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【SF】因果平衡 第2幕第2話

あらすじ

この国にはひとつの穢れが巣食っている。ミヌ―アの領主レヒトは父親殺害の犯人を捜すため、過去へ遣いを飛ばす。遣いが重要参考人として連れて帰ってきたのは、レヒトの弟と名乗る人物だった。男は事件の犯人をレヒトだと告発し……。

登場人物

レヒト・フェアティゲン     ミヌーアの王
凪               神官団長
沙舎・シュミット        未来からの帰還兵
レヒト・ドラヒェスブルク    過去のレヒト(以下レヒト・Dと表記)
リンク・ドラヒェスブルク    レヒトの弟
シンクロー・ドラヒェスブルク  レヒトの父親
ミヨシノ            レヒトの母親
オフィークス・フェアティゲン  前ミヌーア王
汽水              前神官団長
神官/市民           ミヌーアの善良なる市民

マガジン紹介

前回のお話


数日後オフィークス邸別室

レヒト、レヒト・D、シンクロー、リンク、並びに家臣たち

レヒト「先日、ミヌーアの御領主、オフィークス・フェルティゲン様が何者かの手によってお亡くなりになった。お世継ぎができないままに亡くなられたため、みなも気を揉んでいることだろう。しかし、殿の死後、ご遺言が発見された」

 レヒト、レヒト・D以外ざわつく

レヒト「静まれ。静まれ。亡き殿が遺されたこのお手紙を今から読もうと思う。しかしその前に、この遺書が本物かどうか確認せねばなりますまい。偽物だと思うている者もおるかもしれんからな。シンクロー殿、この字がホントウに殿のものかどうか確認してはもらえぬだろうか?」
 
シンクロー「分かりました」
      手紙を受け取る
     「……。確かにこれは、殿の字でございます」
 
レヒト、レヒト・D以外 ざわつく
 
レヒト 遺書を回収する
「静まれ。私も確認したが、確かに殿の字であった。そしてもうひとつ。ここに次のミヌ―アの領主となる者の名が記されている!」
 
家臣1「誰なんだそれは!」
 
家臣2「早く教えてくれ!」
 
レヒト 静かになるまで待つ
   「次の御領主はレヒト・ドラヒェスブルクである!」
 
シンクロ―「どういうことだ! なぜレヒトが!?」
 
レヒト・D 真ん中に来る
 
レヒト「オフィークス様のご遺言だからです。シンクロー殿先程、ご自身で確認されたのでは?」
 
シンクロー「確かにそうだが!」
 
レヒト「ならば文句はあるまい!」
 
シンクロー「なぜよりによってお前が! この国の王になってしまうのだ! ワシの努力が水の泡ではないか!」

レヒト「王に失礼であるぞ! 控えおろう!」
 
シンクロー「王である前にワシの息子ぞ!」
 
レヒト「口を慎めシンクロー! 王の御前であるぞ!」
 
レヒト・D「もうよい、ライト。シンクローはわたしの父ではない。そうなのであろう?」
 
レヒト「エ?」
 
リンク・家臣たち ざわつく
 
レヒト「わたしのホントウの父上はオフィークスなのであろう?」
 
レヒト「……。そうでございます! レヒト様の真の御父上は、今は亡きオフィークス・フェアティゲン様でございます!」
    家臣たちに
   「遺書にもそう書いてある!」
 
リンク「父上!」
 
シンクロ―「お主は下がっておれ!ライト、馬鹿なことを申すでないぞ。レヒトはワシとミヨシノとの子ぞ!」
 
レヒト・D「イイエ!すべて父上から聞き及びました。母上はあなたと結婚する前、父上の妾だったそうだのう?そして二人が結婚した直後に私が産まれた。後はみなまで申すまい!」
 
シンクロ―「おのれ、オフィークス!どこまでもワシの邪魔をしおって!ワシは認めん!認めんからな!リンク!帰るぞ!」
 
リンク「ハ、ハイ!」
 
 シンクロ―、リンク 退室
 
レヒト・D「場を荒らしてしまってすまない。しかし、みなの聴いた通りだ。わたしは先王オフィークスの子であり、フェアティゲンの後を継ぐ者。遺書にもしっかりと書かれてある。誰が遺書に嘘偽りを書こうものか。これからはわたしが当主だ!」
 
レヒト、家臣たち「ハハ~!!!」
 
レヒト「ところで。そのオフィークス様の事件についてなのですが」
 
レヒト・D「なんだ?」
 
レヒト レヒト・Dに耳打ち
 
レヒト・D「なんだと!なぜそれを今まで言わなかった!?」
 
レヒト「わたしが申せば、城内で斬り合いになるのは必至!謀反を企てたのは日を見るよりも明らか!なればあなた様の御声でもって、正式に討伐軍を組むのが先代のためかと存じます!」
 
レヒト・D「なるほど。確かにお主の言う通りだ。……。みなのもの、話は聞いたな。父上の仇討ちだ! 敵はドラヒェスブルク!」

ドラヒェスブルク邸へメタモルフォーゼ


リンク「なるほど。噂には聞いていましたが、ホロロギーのタイムトラベルはホントウだったんですね」
 
沙舎「ハイ。私も非常に驚いております。まさか本当に二〇年前に飛べるとは」
 
リンク「エエ。にわかには信じがたい。しかしあなたは今こうしてわたしの目の前にいる。人から口づてに聞いた話ならいざ知らず、自分の目に映るものまでも疑うのはよくありません」
 
