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大体2mm 結成の経緯

10周年ということで、大体2mmができた時の話をしようと思います。

10~15年くらい前というのは、ご時世的に職場の労働環境が今よりも濃い黒色をしておりまして、俳優活動のできなくなった僕は、自宅でもできる演劇活動を、ということで、劇作を始めていました。
で、いざ戯曲が書き上がると、当然のように上演したくなり、やってみようと画策したのですが、上演に至るまでの道のりはなかなかに険しく、またそれに向けて動くだけの労力も足らず、ああでもない、こうでもないと考えた結果、僕は脳内で劇団を結成することにしました。

何を言っているのか理解できませんか?
理解できなくて当然です。脳内の話をしているのですから。
僕は、脳内で、劇団を結成したのです。

脳内で劇団を結成するというのがどういうことなのかと言うと、つまり、棋士の方が脳内で将棋を指すの同じで、脳内で公演会場を押さえ、脳内で助成金の申請をし、脳内でスタッフを募り、脳内でミーティングを行い、脳内で俳優へ出演をオファーし、脳内でスケジュールを段取り、脳内で約1ヶ月間の稽古の末、脳内で舞台を仕込み、脳内で上演する、ということです。
具体的には、自室で書いた戯曲を眺めつつ、「今日は2場から稽古するか……」などとつぶやいていた、ということです。
もはや「劇団脳内」です。
ちなみにこの時の団体名は大体2mmではなく、カタカナで20文字くらいある痛い感じの名前でした。脳内の話なので見逃してやってください。

最初は妻にも黙ってやっていたのですが、けっこう夢中になって楽しんでいたのに加え、濃い黒色だった労働環境が頭をぼーっとさせ、徐々に「脳内で劇団を結成した」ということに対する羞恥心が薄れ、晩飯の時などに稽古や上演の様子を話すようになりました。
「先週末の公演、満席やったわ」
「看板女優をめぐって劇団内に三角関係ができてさ、もう泥沼ww」
「今度ハワイツアーに出るけ、パスポートが必要です」
こんな感じで嬉々として話していると、「私が段取りを組むから、現実で上演しなさい」と、見かねた妻からの提案により発足したのが、大体2mmの始まりです。

なんだろう、負わなくていい傷を負ったような気がしてならない。

けれどそんなことがきっかけで始まった団体が10年続き、その過程で藤本瑞樹くんが加入し、松井さんにも手伝ってもらえ、戯曲賞をいただき、北海道から沖縄までたくさんの方と知り合い、北九州芸術劇場で上演するに至った今、とんでもない道のりを歩んで来たのだな、と実感しています。

何が言いたいのかというと、大体2mm 10周年記念公演『水曜日の男』は、今月末に上演されます、現実で。


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