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【SF】因果平衡 第3幕最終話

あらすじ

この国にはひとつの穢れが巣食っている。ミヌ―アの領主レヒトは父親殺害の犯人を捜すため、過去へ遣いを飛ばす。遣いが重要参考人として連れて帰ってきたのは、レヒトの弟と名乗る人物だった。男は事件の犯人をレヒトだと告発し……。

登場人物

レヒト・フェアティゲン     ミヌーアの王
凪               神官団長
沙舎・シュミット        未来からの帰還兵
レヒト・ドラヒェスブルク    過去のレヒト(以下レヒト・Dと表記)
リンク・ドラヒェスブルク    レヒトの弟
シンクロー・ドラヒェスブルク  レヒトの父親
ミヨシノ            レヒトの母親
オフィークス・フェアティゲン  前ミヌーア王
汽水              前神官団長
神官/市民           ミヌーアの善良なる市民

マガジン紹介

前回のお話


高台から戦場へメタモルフォーゼ

 
殺陣
 
シンクロ―「レヒト!一騎打ちじゃ!」
 
二人 構える
 
一騎打ちを繰り広げる
 
レヒト・D「負けを認めろ、シンクロ―!」
 
シンクロ―「己を偽り、人を欺くような奴に負けるわけにいかぬわ!」
 
レヒト・D「なんだと?」
 
シンクロ―「お主の父親は誰じゃ?」
 
レヒト・D「黙れ!この成り上がりが!」
 
一騎打ちが続く
 
だんだんと二人が集団の中にのみ込まれていき、場面が高台へメタモルフォーゼしていく。集団はもう散っているが、二人はまだ一騎打ちを続けている。
 
少しスローな殺陣を繰り広げながら、以下の会話が音響素材でもって交わされる。
 
シンクロ―「お主の父は誰だ!?」
 
レヒト・D「……。わたしの父は、オフィークス・フェアティゲン!」
 
シンクロ―「この期に及んでまだそのようなことを申すのか。お前の父は、このシンクロ―・ドラヒェスブルクだ!お前は油売りの子ぞ!」
 
レヒト・D「黙れ!!!」
シンクローに斬りかかる
シンクローを討ち取る
 
集団が流れ込み、二人の声をかき消す。(会話終了)
 
一連の流れを見ていたレヒトと汽水
 
レヒト「そうだ……。思い出した」
 
汽水「何を?」
 
レヒト「見たもの全てを」
 
舞台上の集団は離散し、レヒトと汽水のみ。そこへシンクロ―とミヨシノがやってくる。
 
回想
 
シンクロ―「良いものと悪いものの両方があった。どうやら儂はは王にはなれぬようだ。しかし儂の子孫が王になる。まあ、その子孫もいずれ、身内の争いで倒れてしまうそうだが……」
 
ミヨシノ「まあ、それは……なんと複雑な神託でなんと申し上げたらよいのか……。その……。しかし、盛者必衰はこの世の理であります故に、受け入れる他ございませぬ」
 
シンクロ―「そうだな。……。あとは王となる子孫がワシの子らでないことを祈るばかりである」
 
ミヨシノ「レヒトのことでございますか?」
シンクロ―「そうだ。レヒトと、その生まれてくる子が争いの火種にならなければいいが……」
 
ミヨシノ「大丈夫ですよ。どちらも優しい子に育ってくれます」
 
シンクロ―「……そうだな。……よし、決めたぞ!」
 
ミヨシノ「何をお決めになられたのです?」
 
シンクロ―「生まれてくる子の名前じゃ」
 
ミヨシノ「なんと付けるのですか?」
 
シンクロ―「うむ、「リンク」である」
 
ミヨシノ「リンク?」
 
シンクロ―「そうじゃ。「レヒト」と「リンク」、それぞれ「右」と「左」という意味である。車の両輪のように兄弟二人で力を合わせてほしいということだ。どうだ良い名前だろう?」
 
ミヨシノ「はい。とっても」
 
二人、退場
 
 回想終わり
 
レヒト「わたしはこの会話をしかと聴いていた。今でもありありと思い出すことができる程にな。盗み聞きは悪いことだと子どもながらに理解はしていたが、己の好奇心を律することができなかった。……。この日を境にわたしは王になること強く意識した」
 
汽水「なるほど。では、どうしましょうか?」
 
レヒト「最初の神託に言われた通り、父上の敵を討たねばならぬ」
 
汽水「あなたの父上のお名前は?」
 
レヒト「わたしの父は、シンクロー・ドラヒェスブルク!」
 
レヒト、父の仇であるかつての自分を倒しにいく
 
ミヌ―アを見渡せるホロロギーの仮想大伽藍
 
汽水とリンク、そして沙舎(=アレクサンドル)
 
リンク「戦は終わった。しかし兄上が勝利し、ドラヒェスブルクは領地没収。父上もいない。わたしは未来には行きとうない」
 
沙舎「お気持ちは痛いほど分かります。私の主、レヒト様も行方知れずのまま。受け入れるにはあまりにも酷な真実だ。しかし私は自分の使命を全うせねばなりません」
 
リンク「真実を未来に戻って兄上に伝えること。たとえそれが兄上自身を苦しめることとなってもか?」
 
沙舎「……。ハイ。仕方がありません。この国を存続させることが第一でございます」
 
リンク「……。分かった。わたしはやるぞ。」
まだ迷いがあるが、自分に言い聞かせるように
 
沙舎「よろしいですか?」
 
リンク 黙ってうなずく
 
汽水「決心されましたか。私の方はいつでもできますが」
 
沙舎「私たちが行かねば、因果は繋がらない」
手を差し出す
 
リンク「ウン」
沙舎の手を握る
 
汽水「よろしいですね?それでは」
レオナルド『受胎告知』天使ガブリエルのようなポーズ
「レスピケ・アドスピケ・プロスピケ。ウェリタース・
ウォス・リベラビート。(過去を吟味し、現在を吟味し、将来を吟味せよ。真実はあなたを自由にする)」
 
仮想大伽藍に未来の音が鳴り響く
リンクと沙舎(=アレクサンドル)が舞台奥へ消えていく
 
汽水 ギリシャ悲劇のコロスのように
「沙舎とリンクは帰っていった。真実を伝えに。アレクサンドルに名を変えて。ホロロギーの神託を伝え聴かせる天使となって。レヒトはまたやってくる。ホロロギーの名のもとに。因果は必ず収束する。ホロロギーの名のもとに」
 
仮想大伽藍には未来の音が鳴り響いている

終幕

因果平衡 完


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