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【エッセイ】

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【エッセイ】をまとめたものである。
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#エッセイ部門

【エッセイ】高嶺の花が、心の側でそっと笑う

【エッセイ】高嶺の花が、心の側でそっと笑う

 我が平生に絶世の美女がいる。凜とした佇まいで淑やかに咲き、至福の言葉と可憐な笑顔で、衆生をぱっと明るくする。誰もが思い描く理想の美人像。そこに最も近い女性が、今、私の目前で笑う。

 読者諸君、ご機嫌いかがだろうか。らしくもない始め方をしてしまった。美人は三日で飽きるという欺瞞を一笑に付し、365日の美人凝視を続けた私である。感傷に浸ったキザな文章を書くのも詮方ない。
 我が職場には、圧倒的才色

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【エッセイ】想定外とシニカルフレンド

【エッセイ】想定外とシニカルフレンド

 読者諸君、ご機嫌よう。世はゴールデンウィークに突入し、愉快な諸君はさぞ浮き足立っていることだろう。昨今は旅の需要も戻っていると聞く。浮いた足で全国各地へ飛ぶといい。津々浦々で舞い上がる諸君を下から眺めるのも、また一興と言えよう。

 斯く言う私は、四国をふわふわと歩き回ってきた。地中海がもたらす海の幸、霊験灼かな神社、涼しげな落ち着きを与える自然、甘味引き立つ抹茶大福、路地裏で食べるカルボナーラ

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【エッセイ】身を挺して歴史学習

【エッセイ】身を挺して歴史学習

前編はこちら

 可愛い子には旅をさせよ。危険を伴う冒険と引き換えに、大いなる成長を手に入れるべきだ。薄汚い大人にも旅をさせよ。煤けて黒くなった心を浄化するのだ。しかし、薄汚い我々の旅は、苦行を含む自己研鑽の道ではない。平易どころか利便性に充ちた快適な旅である。豊かな自然と観光地に恵まれた四国を、レンタカーで放蕩不羈に巡るのだ。可愛い子の方がよっぽど殊勝だろう。私は恥じるべき自己を背負って四国を旅

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【エッセイ】君への大巧は拙なるが若し(誕生日後編)

【エッセイ】君への大巧は拙なるが若し(誕生日後編)

 今ここに断言する。他に誇れる人生を一切送っていないと。誰もが憧憬の念を抱く人間とは、常に精神的向上、肉体的鍛錬、学問的精進を怠らない圧倒的覚悟を持った人間である。

 集中力の欠如と生半可な努力を引き連れて生きる私の廃れた人生に、褒められるべき点などは万に一つも無いのだ。暇さえあれば惰眠を貪り、時折目を覚ませばひたすらに米を貪る。貪るだけ貪った挙げ句、日が射さぬ埃だらけの部屋で誇りある自分を夢想

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【エッセイ】春

【エッセイ】春

 読者諸君、ご機嫌よう。外はすっかり春の装いだ。街を歩けば、温かい空気に惑わされた奇人が、大量に街を跳梁跋扈している。奇人たちは春の景色を賑やかす存在として勇躍中なのだ。

 試しに週末の代々木公園に足を踏み入れれば、不思議なことに辺りは一瞬で地獄絵図と化す。花吹雪と杯盤狼藉が入り乱れた風景はまこと不気味である。平生は経験し得ない黄泉の雰囲気を、諸君らも堪能してくると良い。

 私も負けじと近所の

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【エッセイ】自己紹介という宿題(中学生編)

【エッセイ】自己紹介という宿題(中学生編)

挨拶 ご機嫌よう、読者諸君。自己紹介が小学生編で止まっている。幕間で観客を5日間待たせているのだ。本当に舞台なら苦情の嵐が鳴り止まない。侮蔑の刃を浴びながら、それでも後編へ入ろう。さぁ、評判の奈落落とし公演が始まる。

中学生の私である 中学生時代。あまりにも浮き沈みの激しい3年間であった。喩えるなら、入学時に成層圏からのスカイダイビング。しかし、落下地点に巨大なトランポリン。跳ね上がって上昇気流

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【エッセイ】あなたは扉を開けてください

【エッセイ】あなたは扉を開けてください

 2週間ぶりだ、読者諸君。先週は旅行で大分を練りに練り歩いていた。練り歩き過ぎた結果、物書きとしての時間を失った。ご容赦ねがう。
 しかし、名物の地獄巡りは良かったぞ。別府の湯気は身も心も温める。湯布院も山中の温泉街として風情があった。この素晴らしき大分旅行は、近いうちにエッセイで披露しよう。

 旅行を経て、私はひと回りもふた回りもお腹だけ大きくなった。人間としては何も変わらない。蓄えた脂肪を落

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【エッセイ】大学四年次リゾット体系

【エッセイ】大学四年次リゾット体系

 今回のエッセイは長い。挨拶は手短に済ませよう。
 最近は、連日のW杯に大興奮し、家で一人ブラボーと叫んでいる。読者諸君もこの一週間で十回以上はブラボーを使ったのではないだろうか。日本に長友が大量発生することを危惧している私だ。

 さて、今日は私が大学四年次に作成した文章を披露しよう。卒業記念にゼミのメンバーへ送ったものである。これでも私はゼミ長として勇名を馳せていた。大先生と皆から呼ばれ、非常

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