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【スマホではなく小説を】#1 うつくしい人/西加奈子
【スマホではなく小説を】
スマホ依存症を克服すべく
スマホを触る代わりに本を読むことにした私が、
その感想を置いていく場所です。
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#1 うつくしい人 西加奈子
あらすじ
他人の目を気にして、びくびくと生きている百合は、単純なミスがきっかけで会社をやめてしまう。発作的に旅立った離島のホテルで出会ったのはノーデリカシーなバーテン坂崎とドイツ人マティアス。ある夜、三人はホテルの図書館で写真を探すことに。片っ端から本をめくるうち、百合は自分の縮んだ心がゆっくりとほどけていくのを感じていた-。
感想(ネタバレなし)
日常に疲れたら読んでみてほしい本です。
特に、周りの目を気にしすぎて自分が何者かわからなくなってしまっている人や、他人の顔色を伺いながら生きている人は主人公に共感できると思います。
きっと読み終わる頃には主人公と並んで前を向くことができる、そんな一冊です。
内容としては心がパンクしてしまった女性が傷心旅行をするという、ただそれだけのお話です。
ただそれだけのお話をここまで丁寧に掘り下げて、主人公の感情の機微をこうも繊細に描き切るなんて、さすが西加奈子さん。
本当に感情の描写がお上手で、ひとつの旅の間での心情変化がとても自然かつ的確に描かれています。
一部いじめやスクールカーストにも触れており、自分の身を守るために誰かを傷つけなくてはならない残酷さや、美しい人が美しいままでそこに在ることができない現実について考えさせられました。
私は、ひどく落ち込んだ時にこの本を読みます。
今回で3回目かな。
ああ、こんな日はポンコツバーテンダーがいるバー『アカシア』に行ってビールをぐいっと飲みたい。坂崎とマティアスと話がしたい。
そう思ってこの本を開きます。
そうしてアカシアに行けたなら、すべて忘れて、何もかも取るに足らないことに思えて、何より、私のままそこに在ることができる。
そして、読み終わる頃には、主人公 百合と共にいろんなものをかなぐり捨て、変わらない日常に向き直ることができるのです。
「身につけることだけが、人間にとって尊い行為なのではない。何かをかなぐり捨て、忘れていくことも、大切なのだ」
もちろん私の現実は変わらないんだけれど、むん!と前を向く力をもらえます。
それはきっと、私が変われば世界は少し変わって見えるのだということを思い出させてくれるからです。
「人生は、私が思うほど悪意には満ちていない、難しいものではないのではないか」
百合が選んだ旅先がここでよかった。
坂崎やマティアスに会えてよかった。
マティアスもまた、まきさんに会えてよかった。
私も、この3人に会えてよかった。
読み始めは重すぎるほどに重いのですが、後半にいくにつれどんどん足取りが軽くなり、海に向かって走り出すような、開放的で爽やかな気持ちで本を閉じました。
きっと読み終わる頃にはみんな、なんだか旅に出たくなっちゃうんじゃないかな。
あ〜私も行きたいなぁ、一人旅!