Dead or Alive
A……学生Ⅰ あらいちゃん
B……学生Ⅱ リカっち
C……学生Ⅲ サっちゃん
とある学校の教室
二人 睨みあっている
ジャンケンのようなものをする
ベー ……OKマーク
ラーデ……親指と人差し指で鉄砲
ロー ……小指以外の指で握り拳
「せーの!最初はベー!ヤンケッツァ!」
A ラーデを出す
B ローを出す
A 嬉しがる
B 悔しがる
A 「じゃあ、リカっちから!」
B 「え~と、人を呪わば穴二つ」
A 「首くくりの足を引く」
B 「毒食わば皿まで」
A 「弱り目に祟り目」
B 「それ、無茶苦茶怖いじゃん」
A 「でしょ?」
B 「もっと怖いやつ言いたいな……。あ、赤子の手をひねる!」
A 「良いね」
B 「ふふ~ん!」
A 「じゃあ……壁に耳あり障子に目あり」
B うろ覚え
「一寸の虫にも五……寸釘」
A 「ん?間違ってるよそれ、怖いけど」
B 「あれ?そうだっけ?」
A 「うん。一寸の虫にも五分の魂が正しい」
B 「ああ、それだ~」
A 「でもこのことわざ、怖くもなんともないからダメね」
B 「じゃあ、やっぱ五寸釘」
A 「だから間違ってるんだって」
B 「怖いでしょーよ、五寸釘。こんなちっこい虫に対して、釘でガンッって。もはや使い方も違うし」
A 「分かったって。特別だよ。ちなみにそれははどういう意味なの」
B 「オーバーキル」
A 「でしょうね」
C 登場
「ゴメンゴメン、遅くなっちゃった」
B 「サっちゃん、やっと来た~」
C 「ゴメンね~」
A 「なんかあったの?」
C 「先生、家庭科準備室で倒れてたから、保健室まで運んでたの」
A・B「また!?」
C 「うん」
B 「今日で何日目?」
A 「六日連続」
B 「いや~、すごいわ。で、今日は何で倒れたの?」
C 「冷蔵庫開けたらニンニク入ってたんだって」
A 「ホントに、料理部の顧問なんかよくやってると思うよ」
C 「まあ、良いんじゃない?愛すべき担任でしょ」
A・B「……」
C 「そうでもないか。あ、そういえば、何か喋ってたでしょ。何話してたの?」
B 「オーバーキルの話」
C 「オーバーキル?」
A 「オーバーキルは別にいいの。ゲームよ、ゲーム。怖いことわざを言い合うっていう」
C 「面白そう、私もやりたい」
A 「じゃあ、さっき途中で止まってたから、私からね。白羽の矢が立つ」
C 「それって怖いの」
A 「由来がね。人身御供っていう神様への生贄を白い矢が刺さった家から選んだことが由来なの。まあ、誰もやりたがらないけど名誉ある役目に選ばれたとも取れるわね」
B・C「へえ~」
A 「あれ?怖くない?」
B 「怖さより感心が勝っちゃった」
C 「ん~、じゃあ、幽霊の正体見たり枯れ尾花」
B 「一寸先は闇」
A 「一寸好きだね。ん~……。あ、これ怖いよ。生き馬の目を抜く」
B 「ああ~」
C 「それがあったか~。じゃあ、前門の虎後門の狼」
A 「おお~怖いね」
B 「あ、後門の狼と言えばさ、今年のゲートは七組が作るらしいよ」
C 「へえ~、今年はちゃんと出来ると良いんだけど」
A 「ね~。去年は天気悪くてできなかったからね」
B 「他のクラスは何やるんだろ?知らない?」
C 「さっき来た時にチラッと見えたけど、隣はお化け屋敷やるっぽい」
A 「お化け屋敷!?それじゃあ、ウチと被っちゃうじゃない!」
C 「びっくりした」
B 「あれ?候補に出てたっけ?」
A 「出てたよ!」
C 「お化け屋敷とメイド喫茶」
B 「私はどっちでも良いけどね」
A 力強く
「私は認めない」
C 「何でそんな熱くなってんの?」
A 「え、高校の文化祭と言えばお化け屋敷でしょ?」
C 「そうなの?」
B 「知らない」
A それっぽいポーズ
「クックック。憐れな者よ……。このオカ研所属の私ににお化け屋敷で挑むとは。どちらのお化け屋敷が本物か……勝負よ!」
C 「本物のお化け屋敷は無理でしょ」
B 「まだ決まってすらないしね」
C 「私はメイド喫茶でも良いけどなあ。楽しそうで」
A 「絶対に嫌!」
B 「あれ?今年はオカ研は何もやらないの?」
A 「うん。去年のお化け屋敷が怖すぎて、今年から禁止になっちゃった」
C 「そんなことあるんだ」
B 「まあ、確かに泣きながら出てきた子もそれなりにいたからね〜」
C 「そんなに!?」
B 「チラシに注意書きしてあったもんね。カップルでの入場はおすすめしませんって」
A 淡々と
「男が泣いてたらいろいろかわいそうでしょ」
C 「……それをウチのクラスでもやろうとしてんの」
A 「私のひとつ上の先輩に、あ、もう引退してるんだけど、物凄くホラー映画が苦手な人がいたの」
C 「オカケンなのに?」
A 「うん。その人がねオカケンでお化け屋敷をするってなった時に、ホラー映画をいっぱい観て研究したの」
B 「凄いね、その先輩」
A 「その先輩は、あることに気付いたの。……。学生が一番怖いのは零点のテストだって」
B・C「ん?」
A 「それで、オカケンのお化け屋敷では帰り際に赤インクでゼロって書かれた答案を渡すことになったの」
