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【SF】因果平衡 第1幕第3話

あらすじ

この国にはひとつの穢れが巣食っている。ミヌ―アの領主レヒトは父親殺害の犯人を捜すため、過去へ遣いを飛ばす。遣いが重要参考人として連れて帰ってきたのは、レヒトの弟と名乗る人物だった。男は事件の犯人をレヒトだと告発し……。

登場人物

レヒト・フェアティゲン     ミヌーアの王
凪               神官団長
沙舎・シュミット        未来からの帰還兵
レヒト・ドラヒェスブルク    過去のレヒト(以下レヒト・Dと表記)
リンク・ドラヒェスブルク    レヒトの弟
シンクロー・ドラヒェスブルク  レヒトの父親
ミヨシノ            レヒトの母親
オフィークス・フェアティゲン  前ミヌーア王
汽水              前神官団長
神官/市民           ミヌーアの善良なる市民

マガジン紹介

前回のお話

ドラヒェスブルク邸

部屋にシンクローとミヨシノがいる。
レヒト・Dが部屋へ駆け込んでくる。

レヒト・D「父上!」
 
シンクロー「どうしたのだ、レヒト」
 
レヒト・D  シンクローの傍へ寄り
「今朝、フェアティゲンへ行ったのですが……ソノ……オフィークス様がお亡くなりになりました。」
 
ミヨシノ「それはまことか、レヒト!?」
 
レヒト・D「ハイ。なんでも、刺客に襲われたとか……」
 
ミヨシノ「ナント、嘆かわしいことよ……」

レヒト・D「父上、念の為に聞いておきますが、……違いますよね?」

シンクロー「なぜ、そのようなことを聞く」

レヒト・D「イエ、オフィークス様が倒れていた部屋に「鷹の羽」が落ちていたらしいので……。」

シンクロー「それだけでワシを疑うのか?」

レヒト・D  しらを切るシンクローに怒りが込み上げてくる。
「……お前の差し金だろ!!!」
 
シンクロー「レヒト!  お主、親に向かってその口の利き方はなんだ!?」
 
レヒト・D「お前など、親でもなんでもないわ!」
 
ミヨシノ「レヒト!  謝りなさい!  父上に謝りなさい!」
レヒトを無理やり跪かせ、頭を下げさせようとする
「謝りなさい!  謝りなさい!」
 
シンクロー「もうよい、ミヨシノ」
 
ミヨシノ「シンクロ―様」
 
レヒト ミヨシノを振り払う
 
シンクロー「立て、レヒト」
 
レヒト・D 立つ
 
シンクロー「確かに。オフィークス様のことワシがやった。しかしな。お前はワシの子ぞ!  オフィークスに何を吹き込まれたか知らんが、その事実は何も変わらぬ!」
 
レヒト・D「主君を殺す家臣がどこにおる!?」
 
シンクロー「話をすり替えるな。ワシは家族の話をしている」
 
レヒト・D「分からぬな!  あなたの考えていることは全く分からぬ!」
 
シンクロー「……。そうか。……。なら、もうよい」
 
レヒト・D「何がよいのだ。わたしの話は終わっていない!」

シンクロー「……出ていけ」

レヒト・D「……」

シンクロー「出ていけ!!!」

レヒト・D  「……分かりました」
不服そうに部屋から出ていく。
 
シンクロー「……。そろそろ、お主にこの家の家督を譲ろうと思うていたが、リンクの方が良いかもしれんのう」
 
ミヨシノ「シンクロー様、それは!」
 
シンクロー「分かっておる。しかし最初からこうなることが決まっていたのかもしれんと思うてな」
 
ミヨシノ「そんな……」

数日後フェアティゲン邸


家臣「よって次期ミヌ―アの領主をレヒト・ドラヒェスブルクとする!」
 
家臣 ざわめく
 
レヒト・D「わたしは先王オフィークスの子であり、フェアティゲンの後を継ぐ者。遺書にもしっかりと書かれてある。よって本日より、レヒト・ドラヒェスブルク改め、レヒト・フェアティゲンと改名いたす!」
 
家臣 拍手
 
悲しそうに去っていくシンクローとミヨシノ

ドラヒェスブルク邸へメタモルフォーゼ


リンク「なるほど。噂には聞いていましたが、ホロロギーのタイムトラベルはホントウだったんですね」
 
沙舎「ハイ。私も非常に驚いております。まさか本当に20年前に飛べるとは」
 
リンク「エエ。にわかには信じがたい。しかしあなたは今こうしてわたしの目の前にいる。人から口づてに聞いた話ならいざ知らず、自分の目に映るものまでも疑うのはよくありません」
 
