女の朝パート50

10月11日金曜日
ここはとあるスタバ。
スタバ女がいる。




スタバ女は、
トールサイズのアイスコーヒーとシナモンシュガーと蜂蜜をかけたアップルパイを目の前に、
ただ呆然と、座りこむことしかできなかった。


スタバ女は、
声にならないような小さな声で何かを一人で呟いている。


暗転



女はやたら滅多に行かないスタバに、
スタバ女がいきなり現れたことに驚いた。
スタバ女は、変わらず寡言沈黙を貫きながら無愛想な顔で座っている。
おそらく、無断でスタバにいる事に一種の禍々しさを覚えたのであろう。
小さな画面に向かって何かをしているようだけれど、どうでもよかった。
アイスコーヒーを飲んでアップルパイを食べれば又直ぐに忘れられるから。
しかしいつもと同じスタバ女なのに、
何だか不気味である。
不吉な予感すらも感じる。
ワタシの頭が可笑しいのか、、、?


アイスコーヒーを飲むとスタバ女が笑った。


暗転



本当の事を言うと台風19号が怖かった。
大きな渦を撒き散らしながら物凄い勢いでこちらに迫ってきているのだ。
死に損なった生き霊達の魂の叫び、もしくわ怨念の、籠った声すらも聴こえてきそうではないか、、、。


大きな木も花たちも、
この世に存在している全てのものを余すところなく呑み込みながら今こちらに接近してきている。


後数時後にはいよいよ関東上陸。
あらゆる交通機関は止まり、
企画されていた各種イベントは中止。
私達のいつもの暮らしは一時的な中断、
もしくわ、、、、、、、。


考えるだけでぞっとする。
おぞましい。
悲しい。
自然の持つ破壊力とその豊かさに戸惑うばかりである。
そんな時に限って、思い浮かんでくる人達がいる。
逢って、何かを伝えたいと思った。



スタバ女はアイスコーヒーを飲むと、
アップルパイを美味しそうにほほ張る。





どうすることもできないけれど、
どうでもよくはなかった。


台風はまるで化け物のようだ。
それとも、得体の知れない魔物、
それとも、どこからともなく沸いてくる虫のよう、、。


ともあれ、
スタバ女は、スタバの椅子に座り込む事しか今はできない。


暗転



あの渦の中では一体何が起きているのだろう?


全てを呑み込み、撒き散らして、
何だかスタバ女の心の闇を表しているみたいではないか。









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