半笑いになりながら
C 「笑ってんじゃん」
A 「笑ってないよ」
C 「いや、笑ったって」
A 「笑ってないって言ってんじゃん。何、笑ってないのに笑ったとか言ってんの。意味わかんないんだけど」
C 「ゴメンゴメン」
B 「まあ、でも、その先輩が一番怖いわ」
A 「うん。それは同意」
B 「私の友達も零点の生物もらった!ってびっくりしてたからさあ」
C 「そりゃあびっくりもするよ。いきなりそんなのもらったら」
B 「凄い!何で分かったの!って」
A 「ああ、そういうのに長けた人がいるんだよ。ひとつ下だけど」
C 「後輩じゃん」
B 「とんでもない集団だね、オカ研って」
C 「泣きながら出てきたり、答案渡されたり、何となくだけど、禁止になる理由が分かる気がする」
A 「まあ、中身はガチだったからねえ。答案に関しては「これはこれで怖いでしょ?」みたいなノリだったから」
Cに上目遣いで
「ダメ?」
C 「うっ、負けない!もしウチでやるとしたら、オカ研プロデュースになるわけでしょ?」
A 「まあ、そうなるね」
C 「てことは、お化け屋敷自体禁止になるんじゃ?」
A 「そ、それはないでしょ」
B 「いや、ありえるよ。普通のクラスからそんなトラウマレベルのお化け屋敷が出てきたら?」
A 「アッ……。 でもメイド喫茶は絶対嫌!」
C 「何でそんなに嫌なの?」
A 「恥ずかしいじゃん」
B・C「……」
C 「え、終わり!?」
A 「そうですけど?」
B 「えー、でも、あらいちゃん似合うと思うけどなあ」
A 「いやいやいやいやいやいや!」
B 「いやいやいやいやいやいや!」
A・B「いやいやいやいやいやいや!」
C 「え、付き合ってんの?」
B 「そ、そそ、そんな、私とあらいちゃんがつつ、付き合ってるだなんて、バッ、バッカじゃないの!?」
C 「ええ、ゴメン……」
B 一人で妄想してあたふたしている
A Bを放っておいて
Cに
「とにかく恥ずかしいから嫌なんですよ」
C 「お化け屋敷かメイド喫茶か……。お化け屋敷、メイド喫茶。あらいちゃんはメイドの恰好するのが嫌なんだよね?」
A 「うん。無理矢理着せようもんなら、全員冥途送りにしてやるわ」
C 「分かりにくいけど、意志が固いことは分かった」
A 「良かった」
C 「じゃあ、お化け屋敷とメイド喫茶をくっつけたら良いんでないの?」
A・B「え」
C 「喫茶店だけどウェイトレスをメイドじゃなくて、お化け屋敷みたいにするの。そしたらそんなに怖くないけど、そっちの方がリアルお化け屋敷じゃん」
A 「オオ……」
B 「なんか良い案ある?」
A 「……ゾンビ?」
B 「天才!」
C 「もっともっと!」
A 「そーお?じゃあ、名前はそうね……。Dead or Alive!(デッドアライブ!)」
C 「凄いよ!あらいちゃん!」
A 「審判の日までごゆるりと」
B 「い~ね!」
C 「じゃあ、メニューはそっれっぽいやつを……」
A 「脳みそプリン!」
C 「ん~!まあ良いんじゃない!?」
B 「あっ、でも卵とかって衛生管理難しいから、文化祭では禁止になってたと思うけど……」
A 「そうなの?」
C 「いや、それは大丈夫。だってウチらの担任は料理部の顧問だから!」
B 「ホントだ!」
A 「フフフ。いける!いけるぞ!」
ノリノリ
「いらっしゃいませ。「生ける屍に休息を」『喫茶Dead or Alive!』へようこそ!」
C 「一人なんですけど」
A 「一名様ですね!一名様、鬼籍に入られま~す!」
Cを椅子に案内する
C 椅子に座る
A 「お決まりになられましたら、お声かけ下さい」
C 「あ、じゃあ、この「脳みそプリン」を一つ」
A 「かしこまりました」
B 「良いね!面白いよ!絶対いけるよ、コレ!」
C Aに
「ノリノリだったね」
A 「当日はゾンビメイクで」
B 「うん、そうしよう、そうしよう」
携帯電話が鳴る
「え?男子が勝手に提出しちゃったの?ホンットそういう所だけ結束力あるんだから。私?まあ、決まっちゃったんだから、しょうがないよね。……。ん?新井さん?ああ、あらいちゃんねえ……。ええ!まあ、結構嫌がってたけど、決まっちゃったんでしょ?うん。こっちで説得するよ。うん。その代わり?ああ、男子も女装させるんだ。いいね、それ。じゃあね。また明日。ありがと」
A Bが話している間Cとアイコンタクト
C 首を傾げる
A 「新井さん」で反応する
B 携帯電話をしまう
「え~、メイド喫茶に決定してしまいました」
A 「え~!あんなにお化け屋敷が良いって言ったのに~!」
B 「それともう一つ、重要なお知らせがあります。そのメイド喫茶のフロア、つまり、メイドになる人をクジで決めたそうです」
C 「まさか……」
B 「はい。白羽の矢が立ちました!新井さん!」
A 「アアー!」
膝から崩れ落ちて倒れる
三人 「……」
B Cと目を合わせて
Aを指差しながら
「Dead新井さんだ」
C 黙って首を振る
暗転
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