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お気に入りの小説コレクション 複数話あるものは、そのうちひとつを収録させて頂いております
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2022年1月の記事一覧

小さな叙事詩

小さな叙事詩

 東欧の冬は夜の冷え込みが厳しいだけに、朝の訪れは大きな喜びだ。

 濃紺色に塗り潰されていた夜空のほんの一部、遠く彼方の地平線の上部に鮮橙色の光が現れたかと思うと、それは徐々にではあるが確実に空を明るい青色に塗り替えていった。朝日の光が石造りの家が立ち並ぶ町にもたらされると、家々の間から白い霧が立ち込め始めた。女性が寒さから身を守るために纏うショールのようなそれは、差し込んだ日光により温められた

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猫をなくした男と、女

猫をなくした男と、女

今日あいつに似たやつを見かけた。
あっちもおれに興味があったみたいだ。

そう、男が女に話すのは、もう、何度目か。

男は猫をなくしている。
女には、なついてくれた、はじめての猫だった。

 一

女は友人に誘われて、男の実家にある男の部屋を訪れた。
三方に窓が開き、日なたと、趣味のこまごまとにあふれていた。
にゃあと男の飼い猫がやってきて、客人たちの足元を、くるり、くるりと一周ずつした。
終える

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知冬のからだ

知冬のからだ

短編小説

◇◇◇

 1

 そして知冬は、ぼくが見ている前でチャコールグレーの手袋を脱いだのだった。ぼくはこのとき、どんな表情をしていたのだろう。自分のことながら、今もって思い出すことができない。ぼくは、手袋の下から現れた彼女の手を見ていた。現れるはずだった手を見ていた。現れるべきところに現れているはずの手を。見えていないのに見ようとしていた。

 2

 知冬が手袋を脱ぐその三十分前、ぼくら

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