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より少ない資源でより豊かに:アンドリュー・マカフィー著『MORE from LESS』が示す未来

こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

今日は『MORE from LESS』という本を紹介したいと思います。

この本、経済成長と資源消費の関係についての従来の常識を覆す、画期的な本です!

マカフィー氏は、MITスローン経営大学院の主任研究員であり、デジタル経済が社会に及ぼす影響について研究を行っています。

本書では、多くの読者が当然と考えているであろう「経済成長には資源消費の増加が不可欠」という前提に疑問を投げかけ、テクノロジーの進歩と資本主義こそが、地球環境への負荷を軽減する鍵となる可能性を提示しています。


資源消費と経済成長の常識を覆す「脱物質化」

これまで、経済が発展し、人々の生活が豊かになるにつれて、資源の消費量も増加していくことは避けられないと考えられてきました。

しかし、マカフィー氏は、私たちは今、「脱物質化」の時代に入っていると述べています。

これは、経済が成長しているにもかかわらず、資源の消費量が減少していく現象を指します。

本書では、アメリカを例に挙げ、GDPや人口が増加している一方で、多くの資源の消費量がピークを迎え、減少傾向にあることを示しています。

テクノロジーの進歩が資源消費を抑制する

従来、テクノロジーの進歩は、新たな製品やサービスを生み出し、消費を促進することで、資源消費の増加に繋がると考えられてきました。

しかし、マカフィー氏は、デジタル技術の進化が、資源消費を抑制する方向に働いていると指摘します。

例えば、スマートフォンは、電話、カメラ、音楽プレーヤーなど、かつては別々の機器で提供されていた機能を1台に集約することで、資源の節約に貢献しています。

このように、デジタル技術は、物理的な「モノ」をデジタルの「ビット」に置き換えることで、資源消費を抑制する可能性を秘めているのです。

デジタル技術による脱物質化は、様々な分野で進んでいます。

音楽配信サービスの普及により、CDなどの物理的なメディアの需要は減少しました。電子書籍リーダーの登場により、紙媒体の書籍の消費量も減少傾向にあります。

ただし、紙の使用量全体としては、段ボールなどの包装材の需要増加により、横ばいの状況が続いています。

また、「サービサイジング」と呼ばれる、所有から利用への転換も、脱物質化を促進する重要な要素です。

例えば、NetflixやSpotifyなどのサブスクリプションサービスは、映画や音楽を所有するのではなく、利用する権利を提供することで、物理的なメディアの消費を抑制しています。

さらに、AI(人工知能)は、資源の効率的な利用を促進する上で、大きな役割を担っています。

AIを活用した精密農業は、必要な量の水や肥料を必要な場所に必要なタイミングで供給することで、資源の無駄を削減します。

スマートグリッドは、電力需要を予測し、効率的に電力を供給することで、エネルギー消費を抑制します。

このように、AIは、様々な分野で資源の効率的な利用を可能にし、脱物質化を加速させています。

資本主義とテクノロジーが生み出す「希望のサイクル」

マカフィー氏は、資本主義とテクノロジーの進歩が、以下のような「希望のサイクル」を生み出すと述べています。

  1. 資本主義は、企業にイノベーションと効率性向上を促す

  2. テクノロジーの進歩は、資源の効率的な利用を可能にする

  3. 資源の効率的な利用は、環境負荷を低減する

  4. 環境負荷の低減は、持続可能な社会の実現に貢献する

  5. 持続可能な社会は、人々の生活の質を高め、経済成長を促進する

このサイクルの中で、市民の自覚と反応する政府も重要な役割を担います。

市民は、環境問題に関心を持ち、持続可能な消費行動を選択することで、企業の行動変容を促します。

また、政府は、環境規制や政策を通じて、企業のイノベーションを支援し、持続可能な社会の実現を後押しします

マカフィー氏は、この資本主義、テクノロジーの進歩、市民の自覚、反応する政府の4つを「希望の四騎士」と呼んでいます。

興味深いのは、環境問題の原因として批判されることの多い資本主義とテクノロジーの進歩が、実はその解決策になり得るという点です。

企業は、利益を追求するために、より少ない資源でより多くの価値を生み出す方法を模索します。

その結果、資源の効率的な利用やリサイクルが進み、環境負荷の低減に繋がります。

資本主義は、シェアリングエコノミーの発展にも貢献しています。AirbnbやUberなどのサービスは、遊休資産の活用や移動手段の効率化を通じて、資源の消費を抑制しながら経済成長を促進しています。

また、SpotifyやNetflixなどの定額制サービスは、音楽や映画を所有するのではなく、利用する権利を提供することで、物理的なメディアの消費を抑制しています。

これらのサービスは、消費者の利便性を高めると同時に、環境負荷の低減にも貢献している好例と言えるでしょう。

具体的な事例とデータで見る「脱物質化」

本書では、様々な事例やデータを用いて、脱物質化の現状が示されています。

例えば、アメリカのアルミニウムの生産量は増加しているものの、そのリサイクル率も向上しており、資源の有効活用が進んでいます。

これは、企業がコスト削減と環境負荷低減の両立を目指し、リサイクル技術の開発や導入に積極的に取り組んでいる結果と言えるでしょう。

課題と今後の展望

マカフィー氏は、脱物質化は希望に満ちた現象であるとしながらも、いくつかの課題も指摘しています。

例えば、デジタル技術の利用に伴うエネルギー消費の増加や、電子廃棄物の増加などが挙げられます。

これらの課題に対処するためには、再生可能エネルギーの利用拡大や、電子機器のリサイクル、リユースの促進などが重要となります。

また、脱物質化は、先進国を中心に進んでいる現象であり、途上国では依然として資源消費量が増加しているという現状もあります。

グローバルな視点で資源消費の動向を捉え、途上国における環境負荷の増加を抑制する必要があります。

さらに、本書では食料廃棄の問題も取り上げられています。

世界では、年間約25億トンのまだ食べられる食料が廃棄されており、これは世界全体で作られる食料の量の40%に相当します。

食料の生産には、水やエネルギーなどの資源が大量に消費されます。

食料廃棄を削減することは、資源の節約だけでなく、環境負荷の低減にも大きく貢献すると言えるでしょう。

結論

アンドリュー・マカフィー氏の著書『MORE from LESS』は、経済成長と資源消費の関係についての従来の常識を覆し、持続可能な社会への新たな道を示唆する画期的な著作です。

本書で提示された「脱物質化」の概念は、環境問題解決への新たな希望となる可能性を秘めています。

マカフィー氏は、楽観主義的な未来を描いていますが、同時に、その実現には課題も多く存在することを示唆しています。

デジタル化によるエネルギー消費の増加、電子廃棄物の問題、途上国における資源消費量の増加など、解決すべき課題は山積しています。

しかし、マカフィー氏は、これらの課題を克服し、脱物質化をさらに進めていくことは可能だと考えています。

そのために必要なのは、テクノロジーの進歩、資本主義、市民の自覚、そして反応する政府という「希望の四騎士」の力が連携することです。

私たち一人ひとりが、環境問題に関心を持ち、持続可能な社会の実現に向けて努力することが、より良い未来を創造するために不可欠なのです。

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