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悪魔教師/盲目

生徒
悪魔 ……黒服
遣い魔……黒服
 
下手に勉強机と椅子
舞台中央に生徒と悪魔
机の上に部厚い本を開いて置いてある
 
悪魔 それっぽいポーズ
 
生徒「ホントに出来た……」
 
悪魔「ん?オマエか。私を永き眠りから呼び起こしたのは?」
 
生徒「おお、それっぽい。……」
それっぽいポーズで
「フン!そうよ!私がアナタをこの世界に呼び起こしたの……。今日から私が……主人よ!」
決めポーズ
 
悪魔「主人?笑わせるな。どうしてこの私が人間の下僕にならなければいけない?」
 
生徒 それっぽいポーズ
「何のためにお前を呼んだと思う?」
 
悪魔「この私と契約を結ぶか」
 
生徒 それっぽいポーズ
「そうよ。私の望みを叶えなさい!」
 
悪魔「分かった、望みは叶えてやろう。しかしひとつだけ、確認しておきたい」
 
生徒 お高く留まって
  「何かしら?」
 
悪魔「契約というのはあくまで対等な関係だ。だからどちらかが主人でどちらかが下僕などということはない」
 
生徒「え!?」
 
悪魔「どうした?」
 
 
生徒 顔を覆って
  「ああ~!」
床にへたり込む
 
悪魔「だからどうした?」
生徒を立ち上がらせる
 
生徒 顔を覆いながら
  「恥ずかしい……」
 
悪魔「大丈夫、大丈夫だから。……。それで、契約の内容は何だ?」
 
生徒「契約していただけるんですか……?」
 
悪魔「呼び出したのはオマエだろ?」
 
生徒「じゃあ、遠慮なく」
ハッキリと聞こえない
  「~~~~~さい」
 
悪魔「なんて?」
 
生徒「勉強を教えてください!」
 
悪魔「はあ!?」
 
生徒「ダメですか?」
 
悪魔 驚きを隠せず
「ダメ……じゃないけど。ええ!それで呼び出したの!?この私を!?」
 
生徒「ハイ」
 
悪魔「え?分かってる?対価、寿命だよ?」
 
生徒「ハイ」
 
悪魔「契約はします。悪魔なので。理由を聞かせてほしい」
 
生徒「ハイ。実はもうすぐ定期テストがあるんですけど、私、留年にリーチかかっちゃてて。先生に相談したら「死ぬ気で勉強するしかない」って言われて、それで……」
 
悪魔「それで私!?いや、背水の陣にもほどがあるっていうか……」
 
生徒「もう後が無いんです!お願いします!」
泣きつく
 
悪魔「分かった、分かったから、ね。契約しましょう、契約」
 
生徒「ありがとうございます!」
 
悪魔「ちょっと危ないから離れてて」
 
生徒「あ、はい」
悪魔から少し離れる
 
悪魔 それっぽいポーズ
  「深淵なる闇の遣い、現世に力をあらしめよ。ハアッ!」
右手で天を突く
 
遣い魔が颯爽と現れ、悪魔に紙を渡す
 
悪魔「パシッ」
紙を掴む
遣い魔ははける
 
生徒「え、今の何ですか?」
 
悪魔「遣い魔だ」
 
生徒「遣い魔?」
 
悪魔「カラスだ」
 
生徒「え、どっちですか?」
 
悪魔「カラスの遣い魔だ。良い奴だよ。毎日、朝刊を運んできてくれるんだ」
 
生徒「へえ~。で、その紙は?」
 
悪魔「契約書」
 
生徒「契約書!?なんか思ってたのと違う」
 
悪魔「口約束はトラブルの原因だからね。ちゃんとしとかないと、言った言ってないみたいなことになっても困るからな」
 
生徒「まあ、そうですね」
 
悪魔「契約書、読もうか?任意だからどっちで良いが?」
 
生徒「いや、もう、出来るだけ早く勉強したいので良いです」
 
悪魔「いつからテストなんだ?」
 
生徒「次の月曜日です」
 
悪魔「次の!?今、土曜の夜だぞ、なぜもっと早く私を呼ばなかった!?」
 
生徒「だって、召喚するための道具を用意するのに時間かかっちゃって……」
 
悪魔「はあ。その熱心さを勉強に注げ!」
 
生徒「悪魔のサタデーナイトよ!」
 
悪魔 メモとペンを取り出して書きつける
「正気の沙汰でないっと。……。ほう。苦手な科目があるのか……」
 
生徒「なんで分かるんですか!?」
 
悪魔「オマエの考えてることなど手に取るように分かる」
手をかざして
  「苦手科目は……す、数学か、生物?」
 
生徒「手に取るように分かるのに二択なんですね」
 
悪魔「生物だ、生物」
 
生徒「じゃあそれを証明してください」
 
悪魔「オマエ、勉強したいんだろ?」
 
生徒「そうですよ。でも本当に悪魔なら悪魔の証明を見てみたいじゃないですか」
 
悪魔「面倒くさ……。よし、分かった。「オマエは生物が苦手である」これを証明すればいいんだな?」
 
生徒「はい」
 
悪魔「オマエは生物が苦手である」これが命題だ。次にオマエは生物が苦手でないと仮定する。しかし「オマエは生物が苦手である」ので、これと矛盾する。したがって背理法によって「オマエは生物が苦手である」」
 
