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僕とビブリオバトルの7年間

――全国大学ビブリオバトル。僕はまたこの舞台に戻ってきました。泣いても笑っても、これが最後の舞台です。


人生は物語。
どうも横山黎です。

大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。

毎月最終日には誰の目を気にすることもなく、僕の過去についてつらつらと綴っています。今日は10月31日のハロウィン。今月もこの日が来たので、自分語りをしていきます。お時間のある方だけお付き合いください。


今回は「僕とビブリオバトルの7年間」というテーマで話していこうと思います。


📚僕とビブリオバトルの7年間

最近僕のnoteの記事を振り返ると、本にまつわるものばかり。本の紹介をしたり、読書会に参加したことを記録したり、ステキな本屋さんに行ってきたことを報告したり……。そういう投稿を続けているのは他でもありません。

全国大学ビブリオバトルに挑戦しているからです。



ビブリオバトルとは自分のお気に入りの本を5分間で紹介する書評合戦のこと。リスナーはバトラーの発表を聴いていちばん読みたくなった本に票を入れます。最も票を集めた本がチャンプ本になるというわけです。

僕は高校時代からビブリオバトルの公式戦に参加しています。それからというもの、7年間もビブリオバトルの夢を追いかけているんです。僕は今大学4年ですから、全国大学ビブリオバトルに参加できるのは今年が最後。ラストイヤーで有終の美を飾りたいという強い思いがあるのです。

そんな思いが奏功したのか、先日開催された大学大会では無事に優勝することができました。来週開催される地区大会への切符を手にすることができたのです。

この記事では、地区大会を迎える前に、自分の気持ちを整理する意味も込めて、僕とビブリオバトルの7年間を振り返ってみようと思います。



📚敗北から学んだ「選書」の大切さ

高校1年生のときに初めて公式戦に参加したとき、相棒にした本はダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』。知能障がいのある青年が実験によって知能指数が高まり、それによって引き起こされる人間関係の変化と青年の葛藤を描いていく不朽の名作です。

右も左も分からない僕でしたが、分からないなりにやることはやっていました。ちゃんと原稿をつくって、練習を重ねて……本番も落ち着いて発表することができたんです。ただ、結果は1回戦敗退。僕の初めての挑戦はあっさりと幕を引きました。

僕は根が負け嫌いなんだと思います。負けたら悔しいし、どうすれば勝てるんだろうと考えました。そのときにお世話になっていた先生からのアドバイスもあり、とある結論に辿り着いたんです。

「ビブリオバトルは選書から始まる」

どんな本を選んで紹介するかが、勝敗に大きく関わってくるのです。名作や自分の好きな本を選ぶことも大事だけれど、より大切なのは「その本自体に魅力が備わっているかどうか」ってこと。僕はこれを「ビブリオ向きの本」という風に呼んでいるんですが、ビブリオバトルで勝とうと思ったら、まずはビブリオ向きの本を探さないといけない。

『アルジャーノンに花束を』は不朽の名作であることに間違いはないし、人の心を大きく動かすだけの力のある作品です。ただ、ビブリオ向きの本かといわれれば個人的にはちょっと違う。本好きなら読んだことのある人は少なくないだろうし、魅力を引き出すのが難しい本です。

ビブリオバトルで勝つためにはいわゆる良い本ではなくて、本自体に分かりやすい魅力があった本の方が良い。そこに注目した僕が高校2年のときに選んだ本は氏田雄介の『54字の物語』でした。

この本に収録されている物語、なんと全て54字でできているんです。Xの投稿が140字ですから、その半分以下の字数でどんな物語が成立するのか……気になりますよね。そうなんです。これなんです。事実を紹介しただけで思わず読みたくなるような本を紹介した方が勝ちやすいんです。

僕の仮説はどうやら当たったみたいで、その年、僕は300人のバトラーを倒し、東京都大会の頂点に輝くことができました。



📚熱狂には勝てない

東京都代表として全国大会に出場することが決まったときは盛り上がったものです。読売新聞に載ったし、河合塾から取材されたし、高校の校舎から横断幕が垂れ下がったし、渾名が「ビブリオ」になりました。ちょっとしたムーブメントを起こした僕はまんざらでもない心持で全国大会に臨んだわけですが、全国大会ではあっさり1回戦負けでした。正直そのときのパフォーマンスは良くなくて、これじゃ負けるよなと自分でも思ったくらいです。

しかしやっぱり負けたことは悔しくて、次にまた挑戦するとするならばどうすれば勝てるのだろうか、悩んだものです。そのヒントをくれたのは、そのときの大会で全国優勝を果たしたバトラーでした。

彼が紹介したのは深水黎一郎の『最後のトリック』という本。読者が犯人という奇想天外のトリックが仕掛けられたミステリー小説です。実は優勝した彼、普段あんまり本を読まない人らしいんです。たまたま友人からすすめられたこの本を読んで衝撃を受けて、全力でプレゼンしていたんです。多分、原稿をつくっていなかったんじゃないかな。会場の反応を見て言葉を選んでいるから、そんなことも思いました。

詳しくは以下の動画を観てほしいんですが、5分間の発表がちゃんとエンターテインメントになっているんですよね。理想的なお手本となるような発表ですし、優勝にふさわしい圧倒的なプレゼンでした。



そのとき思ったのが、「ああ、熱狂には勝てないんだな」ってこと。

選書も大切だし、準備も大切だけれど、結局最後聴き手の心を動かすのは、バトラーの熱狂。その本に対する思いや、是が非でも届けたいという意志にこそ、感動の種が詰まっているんですよね。


