「森の図書室」に行ってきた!
――メニュー表がステキな装丁の小説のようで、思わずめくりたくなるようなつくりだったんですが、特筆すべきはそのメニューの内容。『天空の城ラピュタ』に登場する「ラピュタトースト」や『ぐりとぐら』に登場する『カステラ』、『西の魔女が死んだ』に登場する「パパの好きなキッシュ」など、既存の物語に登場する料理が提供されるんです。
人生は物語。
どうも横山黎です。
大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。
今回は「本のある飲食店の可能性」というテーマで話していこうと思います。
📚森の図書室に行ってきた!
この記事を書いているのは、東京渋谷にあるブックカフェ「森の図書室」のなかです。ずっと行きたかった場所に今日やっと来ることができました。本好きなバイトの先輩が東京に来られるとのことで、「このタイミングだ!」と思いました。
ハチ公と一緒に記念写真を撮っている外国人たちの間を抜け、スクランブル交差点を通り過ぎ、とあるビルの8階にそれはありました。驚いたのが、「森の図書室」の入り口。まるでマンションの部屋のような扉が入り口で、インターホンを鳴らして入店する仕組みなんです。
しかも、その扉を開けたら、本棚が行く手を阻んできました。実はその本棚を横にスライドすると店の中に入れるんですよね。初心者殺しの仕組みですが、まるでファンタジーの世界に入り込んだかのようなわくわくがありました。
扉の向こう、本棚の向こうには、「森の図書室」という名にふさわしく、本という名の木の生る森が待っていました。本に囲まれた空間では、本を読むことはもちろんのこと、連れとおしゃべりしたり、Wi-Fi、充電器が用意されているのでPCで作業したり、本のなかに登場する料理を食べたり、お酒を飲んだり、様々な方法で楽しめます。
僕は本棚を眺めて気になった本を3冊読みました。クリスマスには欠かせない靴下を題材にした乙一さんの絵本『くつしたをかくせ!』、とある一夜の出来事を描いた僕の大好きな脚本家三谷幸喜さんの『俺はその夜多くのことを学んだ』、幸福や成功をつかみ取る生き方、組織の在り方を寓話的に描いたスペンサー・ジョンソンさんの『チーズはどこへ消えた?』……三者三様、それぞれの面白さがありました。そんな本の出会いが生まれるのも、本のある場所の魅力のひとつですよね。
📚いろんなところに物語⁉
「森の図書室」で過ごしていて心が動いた瞬間がいくつかありました。さっき紹介した入り口の本棚もそうですが、その他にもいろんなところに物語を感じさせる要素があったのです。
たとえば、コースター。
「森の図書室」ではドリンクも提供されるわけですが、そのグラスの下に敷くコースターは「森の感想文」と称されていて、その表と裏にある本の感想文が書かれているんです。「森の図書室」の「図書委員(店員)」によるもので、全部で24種類あるそうです。コースターで紹介されている本は入り口近くの本棚に置かれていました。「本と出会うコースター」というコンセプトは斬新な読書の入り口。「面白っ!」と叫んでしまうくらい興味深く思いました。
また、メニューのなかにも、物語はあります。
そもそもメニュー表がステキな装丁の小説のようで、思わずめくりたくなるようなつくりだったんですが、特筆すべきはそのメニューの内容。『天空の城ラピュタ』に登場する「ラピュタトースト」や『ぐりとぐら』に登場する『カステラ』、『西の魔女が死んだ』に登場する「パパの好きなキッシュ」など、既存の物語に登場する料理が提供されるんです。ドリンクも然り。『ノルウェイの森』に登場する「ウォッカトニック」や『人間失格』で登場する「電気ブラン」などがメニュー表に並んでいます。
料理を入り口に、物語も読んでみようと手を伸ばす流れは、本に興味を持つきっかけのひとつとして最高だなと思っていて、現実と物語の垣根を超える体験は、両者に特別な価値を生み出してくれます。つまり、物語を知っていたら「あの料理が食べられるの⁉」と思って料理を注文しようってなるし、料理がおいしかったらどんな物語のなかに登場するんだろうと本を手に取ろうと思えるってこと。かくいう僕も子どもの頃からよく観ていた「ラピュタトースト」を注文してしまいました。
📚本のある飲食店の可能性
ドリンク飲み放題で終日3000円という価格なんですが、本に囲まれた空間で過ごせるし、作業もできるし、デートでふらっと立ち寄るのもステキ。いろんな楽しみ方ができることを踏まえると、かなりお得だなと感じました。
本好きの人に限らず、ちょっとおしゃれな場所で作業したい人にもおすすめの場所です。
この半年くらいで、僕は本のある場所をつくりたいという欲が芽生えてきました。それが本屋さんなのか、図書室なのか、ブックカフェなのか、はたまた別の何かなのか……とにかく、これまでの僕の活動のなかでキーワードだった「本」や「物語」を題材に、場所づくりをしてみたいと思ったのです。
そんなこんなで最近は特に、機会があれば本のある場所を巡って、「自分だったらこうしたいな」「これはマネしよう」なんてことを心のなかで呟いています。今いる「森の図書室」での気付きも絶対に活きてくるはず。心の底からそう思えました。
来年度以降、茨城県の上水戸にある僕のお気に入りのクラフトビールバー「The FAVORITE」を運営するかもしれなくて、せっかくだし本と絡められたらいいなとぼんやり考えていたところでした。もちろんすぐに実現できるかは分からないし、僕の一存で決められることではないけれど、やってみる価値のある悪くない選択なんじゃないかなって個人的には思っています。
築90年の古民家をリノベーションしてつくられたそこは場所としての魅力が抜群にあるし、僕がお気に入りの本を紹介する「FAVORITE!!」というイベントを開催しているように「The FAVORITE」という名前と本の相性は悪くない。いろんなブックカフェで得た気付きを反映させて、本のある飲食店の可能性を探ってみると面白い未来が待っていそうな気がします。
とりあえず、いろんなところに物語があって、値段以上の価値を感じられる「森の図書室」が素晴らしかったという話でした。まだ行ったことのない人は、是非立ち寄ってみてください。最後まで読んで下さりありがとうございました。
20231205 横山黎
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