沙舎「確かに。仰る通りです」
 
リンク「これは聞いていいのか分からんのだが」
 
沙舎「なんでしょう?」
 
リンク「そのシュミットさんはさっき」
 
沙舎「サーシャで構いませんよ」
 
リンク「アア。じゃあ。サーシャはさっき調査と言っていたが、一体何の調査なんだ?  君のいた未来に何かあったのか?」
 
沙舎「私はある事件の調査のために、こちらへ派遣されたのです」
 
リンク「それ以上は言えない?」
 
沙舎  リンクにそっと近づき小さな声で喋る
「……。ここだけの話、神託がく下りまして」
 
リンク「神託?」
 
沙舎「エエ。私がいた未来ではひとつの穢れがあると言われたんです。その穢れというのが、先の王、オフィークス様を殺した者がまだ生きているということなんです」
 
リンク「私の父、シンクローが殺したという根も葉もない噂が立っている。ホントウに父上が殺したのか?」
 
沙舎「その調査に来ているんです」
 
リンク「アア。そうだったな。……。ン? サーシャ」
 
沙舎「ハイ」
 
リンク「さっき、先の王って言ったな。ということは君のいる未来では、まだ……レヒトが当主なのか?」
 
沙舎「レヒト様とお知り合いなんですか?」
 
リンク「知ってるもなにも、レヒトはわたしの兄だ」
 
沙舎「エエエ!?」
 
リンク「どういうことだ……」
 
沙舎「私はフェアティゲンに仕える家臣で最も新参者でございます。失礼ながら、レヒト様に弟君がおられることもたった今知りました」
 
リンク「君がいた未来にわたしはおらぬのか?」
 
沙舎「……。ハイ。少なくとも私は知りませんでした」
 
リンク「なるほど。しかし、オフィークス様が亡くなった後、どうして兄上が継いでおるのだ?  遺書に書いてあったとフェアティゲンの家臣が申していたが、あまりにも不自然すぎる」
 
沙舎「……。レヒト様が嘘をついておられる?」
 
外が騒がしい
 
リンク「何やら外が騒がしいですね」
 
レヒトがフェアティゲン家の家臣を率いてドラヒェスブルク邸を襲撃
 
家臣1「リンク・ドラヒェスブルクだな」
 
リンク「どこの手の者だ?」
 
家臣2「フェアティゲンだ」
 
沙舎「なぜフェアティゲンがここを攻める?」
 
家臣1「オフィークス様は殺されたのだ」
 
家臣3「シンクローに謀反の疑いが掛かっている」
 
リンク「あれは根も葉もない噂だ!」
 
家臣2「うるさい!  ドラヒェスブルクの一門は斬っても構わんと許可も下りている。抵抗するなら斬るぞ!」
 
沙舎「話が見えないが、状況から察するに、先程申し上げた穢れた事件とはこれのようですね!」
 
リンク「そのようだ。しかしなぜそんことを」
 
家臣3「問答無用じゃ!」
 
殺陣
ひとしきり敵の攻撃を耐えるが、多勢に無勢、リンクと沙舎は少し押され気味に。
リンクと沙舎、背中合わせに敵と対峙し、会話を交わす。
 
リンク「サーシャ。君もわたしを倒そうと思うか?」
 
沙舎「イエ。私の任務は、事件の調査並びに参考人の保護でございます。かなり複雑な状況ではありますが、今、私がやるべきことは参考人の保護と心得ております」
 
リンク「その言葉、信じるぞ」
 
沙舎「ハイ。とにかく、ここから脱出しましょう」
 
リンク「承知した!」
 
殺陣
リンクと沙舎、ドラヒェスブルク邸を脱出
 

現代のシュミット家の館


家臣「サーシャ様。またお手紙が届いております」
 
沙舎「またか。何度も断っているというのに、スルツキーもなかなかしつこいな」
 
家臣 手紙を渡す
 
沙舎 手紙を読む
「フン、なるほど」
破く
 
家臣「よろしいのですか」
 
沙舎「構わん。毎度毎度同じ内容を送ってきて、返答が変るとでも思っているのか?全く迷惑な話だ……」
 
 破いたはずの手紙が元に戻っている
 
沙舎「エ……?」
 
家臣「アレ、手紙?」
 
沙舎「内容が……」
 
家臣「内容がどうかしましたか?」
 
沙舎「イヤ、なんでもない。この手紙は私の方で処分しておく」

第1幕 神託篇 完

次回のお話

題2幕 接触篇 始動!

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