生徒「おお~!」
拍手
 
悪魔「今ので、数学も苦手ということが証明されたな。……なんで生物が苦手なんだ?」
 
生徒「先生の言ってることが分かんないんですよね」
 
悪魔「ああ~。声が小さいとか、早口の奴とかいるからなあ」
 
生徒「いや、ウチの理科の先生、宇宙人なんですよ」
 
悪魔「それだったら、他の生徒も成績良くないんじゃないの?」
 
生徒「そうなのかなあ」
 
悪魔 右手で天を突く
 
遣い魔 参考書を持って登場
 
悪魔「パシッ」
受け取る
 
遣い魔 はける
 
生徒「あれ?言わなくても出来るんですね」
 
悪魔「え?」
 
生徒「あの「深淵が~」みたいな」
 
悪魔「うん、別に呪文じゃないから。……勉強しましょうか!」
 
生徒「はい!」
椅子に座る
 
悪魔 そばに立って参考書を開く
  「え~っと、ここだな」
 
声も動きも早送りみたいになる
早送りがなくなって
 
生徒 問題を解いている
  「う~~~ん。分からん!」
立ち上がって、机から少し離れる
  「うっ、何という禍々しい力!ㇵッ!これがもしや、ダークマター!?」
 
悪魔「違うわ」
 
生徒「そもそも何で定期テストなんかあるんですか?」
 
悪魔「あ、これ、ダメなパターンの学生だな」
 
生徒「フン!人間が作ったかみっぺら一枚で、この私を計ろうとするなんて、罪深い者よ……。クックック……」
 
悪魔「先生、宇宙人だろ」
 
生徒「ああ!そうだった!!」
 
悪魔「はあ、ダメだな、こりゃ」
それっぽいポーズ
  「深淵なる闇の主よ、今こそこの者に力を与え給え」
 
生徒「何をしたんですか?」
 
悪魔「コレ、読んでみな」
参考書を渡す
 
生徒驚きながら
  「オオ、分かる!分かるぞ!まるで初めから何もかも知っていたようだ!新たな知見を得た私はより高次の存在へと進化する!オオ!素晴らしい力だ……」
 
悪魔「どう?これでテストも乗り越えられそうだろ?」
 
生徒「ええ、これで地獄の門は閉ざされたわ……」
 
悪魔「そのキャラ、恥ずかしかったんじゃないの?」
 
生徒「参ろう……終末のその先へ」
 
悪魔「ウィークエンド?」
 
生徒「その週末じゃない」
 
悪魔「あ、ゴメン、ウィークエンドの方かと思った。いや、いいの、勝手な解釈した私が悪いから。かかってる?かかってるのね?うん、確かにカッコいいと思う」
 
生徒 悪魔に被って
「終末論とかの方の終末。確かにややこしいもんね。テストも月曜日からだし。いや、かかってないことはないんだけど、終わりの方がカッコいいから」
 
二人 溜息
 
生徒「審判の日は近い……!最終戦争に向けての準備を始めよう……。今ある力は確かに強大だが、これではまだ足りない。もっと大きな力を手に入れなければならない。全ては輝かしき進級の為に!」  
 
悪魔「切実な叫びね」
 
生徒 あくび
  「あれ?」
 
悪魔「ん?」
 
生徒「急に頭がボーッとして……。まさか異界から干渉しているというの!」
 
悪魔「いや、力が暴発してるだけだから」
 
生徒「どういうこと……?」
 
悪魔「さっき、私はオマエに力の受け渡しをした。その時、私の睡魔という特性も一緒に引き継いだんだな」
 
生徒「そんな能力……聞いてない……」
寝落ちしかける
 
悪魔 溜息
分厚い本を取り、あるページを示す
  「起きろ馬鹿。ここに書いてるだろ」
 
生徒 起きて、悪魔辞典を読む
「種族、睡魔」
物凄く驚く
  「エエー!!!」
悪魔「やっぱり読んでなかったか!」
 
二人 沈黙
 
生徒「あ、今ので目覚めたわ」
参考書を取りに行く
 
悪魔「やった!」
 
生徒 参考書を読む
 
ゆっくり暗転
 
生徒「オオ、分かる!分かるぞ!まるで初めから何もかも知っていたようだ!新たな知見を得た私はより高次の存在へと進化する!」
 
悪魔 ジェスチャーで「ダメだこりゃ」
 
暗転完了

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