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大体2mm「水曜日の男」

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#公演

象徴

象徴

本番の一週間前、我々がお芝居の稽古をしていると、何者かが稽古場に入って来ました。その者は、黒いキャップに黒いマスクをしており、不審者のようにも見えました。

「誰だ、あれは?」
「知り合い?」
「いや、ちょっとわからないな」

その者は、稽古場の隅に申し訳なさそうに正座し、我々の稽古の様子をじっと観察し始めました。その時、トイレから戻って来た文目くんが言いました。

「あれ、ひょっとして太田カツキ

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コラム掲載

コラム掲載

「アートマネージメントセンター福岡」のモバイルサイトに、コラムを掲載していただきました。
ありがとうございます!

一度言ってみたいセリフ

一度言ってみたいセリフ

 稽古場に着くなり、演出のみずきくんから、芝居がかった口調でこう言われました。

みずき「『どうなっても知らねえからな!』」
藤原「え?」
みずき「『どうなっても、知らねえからな!』」
藤原「何?」
みずき「一生に一度は言ってみたいセリフ。女の子が、危ないのがわかり切ってる場所に行こうとしてる時に言うやつ」
藤原「あぁ」

 「俺、男だし、子でもないが」と思いながら、チョークを持ち、黒板に「どうな

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立ち稽古

立ち稽古

本番まで二週間を切りまして、少し前から、「立ち稽古」が始まりました。
じゃあ、今までは立っていなかったのか、と言うと、そんなことはなく、そもそも立って、なんなら歩かないと、稽古場にたどり着けません。
けれど移動手段が車の方は、稽古場まで座っています。座りながらにして移動できるわけです。車って便利ですね。そんな車移動の人も、駐車場から建物に入るまでの間は、少なくとも立って、歩きます。車のまま建物に突

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大体2mm 結成の経緯

大体2mm 結成の経緯

10周年ということで、大体2mmができた時の話をしようと思います。

10~15年くらい前というのは、ご時世的に職場の労働環境が今よりも濃い黒色をしておりまして、俳優活動のできなくなった僕は、自宅でもできる演劇活動を、ということで、劇作を始めていました。
で、いざ戯曲が書き上がると、当然のように上演したくなり、やってみようと画策したのですが、上演に至るまでの道のりはなかなかに険しく、またそれに向け

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メロンパンには何が入っているか

メロンパンには何が入っているか

 稽古前、みんなで高木さんの大阪土産である“たこ焼きハッピーターン”を味わっていると、ハルちゃんが稽古場のドアをバンと開け第一声、疑問を投げかけました。

ハル「メロンパンって、何が入ってるんですか!?」

 みんな、頭をまだ“たこ焼きハッピーターン”から切り替えられず、ハルちゃんを見ながらもぐもぐやっていました。

ハル「何が入ってるんですか、メロンパンって!?」

 ハルちゃんが語順を変えて強

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ビースターズ

ビースターズ

大体2mm『水曜日の男』の稽古でした。
僕は未見なのですが、「ビースターズ」という大変面白いマンガがあって、ハルちゃんと、そらちゃんと、まっつんが、その面白さについて語り合っており、まっつんが、僕に面白さをプレゼンしてくれました。

「あのね、エッチなウサギが出るんです。めちゃくちゃエッチなんですよ。俺、あんなにエッチなウサギ、見たことありません。すげえエッチなんです。え!? そんなに!? ってい

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とりとめのない話

とりとめのない話

 稽古前、まっつんがジュースをおいしそうに飲んでいました。

藤原「まっつん、それ、何ジュースですか?」
まつ「缶ジュースです」
藤原「そうじゃなくて、缶の中身を聞いています」
まつ「トマトジュースです」
藤原「俺、どうにも苦手なんです」
まつ「缶ですか?」
藤原「トマトジュースです。まあトマトに限らず、野菜ジュース全般ですが」
まつ「野菜が苦手なんですか?」
藤原「野菜は好きです」
まつ「じゃあ

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ワークショップ

ワークショップ

北九州の劇団では、脚本と演出を兼務している方が多い印象があります。大体2mmでは、脚本を藤原、演出を藤本瑞樹くんで分業しています。最初の頃は僕が兼務していたのですが、現場の空気を読む力の欠如や、役者の気持ちを慮る力の欠如、意図を説明する話術の欠如、主に欠如により、「これ、無理だ」と早々に諦めました。
なので、僕が書いた脚本をみずきくんが読み、どういう本なのかを解釈し、どう見せようかを考え、稽古場に

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山下くん

山下くん

昨日、大体2mm『水曜日の男』の稽古初日でした。

電車で稽古場に向かっていると、演出のみずきくんからグループラインにメッセージが届きました。今日の稽古では、チラシ用の写真撮影をし、演出プランを説明し、台本を読みます、といったような事務連絡でした。そして最後に、
「あと、山下くんが見学に来ます」
という一文が添えられていました。

「山下くん?」

僕は物理的に首をひねりました。
慣用的な意味でも

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