沙舎「確かに。仰る通りです」
 
リンク「これは聞いていいのか分からんのだが」
 
沙舎「なんでしょう?」
 
リンク「その、シュミット殿は先ほど」
 
沙舎「サーシャで構いませんよ」
 
リンク「アア。じゃあ。サーシャはさっき調査と言っていたが、一体何の調査なんだ?君のいる未来に何かあったのか?」
 
沙舎「私はある事件の調査のために、こちらへ派遣されたのです」
 
リンク「それ以上は言えない?」
 
沙舎「……。ここだけの話、神託が下りまして」
 
リンク「神託?」
 
沙舎「エエ。私がいた未来ではひとつの穢れがあると言われたんです。その穢れというのが、先王、オフィークス様を殺した者がまだ生きているということなんです」
 
リンク「エエ?私は病死だと聞いているぞ?誰だ、誰が殺したんだ!?」
 
沙舎「それの調査に来ているんです」
 
リンク「アア。そうだったな。……。ン? サーシャ」
 
沙舎「ハイ」
 
リンク「さっき、先王って言ったな。ということは君のいる未来では、まだ……。レヒトが当主なのか?」
 
沙舎「レヒト様とお知り合いなんですか?」
 
リンク「知ってるもなにも、レヒトはわたしの兄だ」
 
沙舎「エエエ!?」
 
リンク「どういうことだ……」
 
沙舎「私はフェアティゲンに仕える家臣で最も新参者でございます。失礼ながら、レヒト様に弟君がおられることもたった今知りました」
 
リンク「君のいる未来にわたしはおらぬのか?」
 
沙舎「……。ハイ。少なくとも私は知りませんでした」
 
リンク「なるほど。しかし、オフィークス様が亡くなった後、どうして私の父ではなく、兄上が継いでおるのだ?遺書に書いてあったとフェアティゲンの家臣が申していたが、あまりにも不自然すぎる。父上もたいそう我を忘れてお怒りになっておられた」
 
沙舎「……。レヒト様が嘘をついておられる?」
 
外が騒がしい
 
沙舎「何やら外が騒がしいですね」
 
レヒトがフェアティゲン家の家臣を率いてドラヒェスブルク邸を襲撃
 
家臣1「リンク・ドラヒェスブルクだな」
 
リンク「どこの手の者だ?」
 
レヒト「フェアティゲンだ」
 
リンク「ライト殿!これは一体!?」
 
沙舎「レヒト様!?どうしてこちらの世界線へ!?」
 
レヒト「サーシャ!わたしはとうとう突き止めたぞ!父上、オフィークスを亡き者にした犯人をな!そこににいるリンク・ドラヒェスブルクの父、シンクローだったのだ!」
 
沙舎「誠でございますか?」
 
レヒト「ああ。しかしそれではまだ足りぬ。神はドラヒェスブルクを根絶やしにすることを望んでおられる」
 
リンク「話が見えないのだが、状況から察するに、ライト殿が二〇年後の未来から来た兄上のようだな。サーシャ、一体何が起こっておるのだ?父上がオフィークス様を殺した?」
 
沙舎「イヤ、私にも分かりません。あと、その、ライトというのは?」
 
リンク「恐らくですが、兄上がライトという名前を騙って、こちら兄上の家督相続を根回ししたのでしょう。したがって遺言も嘘でしょう」
 
レヒト「黙れ、黙れ、黙れ!」
 
沙舎「レヒト様、とにかく、一度落ち着いてください!」
 
レヒト「問答無用じゃ!」
 
殺陣
ひとしきり敵の攻撃を耐えるが、多勢に無勢、
リンクと沙舎は少し押され気味に。
リンクと沙舎、背中合わせに敵と対峙し、会話を交わす。
 
リンク「サーシャ。君もわたしを倒そうと思うか?」
 
沙舎「イエ。私の任務は、事件の調査並びに参考人の保護でございます。かなり複雑な状況ではありますが、今、私がやるべきことは参考人の保護と心得ております」
 
リンク「その言葉、信じるぞ」
 
沙舎「ハイ。とにかく、ここから脱出しましょう」
 
リンク「承知した!」
 
殺陣
リンクと沙舎、敵の攻撃を薙ぎ、隙を突いて、
ドラヒェスブルク邸を脱出。
 


荒らされたフェアティゲン邸
シンクローが駆けつける
家臣たちは倒れ、リンクと沙舎は消息不明
 
シンクロー「リンク!リンク!」
      家臣の一人を抱きかかえ
     「オイ! 誰にやられた!? リンクは!?」
 
家臣「フェアティゲン……。リンク様は分かりません……」
 
シンクロー「クソ! ワシはただこの家を守りたいだけなのだ! ワシが何をした!? なぜこのような目に合わねばならぬ!?」
 
家臣 駆け込んでくる
  「申し上げます!」
 
シンクロ―「なんじゃ!?」
 
家臣「ソノ……ミヨシノ様がお亡くなりになりました!」
 
シンクロー「何だと!? ……フェアティゲンか!?」
 
家臣「イイエ! ……。河川敷で発見され、全くお体に傷がないことから……自ら河へ身を投げたものと推測されます」
 
シンクロー「そうか……」
      家臣の血に手を浸し、その手を天にかざす
     「レヒト! これがお前のやったことだ! 出てきて、お前の手をこの血潮に浸し、この臭いを嗅ぐがよい!その臭いが、お前が犯した罪の臭いぞ!!!」
 

オフィークス邸へメタモルフォーゼ

レヒト・D「わたしは弟を殺そうしたのではない。シンクロー・ドラヒェスブルクの子を殺そうとしたのだ。シンクローは我が父に非ず。我が父はフェルティゲンの先代当主であり、ミヌーアの王におわした、オフィークス・フェアティゲンである。今、兵を率いてこちらへ向かっているシンクローは、我が父、オフィークスに反旗を翻した逆賊である! ……。城より撃って出る!」

第2幕 接触篇 完

次回のお話

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