「これ無理」シリーズ代謝編 その6 「乳酸」の真実
今回は乳酸についてです。
乳酸というと、どのようなイメージを持たれてるでしょうか。
疲労の原因、LTトレーニング、悪者?いろいろあるかと思います。
代謝経路おさらい
この図では、今まで糖(グルコース)、脂肪を原料としミトコンドリアの中で大量のATPを作っているということを説明してきました。
もう一度、代謝経路をみなおして欲しいのですが、乳酸はどこからできているでしょうか。図で示す青色で囲ったのが乳酸です。
そうです、ピルビン酸から出来ています。そしてそのピルビン酸はグルコースからできていますよね(代謝経路参照)。
つまり、”グルコース”を分解する過程のなかで乳酸が出来上がるということです。
過程のなかでというのは、この後に乳酸が別の使われ方をするということです(これについては次回に!)
脂肪を分解しても乳酸は出来ません。
グルコースからピルビン酸に至る経路でもATPは出来ます。ちょろっとですけど。
この経路は、糖(グルコース)を解かしてATPをつくるので「解糖系」と呼ばれています。
そのまんまですね。
そして、その解糖系で産まれてくるのが今回のテーマ「乳酸」ということです。
運動強度が上がった時に糖が使われる
前回もお話ししましたが、この図の通り、運動強度が上がると糖が使われます。詳しくは前回のnoteで。
高い運動強度で糖が使われる理由は、代謝経路からみてもグルコース→ピルビン酸へと素早くATPを作ることができるからです。(実際には、この間にもフルクトース6リン酸やらジヒドロキシアセトンリン酸やらややこしい名前のものはたくさん挟んでますが…)
つまり、糖はエネルギー源としてすぐに使いやすい。そのため、運動強度が上がったときすぐ使えるが、蓄える場所がちょっとしかないため多くは使えない、
ということでした。
そして、今回の乳酸を絡めると、
カラダが脂肪からのエネルギー供給では間に合わない運動強度だと判断した時、糖を使った素早いエネルギー供給を行い、その結果、乳酸が出来上がる。
ということです。
乳酸ができるということ
ここまでをまとめると、
・『乳酸ができるということは糖(グルコース)が使われているということ。』
これに尽きます。
ここで、思い出して欲しいのが糖は蓄えれる場所が少ないという話でした。
ということは、糖が原料の乳酸です。糖がなくなると乳酸は出来ません。
原料がないので。
乳酸は疲労の原因?
一昔前まで乳酸は疲労の原因とされていました。
「乳酸が溜まって動けない」、「試合後半の乳酸地獄」などと言われてました。
果たして本当でしょうか。
ここまでを理解していただくと、それがいかにおかしなことを言っているかを分かって頂けると思います。
たとえば、マラソン後半の場面を想像してみてください。カラダはもうヘトヘトです。
そのような持久的運動を続けているカラダに、糖が余っているとは考えにくいです。カラダの中の糖は枯渇状態です。
つまり、マラソン後半の疲労の原因は乳酸ではなく、糖が不足してエネルギーを生み出せないからです。(その他にも筋収縮を邪魔するものは様々ありますが。)逆に最後まで乳酸がある程度存在するということは、糖がまだあるという意味では素晴らしい(パフォーマンスを高く維持できる)ことだと言えます。
乳酸は疲労どころかエネルギー源にもなる
ここまで理解していただくと、今までの乳酸へのイメージが変わってくると思います。乳酸は決して悪者ではなく、すんごいいい方なんですね。
ここまでで少し長くなったので、続きは次回のnoteで書かせてもらいたいと思います。乳酸は疲労の原因なんかではなく、むしろエネルギー源にもなるということをお話し致します。