸のなかで消えずに残り続ける光があるはず。
さっきも言ったように、沈んでいく陽は僕たちの未来を照らしてくれなかったけれど、夕陽のような思い出は落ち込んで暗くなった自分をそっと照らしてくれます。
きっと今の時間も、時の果てには思い出になり、眩しい光を放つことでしょう。いつまでも大切にしたいと思えるような、そんな「今」を繰り返していきます。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
20230429 横山黎