📚自著を紹介した前代未聞の挑戦

大学生になってからもビブリオバトルのことは燻っていて、ふとしたときに過去の栄光に浸り、それと同じ数だけ悔しさを滲ませました。そんななか、大学でもビブリオバトルがあることを知った僕は、大学2年のときに再び挑戦することを決めました。

そのときに紹介したのは、道尾秀介の『N』。収録されている6つの話をどんな順番で読んでも物語が成立するという1冊です。自分だけの物語をつくれるという他の本ではできない読書体験のできるステキな1冊です。

ビブリオ向きの本を見つけられたし、パフォーマンスも悪くなかったから、善戦したと思いきや、何故か大学大会で敗退。リスナーはオンライン参加だったので誰がどの人に手を上げていたのか詳しいことは分かりませんが、とにかく僕は予選で敗退をしてしまった。

久しぶりの参加ということもあり、感覚を忘れていたのかもしれません。油断もしていたともいえます。この悔しさをバネにして来年は飛躍しよう。そう思ったのです。


※先月のプレゼンイベントで『N』を紹介してきました。ハロウィンってどこの国が発祥なのでしょう? 気になる方は是非以下の動画を観てみてください!


翌年の2022年、つまり去年になりますが、僕は再びビブリオバトルに挑戦することにしました。相棒にしたのは、『Message』。僕の初書籍です。自分が書いた本を自分で紹介する。前代未聞の挑戦を果たすことにしたんです。

ただ、僕には勝算がありました。ビブリオバトルは自分のお気に入りの本を紹介するイベント。あのときの僕がいちばんおすすめした本といえば『Message』以外考えられなかったし、ひとりでも多くの人に届けたいという気持ちなら誰にも負けませんでしたから、理にかなっていると思い至ったのです。

結果、2度目の全国大会出場を果たすことができました



📚僕たちの夢を物語りにいこう

自著を紹介して挑んだ全国大会でしたが、準決勝敗退という惜しい結果に終わりました。圧倒的な1冊を前に撃沈したのです。ちなみにその本は『失われたドーナツの穴を求めて』という本で、各界の学者が「ドーナツの穴」についての知見を繰り広げる内容です。歴史学者が古代中国にドーナツの穴を探したり、数学者がドーナツの穴を定義しようと位相幾何学を持ち出したり、哲学者がドーナツの穴の存在論を展開したり……こんな具合です。

めちゃくちゃ面白い本で、正直これを紹介すれば誰でもそれなりに結果を出せる圧倒的な1冊なんです。実際、僕が高校2年のときに全国大会に出場したとき、決勝大会で特別賞をもらった人が紹介した本もこれでしたね。またしても選書の意義を思い知らされたのです。



全国優勝の夢を手放すことになったとはいえ、手にしたものはたくさんありました。このときの挑戦でいろんな人が注目してくれたんです。大学の広報室や茨城新聞社の方から取材を受けるし、大学生協の書籍部や大学前の本屋さんに委託販売という形で『Message』を置かせてもらうこともありました。人の縁が広がり、ラジオ出演も決まったり。

しかし、それでもビブリオバトルへの未練は立ち切れなくて、来年こそは勝ち切りたいという思いが消えずに残っていたのです。その灯火は日増しに勢いを増し、この秋に確かな情熱へと変わりました。



全国大学ビブリオバトル。僕はまたこの舞台に戻ってきました。泣いても笑っても、今年が最後の舞台です。

僕はラストイヤーこそ勝ち切るために、しっかりと選書をし、準備をすることにしました。準備のなかには、もちろん魅力的な紹介をするためのプレゼンの練習という意味もありますが、他にも、仲間をつくりにいくという意味もあります。

ビブリオバトルの審査員は、バトラーの発表を聴いたリスナーなので、どうしても知り合いだからという理由で投票する人を排除できないんです。だから、組織票で勝ち上がることが現実問題可能なわけでありまして、正直、これまでの大会でもそのおかげで勝ち上がれたり、逆にそのせいで敗北したりしました。

確実に勝つためにはサクラの存在が必要なんです。ただ、僕はサクラをつくって勝ち切っていい顔ができるほど強い心を持ち合わせていないので、「合法的なサクラ」をつくりにいくことにしました。

知り合いに声をかけるけれど、僕の発表に票を入れろというのではなく、いちばん読みたいと思った本に票を入れてと案内する。そうすれば、あとは他のバトラーよりも魅力的な本の紹介をすればいいだけです。「合法的なサクラ」=「ビブリオバトルのリテラシーのある人」を集めることで、あとは僕のパフォーマンス次第という状況をつくりにいくというわけです。

また、大学大会の発表を聴いた人が、次の地区大会でも僕に票を入れる筋合いをつくるために、勝ち上がるごとに本を変えていこうと決めました。それならば、同じ発表に手を上げさせなきゃいけない苦労も罪悪感もありません。リスナーとして来てくれた仲間にも心痛い思いをさせずに済みます。

「新ネタを用意したから、聴きにきて」

一言でいえば、そういうことです。

したがって、最近は本にまつわる発信をしたり、本のイベントに参加したり、自分でも開催したりしています。少しずつビブリオバトルも認知されてきて、その魅力を広めることもできてきました。

その結果、「当日現地に行くよ」と言ってくださる人や、「オンラインなら参加できるから聴きにいくね」と言ってくださる人をつくることができました。ありがたいばかりです。



7年越しの夢を叶えにいきます。

仲間と一緒に叶えにいきます。

とっておきの本を、魅力的に紹介しにいきます。

是非、僕の物語を聴きにきてください!


地区大会の詳細は以下の通りです。以下に貼り付けた動画でYouTube配信されますので、参加していただける方は通知をオンにしておいてください。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20231031 横山黎


茨城決選大会

日時:11月5日(日)11:30~12:30

場所:茨城県立図書館

※YouTube配信は以下の動画から!




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