寝かしつけと叱りつけ
21時はとうに過ぎた。
1歳娘と3歳息子はベッドの上ではしゃいでいる。
何がそんなに面白いのか、お互いの顔を見てひたすらに笑い続けている。もう一度言う、何がそんなに面白い。
四捨五入すると22時だ。
脳内でコメンテーターが次々とご意見し始めた。
「日本の乳幼児は睡眠不足です」
「脳の発達には睡眠が重要なんですよ」
「遅くても21時までには寝かしつけないと」
教えてくれているのだろうが、責められているようにしか聞こえなかった。この子達が寝ないのは親の責任だと、そう言いたいのか。
…プツン
「もういつまで笑い転げてんの!?寝室ってのは寝るための部屋なんだよ!静かにするとこなの!そんなにまだ遊びたいなら真っ暗なリビングで遊んできな!眠くなったら戻ってこい!だいたいね、21時とっくに過ぎてんだよ?
早く寝ないと脳みそ育たないよ!?」
叱ると怒鳴るの真ん中で、捲し立てていた。
眠くないのに寝ろって怒られるのも酷だよなと思うけどさ、布団入ったの20時過ぎやぞ。ええ加減寝ろ。
突然ブチギレられ、1歳になったばかりの娘は、わけがわからずきょとんとしている。
息子もしばらく黙り込み、反省したように思われた。
よかった、これでやっと寝てくれ…
「パパァ~!お母さんに何か言われた!」
…何ひとつ伝わっていなかった!!!!!
いや、正しくは、何か言われたということだけが伝わった。
この間抜けな空間に、旦那は思わず吹き出す。
私の中でパンパンに膨らんでいた怒りの風船も、ぴゅ〜と情けない音を立てて萎んでしまった。
私も思わず笑ってしまう。
もう今日は寝かしつけを放棄しよう。
そんな決意をした頃、息子が、座っている娘の肩を押して突き倒そうとしているのが見えた。自分のことは棚に上げ、寝かせようとしているのだ。
息子「ほら!◯◯ちゃん寝ないといけないよ!
寝ないと、お味噌が育たないよ!!!」
先ほど何も伝わっていなかったと思ったのは間違いだったようで、早く寝ないとお味噌が育たないということを学んだらしい。
息子よ、私が言ったのはお味噌じゃない。脳みそだ。
そしてそのまま、2人はお味噌を育てるために眠りについたのだった。